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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
96/188

96.炎に包まれたカナ

 観客席のあちこちで悲鳴が上がる。


 テレビ観戦する視聴者も息を飲む。


 七身(ななみ)カズコも大会本部の関係者も、身を乗り出してスクリーンに目をこらす。



 あの蜂乗(はちじょう)カナが、一瞬で火だるまになったのだ。



 だが、冷静だったのは、カナを信じる蜂乗家(はちじょうけ)の人々とリンなどの使い魔、そして、カナ本人だった。



 灼熱の炎の壁が視界を閉ざす。


 燃えさかる炎の音が鼓膜を叩く。


 熱気が肺の奥まで達する。



 こんな絶望的な状況でも、カナはユカリのような狂乱状態には陥らなかった。


 それは、火炎魔法に対する防御を、その魔法の遣い手相手に練習して会得していたからである。


 たとえ、魔法で火だるまになっても、短時間に抜け出られる自信は十分にあった。



 イズミが魔法を繰り出すなら、火炎魔法しかない。


 なので、憑依された彼女が魔法の構えを見せた瞬間に、その防御を発動したため、さほどダメージを受けてはいない。



 カナは、肩幅に足を広げ、両手を横に伸ばす。


 この構えは、炎を打ち消す魔法の構え。



 この体勢で、心を静める。


 頭の中では、炎が一瞬で消し飛ぶ場面を思い描いていた。



 ところが、ここで、想定外のことが起きてしまう。



 ドクン!


 ドクン!



 また始まった。



 今度は、皮膚が盛り上がると錯覚するほどの強い鼓動。


 胸の内側で、何者かが――もちろん炎竜だが、足で蹴っているように感じる。



 ドクン!


 ドクン!



(お願い! 止まって!)



 前屈みになったカナは、目を見開き、胸の谷間付近を両手で押さえた。



 だんだん、胸が苦しくなる。


 グワングワンと耳鳴りが始まる。


 ムカムカして吐きそうになる。



「お願い!! ここで覚醒しないで!!」



 とその時、頭の中で獣が唸るような低い声がした。


『グルルルルルッ…………』



 カナは息が詰まった。


 ついに、目覚めようとしているらしい。



(覚醒、しないで――)



『グルルルルルッ…………』



(お願い……だから……)



 訪れた沈黙。


 猛火の音だけがゴーゴーと耳に響く。



 収まったのか?


 否、違う。


 周囲の音に混じって、腹に響くような低くて太い声が聞こえてきた。


『……なん……じ』


(えっ?)


『……汝』


(あなたは……炎竜……よね?

 ヤマト国の言葉、話せるの?)


『汝、我を纏うに値する心の持ち主か?』


 カナは言葉に詰まった。


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