第1話 雨の府内
歴史には、
勝者の記録が残る。
だから同じ人物でも、
英雄と呼ばれることもあれば、
愚か者と語られることもある。
この物語は、
大友宗麟という男を、
“人間”として描く歴史ファンタジーです。
雨だった。
府内の空は、
まるで誰かが泣き続けているように暗かった。
「また倒れられたそうです」
家臣の声が、
静かな廊下に響く。
誰も大きな声を出さない。
この城では、
“咳”ひとつが空気を変える。
大友宗麟。
九州六国を束ねた男。
南蛮文化を愛し、
異国の知識を集め、
世界を見ようとした男。
だが今——
その身体は、
誰よりも弱かった。
「……誰も入るな」
障子の向こうから、
低い声が聞こえる。
怒りではない。
疲れだった。
家臣たちは顔を見合わせ、
静かに頭を下げる。
宗麟は、
ここ数日ほとんど眠っていない。
食も細く、
胸を押さえ、
時折、
息が止まったように動かなくなる。
戦の疲れ。
裏切り。
重圧。
そして——
誰にも言えない孤独。
「……御屋形様は、
壊れておられる」
誰かが小さく呟いた。
その時だった。
城門の前に、
見慣れぬ男が立っていた。
黒い服。
雨の中でも静かな目。
そしてその男は、
こう言った。
「身体ではありません」
「壊れているのは、“流れ”です」
読んでいただきありがとうございます。
戦国×整え×感情×AI思想という、
少し変わった歴史ファンタジーになります。
ゆっくり世界観を広げていきますので、
楽しんでいただけたら嬉しいです。




