表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第一章 俺×春=新しい出会いが待っています。〜新生活編〜
PR
13/226

12話 俺×隣人=気が抜けません。

「ま、まじかよ……」


真守は自分の部屋の前で立ち尽くしていた。


両隣——赤坂唯と白ヶ崎咲音。


どちらも関わると厄介な人物だということは、今日一日で嫌というほど理解している。


「……いや、ここはちゃんと挨拶しとかないとダメだろ」


逃げたら確実に後で詰む。むしろ、ここで印象を良くしておけば多少はマシになるはずだ。


(よし……まずは白ヶ崎からだ)


意を決して、インターホンを押す。


ピンポーン——


「……はい」


返ってきたのは、どこか弱々しい声だった。


(あれ……?)


「あ、あの……お隣に引っ越してきた、楽々浦です」


一瞬の沈黙。


「……楽々浦くん?」


その声のトーンが、一気に変わった。


ガチャ——


扉が勢いよく開く。


「さ、楽々浦くんっ!?なんでここに!?」


そこにいたのは、見慣れた——いや、見慣れない白ヶ崎だった。

驚きと、ほんの少しの喜びを混ぜた表情。


(……え?誰?)


「えっと……さっき言った通り、お隣に引っ越してきて」


「う、嘘……同じ階……?」


頬を染め、どこか落ち着かない様子で視線を彷徨わせる白ヶ崎。クラスで見せていたあの冷たい態度とは、まるで別人だった。


(なにこれ……逆に怖いんだけど)


「あのさ……俺がお隣で嫌じゃないの?」


探るように問いかける。

すると白ヶ崎は、ハッとしたように目を伏せた。


「そんなことない……むしろ、その……」


もじもじと指先をいじる。


「私、楽々浦くんに……ひどいこと言っちゃったから……」


「……え?」


予想外すぎる言葉に、思考が止まる。


「ねぇ、楽々浦くん」


顔を上げ、まっすぐこちらを見る。


「私のこと……嫌い?」


「っ……」


距離が近い。視線が強い。


(なんだこのイベント!?)


「き、嫌いじゃないよ!」


反射で答える。


「ほ、本当……?」


ぱぁっと顔が明るくなる。


「私、本当は……仲良くなりたくて……」


(なにこれ、甘すぎるだろ……)


さっきまで罵倒されてた相手とは思えない。

違和感はある。あるけど、それ以上に可愛さが上回る。


「あの時は……緊張してただけで……」


「緊張であそこまで言う!?」


思わずツッコむ。


「あっ……と、とにかく!」


白ヶ崎は慌てて頭を下げた。


「ごめんなさいっ!!」


深々とした、ちゃんとした謝罪。

その姿に、真守は一瞬言葉を失う。


「……もういいって。気にしてないから」


「でも……」


「いいって。ほんとに」


少し笑ってそう言うと、白ヶ崎は恐る恐る顔を上げた。


「……じゃあ、その……」


少しだけ距離を詰めてくる。


「私と……友達になってもらえますか?」


「っ……」


(やばい、普通に可愛い)


心臓がうるさい。


「だ、ダメなわけないだろ!むしろ俺も——」


「ほんとっ!?」


顔が一気に近づく。


「私、嬉しい……!」


(近い近い近い!!)


理性が持たない距離。


「じゃあさ……」


白ヶ崎が、少し照れながら言う。


「下の名前で呼んでもいい?」


「えっ」


「楽々浦くんじゃなくて……その……」


「……いい、けど」


(これは……来るのか?)


一気に距離が縮まる展開。

真守は目を閉じる。


(ここで名前呼び……完全にイベントだろ)


そして——


「まー君!」


「……は?」


聞き覚えしかない声。


「まー君ー!」


(いやいやいやいや)


嫌な予感しかしない。


そして、目を開ける。


「迎えに来ちゃった♪」


そこには、最悪のタイミングで現れる女、楽々浦真希那。


「……終わった」


真守は静かに絶望した。


「ま、真希ねぇ……なんで今なんだよ……」


「だって遅いんだもん♪」


そのまま当然のように距離を詰めてくる。


白ヶ崎は固まっていた。

そして、ゆっくりと真希那を見る。


「……誰?」


空気が変わる。


「この女、誰なの?」


「いや、その——」


説明しようとした瞬間、


「変態っ!最低っ!死ねクソ男!!」


(おかえり俺の知ってる白ヶ崎)


一瞬で元に戻った。


「ちょっとあんた!」


今度は真希那がキレる。


「私のまー君に何言ってんのよ!」


「は!?おばさんが高校生に手出してる方がキモいでしょ!」


「おばさん!?」


火に油。


「二人とも落ち着——」


「まー君は黙ってて!」

「ゴミは黙ってて!」


「はい」


完全に蚊帳の外。


「最悪……なんでこんなゴミと隣人なのよ!」


「だからさっきから——!」


言い合いはヒートアップしていく。


(これ止められるやついないだろ……)


そして——


「もういい!帰る!!」


白ヶ崎は勢いよくドアを閉めた。


バンッ——


静寂。


「……なんだったのあの子」


「それはこっちのセリフだよ……」


真守は天を仰いだ。


(隣人ガチャ、外れすぎだろ……)


ちなみにその後、赤坂の部屋にも行ったが——不在だった。


こうして真守の新生活は、快適なのに全く気が抜けない、そんな場所で幕を開けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