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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会

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95.炎竜の覚醒

「誰!?」


「私? イズミよ」



 聞き覚えのない声が、イズミを名乗る。


 カナは両肩をガッチリと捕まれているので、動くに動けず、頭だけ後ろへ振り返る。



 確かに、視界に入る顔半分は、イズミである。


 だが、声は別人だ。


 無理して高い声を出しているように思える。



「声が違う!」


「そうなの?」


「そうなのって……」


「声を出している本人は、自分の声を聞けなくてわからないのだけれど、本当に違うの?」


「話し方も違う!

 イズミに化けているのね!?

 あなたは誰!?」


「化けてなんか、いないわよ。

 体はイズミそのものよ」


「体はそのもの?

 もしかして、あなたは、試合前に会ったアンドロイド!?

 いや、アンドロイドに化けていた――」


「あらあら、頭が悪い子にしては、勘がいいわね」


「やっぱり!

 化けていた、で思い出した!」


「じゃあ、私の名前を言える?」


 カナは、喉から出かかった『あのお方(ヽヽヽヽ)』の言葉を飲み込んだ。


「……」


「今、心の中でつぶやいたでしょう?

 あのお方(ヽヽヽヽ)の本名よ」


 右の耳に息が掛かるほどの距離で聞こえる声。


 囁かれたカナは、全身がぞわっとなった。


「そ、それより、いつからイズミに化けていたの!?」


「だから、化けていないわよ。

 なーんだ、やっぱり、頭が悪いのね。

 褒めた矢先にこれだわ……。

 今さっき、彼女の体を借りたのよ」


「借りたって?」


「憑依魔法よ」


「ひょうい魔法?」


「知らないの?

 体をそのままに、意識だけを乗っ取るの。

 これで、この子の魔法をそっくり使えるのよ」


「とにかく、離して!」


「はいはい。

 ちょうど今、手を離すところだったのに。

 せっかちさんね」



 その言葉が終わると、カナの両肩から手が離れた。


 ずっと強く捕まれていたので、止まっていた血流が再び通い始めたのを感じたほどだった。



 すぐさま、カナは振り向く。


 目の前に立ちはだかるイズミが、ほくそ笑んでいる。



「ということは、乗り移ったのね!

 イズミを返して!」


「あらいやだ。

 あなたこそ、返しなさいよ」


「何を!?」


「炎竜を――」



 とその時、イズミがカナの胸の谷間を右手の拳で突いた。


 ドンと押されて、カナは二、三歩後ろに下がる。


 その刹那――、


 ドクン!


 また、鼓動が起こった。


 ドクン!


 ドクン!


 今度は、続けて二回。



 急に胸の谷間付近がズキズキと痛み出す。


 カナは、つばを飲み込んだ。



 突如、イズミは、両腕を突き出す。


 驚いたカナは、さらに三歩後ろへ下がった。



「何をするの!?」


「至近距離で行くわよ。

 ――地獄の猛火フォーコ・インフェルナーレ!」



 詠唱の後、直径1メートルの輝く魔方陣がイズミの手の先に出現。


 その魔方陣と同じ直径の横向きの火柱がカナを襲った。



 ゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!!



 激しい音を上げながら、猛火がカナの腰から上を飲み込む。


 容赦のない炎は、背中にまで回り込んでいく。


 まるで、炎の簀巻きだ。



「そして、仕上げはこれ。

 ――煉獄(プルガトリオ)!」



 イズミは、両腕をさらにグンと突き出して力を込めた。


 すると、今度は、カナの全身が炎に包み込まれた。


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