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第百三十三話 ゴブリンクィーンのアレを貫け!

「百雷の術!」

『グギギギギイイイイィイイイィアアァア!』


 クィーンの口から悲鳴が漏れる。

 この女王、どうやら身重の影響なのかは判らないが、この位置から動くことが出来ないらしい。


 更に図体のデカさもあってか、俺の忍術も当て放題といった状況――だが……。


「ギィ!」

「グギギィ!」

「グギャグギャ!」


 また、股の間から大量のゴブリンが生み出された。クィーンのその巨体さ故か、ゴブリンは生まれた時には既に成長している。


 つまり、子供の状態というものがない。恐ろしいことに例えば騎士のクラス持ちなら鎧姿で生まれてきやがる。


 一体どんな身体の構造してんだよ……と眉をしかめるが、これがあるからこそ、この周辺のゴブリンは全てクラス持ちであり、更に装備品もある程度しっかりしたものを手にしていたのだろう。


 ただ、クラスと装備品にバラツキがあるところをみると、生まれてくるゴブリンがどんなクラスになるか装備は一体どんなものなのか? とそういった細かいところまで指定できるわけでもなさそうだ。


 もしかしたら肉団子にして食べた人間の影響でクラスなどが決まってくるといった事もあるのかもしれないな。

 やたら餌を集めているのも、ただの栄養というわけじゃなく食べることで戦力の強化に繋がると考えているのかもしれない。


 それにしても――タフな奴だ。この場から動こうとしないから、さっきから様々な忍術を行使しているんだが、スキルの生命力超強化と再生結界というのがかなり効いているということか。

 

 クィーン以外の雑魚は基本俺の忍術で一撃のもとに葬られているから問題ないが、かなりタフなこのクィーンだとどれだけ攻撃を当ててもダメージは回復していってしまう。


 俺は忍気をかなり豊富に溜め込んでいられるほうだが、それでも無尽蔵というわけではない。


 ここに至るまでにも結構忍術使ってるしな。一応タイミングを見て魔力を忍気に変換して取り込んでいるけどな。


 しかし百雷の術をあれだけ当てても倒れないとはな。本当にタフさだけならかなりのものだ。


 とは言え今は叩くしかないが――気になるのは後ろだ。俺の影分身がいるからそんなひどいことにはなってないが、それでも数の暴力が続くのはよろしくない。


 それにあのマビロギだっていずれは魔力が尽きる。時間を掛けてじっくりのんびりやっている場合でもないか。


「影分身の術!」


 俺は更に影分身を数体分作成。これやるとかなり消費するが仕方ない。


 俺達は散開し、同時に印を結んでいく。


『雷遁・百雷の術!』


 俺と影分身が同時に百雷の術を行使。影分身の術を駆使すれば、何百本もの雷を同時に浴びせる事が可能だ。


『ギギギイァアアアァアァアアァアア!』


 天井が崩落しないか心配になるほどの叫声。

 まさに雷声といったところか。すると崩落はしなかったがクィーンが怒りの形相で俺たちを睨めつけてきた。


 こいつ、まだ倒れないのかよ――まさかここまでとはな。

 

 とにかく一旦影分身には消えてもらい、忍気を少しでも取り戻す。

 その上で周囲の魔力を変換し、忍気を蓄え直すが――俺が奴に注意を向けつつ、忍気を溜めていると、クイーンが突然周囲の生き残ったゴブリン、つまり自分の子供たちをバクバクと喰らい始めた。


 いや、確かに共食いのスキルはあったけどな。

 それにこいつは共食いすることで体力も回復し、傷も癒やされていく。


 つまり、一見効いたように見えなくても、しっかりダメージは残っていたという事だろうが、それにしても折角増えた兵士を喰らうなんてな。


 そんなので増やす意味あるのか? と思わなくもないが――ッ!?


『ギヒィィ……』


 俺の背中に悪寒が走る。このゴブリンがほくそ笑んだ。何かを企んでるような狡猾な笑み。


 何だ、何かあるのか? いや待てよ、確かにこいつのスキルには――


 俺はハッとなる。その時には既にゴブリンの女王はその巨大な股を開き始めていた。


 まるで俺に見せつけるように大きく股が開かれ、その内側がはっきりとよく見える。

 

 そう、白い輝きを放つ股間、その瞬間、俺は即座に天井へと跳躍。


 迸る閃光。洞窟内に篭った空気とゴブリンの熱気がビリビリと震え、大地を裂くかのような轟音が響き渡った。

 下げた視線の先では極太の光線が空間を切り裂いていき端の岩壁に激突、しかし止まることはせず、ぽっかりと大きく穿ち洞窟を大きく揺らしながら貫通した。

 

