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魔法少女と黒猫リン  作者: s_stein
第一章 魔法少女世界選手権大会
87/188

87.準決勝 第一試合

 その後、式神をやっつけたと意気揚々と引き上げてきたルクスが、リンに散々絞られている頃、準決勝の取り組みが発表された。



 第一試合は、蜂乗(はちじょう)カナ対五潘(ごはん)イズミ。



 会場は、大きくどよめいた。


 大方の予想では、決勝戦で二人が当たる、と言われていたからだ。



 だが、決勝戦でヤマト国の魔法少女同士が当たると、ヤマト国以外の諸国のファンから不評を買うから、当たるなら準決勝という予想もされていた。


 これは、本部の抽選の方式が意図的であると、感づかれていた証拠でもある。



 この取り組みは、ヘルヴェティア王国の視聴者を熱狂させた。


 第二試合でカトリーン・シュトラウスと当たる相手は、アメリゴ共和国代表で馬鹿力の魔法少女。


 彼女は、魔法をほとんど使わず、素速い動きと腕力と拳だけで勝ち上がってきたので、それさえ封じれば楽勝と思われたからだ。



 それは、ヤマト国側も同じ。


 カトリーン・シュトラウスが九割九分勝つ、と誰もが思っていた。


 なので、準決勝の焦点は、第一試合となった。



 実力派同士なので、大いに注目され、視聴率もぐんぐんと伸びていく。


 大会本部も、ホッと胸をなで下ろした。



 だが、気が気ではない者たちもいた。


 蜂乗家(はちじょうけ)の人々。


 そして、七身(ななみ)カズコである。



 イズミは、炎竜の覚醒を諦める、とマイコとカズコに言っていたが、二人は彼女を完全には信用していない。


 後ろに、(くのつぎ)一姫(いつき)がいる以上、只では済まされない、と思っていたのだ。



 周囲の様々な思惑と違い、カナは複雑な思いだった。



 イズミが、炎竜の覚醒を狙っている。


 封印するための宝玉を渡されているらしい。


 リンの話では、その宝玉は魔法を無効化する。



 つまり、現時点で、イズミは最強の防御を得ていることになる。



 さらに、胸の谷間付近でまた始まった鼓動。


 (くのつぎ)一姫(いつき)が、去り際に、何かの魔法を使って、鎮められたはずの炎竜を揺り動かしたかも知れないのだ。



 カナは、ダグアウトのベンチに座り、ミニスカートから出ている膝頭に目を落としていた。


 リンは、宙に浮いたまま、カナの顔を覗き込む。


 両隣にいるルクスもハウプトマンも、カナの方を向いた。



「元気ないけど、大丈夫なの?」

「おいおい。不安なのかよ?」



 カナは、リンとルクスの問いかけに、無言を貫く。


「しっかりしなさいよ」


「まさかと思うけどよ――」


 その言葉にルクスの方へ顔を向けるカナは、眉根を寄せる。


「腹減ってるとか?」


 カナは、急に吹き出し、グラウンドの方へ向き直った。


「うん、ちょっと減ってるかも」


「よし、何がいい?

 握り飯か? サンドウィッチーズとか」


「それを言うなら、サンドイッチ。

 ウィッチーズじゃ、魔女みたい」


「おお、そうだな。

 んじゃ、ひとっ走り――」


「あ、始まるから、いらない。

 行こう、リン」



 開始のファンファーレが鳴り響く中、カナはゆっくりとグラウンドに出た。


 ひときわ大きなカナコールが巻き起こる。


 だが、それはすぐ、イズミコールにかき消された。


 カナは、グラウンドに出たイズミを遠くに見る。



 イズミは立ち止まった。


 こちらを見ていると思うが、表情は見えない。


 しばし立ち尽くす。


 そして、二人は、同時に歩み始めた。


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