 それにしてもとんでもない威力だ。あんなのいくら俺でもまともに喰らえばヤバい。


 正直マビロギは大丈夫かといいたいとこだが、影分身が咄嗟に抱きかかえて軌道上から逃れたから問題なさそうだ。


 ただ、マビロギは、何するんだ貴様! とギャーギャー騒いでいたようだけどな。


 まぁ、それは仕方ないだろう。


 それはそれとして、さっきこのゴブリンクィーンが使用してきたのは【魔石開砲】だな。


 この女王は自分から攻撃する様子を見せないから忘れてたけど、どうやら共食いで魔石を溜め込んでそれを光線にして放つ技なようだ。


 それにしても股間から光線って……ゴブリンはなんでもありだな。

 だが、結局外れたせいか、随分と悔しそうだ。何せあの威力だ。当然だが、直線状にいたゴブリンは全員死んだ。

 

 つまりこいつは自らの力で折角の子供を屠っただけに過ぎないってことだ。

 中々間の抜けた話ではあるんだが――


 しかし、ゴブリンクィーンは諦めなかった。まだかろうじて生き残っている近場のゴブリンや、更には死体でさえも喰らい、さらに新しく産んだゴブリンもすぐさま口に運び喰らっていく。


 何か執念に近いものを感じるが、この様子だとまた今の技を試すつもりなのだろう。


 だけど、それならそれで――


「雷遁・百雷の術!」


 俺は再び百雷を行使。今の間で忍気も少しは回復出来たしな。


 ただ、これは攻撃用ではなく、俺の持つ霧咲丸に向けて落とす。

 その時、霧咲丸はある程度霧を纏わせておいた。


 こうすることで刃の周りで層になった霧は雲のごとく要素に変化する。

 そこに百雷を集めることで霧咲丸に百雷の全てが蓄電された。

 

 霧の成分は水だ。しかも雲霧にしたことで雷が中に蓄えられ見た目には雷雲の如し。


 これで準備は整った。見ると、向こうも準備は整ったのか、再びその股を開き始める。


 そしてゴブリンクィーンの股間が輝き始めるが――


「この時を待ってたぜ! さぁその股に俺のすげーのを喰らわせてやる!」


 そして俺は百雷を帯びた霧咲丸を大きく振りかぶって――


「喰らえ! 百雷霧咲丸!」


 そして俺は今にも光線が発射されそうなゴブリンクィーンの股ぐら目掛けて、霧咲丸を投げる!


 雷を帯びた霧咲丸は、力強い光を発しまるで一本の槍の如く、放電によってより太くたくましくも思えるソレは、ゴブリンの股に向け吸い込まれるように一直線に飛んでいき、そして――突っ込んだ!


『ギ、ギェエエエェエエェエエエェエエエ!』


 その瞬間だった。まさにいま放たれる直前だったエネルギーが、挿し込まれた霧咲丸のパワーによって暴発し、ゴブリンクィーン向けて逆流する。


 電撃混じりの白いソレは、クィーンの股から脳天まで突き刺さるような衝撃を与え、クィーンは口から泡を吹き出し――かと思えば全身が大きく膨張し、弾け飛んだ。


「……どうやら逝ったようだな――」


 己の技によって内側から破壊されたゴブリンクィーンを認め、俺はヤレヤレとした思いで呟いた。


 それにしても本当にタフな奴だった。だが、いくらタフでも内側から大量に注ぎ込まれれば持つわけがなかった。


 そして俺は今回最終的に大活躍してくれた霧咲丸と、そしてゴブリンクィーンの体内から零れ落ちていた魔石を拾い上げる。


 みたところ、この魔石の形も色も他のゴブリンと大きく異なるから、討伐証明としては十分だろう。


 なにはともあれこれで元凶は倒した。それは、生き残った周囲のゴブリンの様子を見れば判る。

 

 これまでそれなりにとれていた統率力が全くなくなり、しかも女王がいなくなったことでパニックを起こしている。


 そのまま逃げ出したのもいるが、クィーンが作ったもう一つの穴から逃げ出したゴブリンは土遁で土砂崩れを起こし、埋めることで駆除し、余計な入り口も塞いだ。


 俺がきた方向へと逃げていったゴブリンは、その先にマイラ達に駆除される事だろう。


 偵知で調べたらどうやら全員無事なようだしな。今ここに僅かに残っていた残兵はマビロギと影分身、そして俺とでだいたい駆除。


 ただ、クィーンが死んだことで隷属化できることに気がついたのか、何体かはマビロギが使役していたな。


「ふ、ふん! 今回は仕方ないから協力してやったが、次はないと思え! は、裸を見られた恨み絶対に忘れないんだからな!」


 そしてマビロギは最後にそう言い残して使役したゴブリンとどこかへ去っていった。どうやら隠された出入り口が一つあったようでそこを抜けていったな。


 まぁマビロギがギリギリ入れる隧道みたいだし、元から洞窟にあったものを利用しているんだろう。

 特に危険もなさそうだしそこは放っておいた。


 ただ、何かあいつトラブルに巻き込まれやすい体質なんじゃないかって気もしないでもない。

 杞憂だといいんだけどな――

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