68.明かされる秘密
ミナが通話を終えて周囲に目をやると、間近に近づいていたカナとマコトとイリヤの顔が視界に入った。
その三つの顔がスーッと離れていく。
「あらあら、耳ダンボちゃんたち、はっけーん。
だったら、もう説明することはないかしら?」
「姉さん。その端末、音量MAXにしているでしょう?
部屋がこれだけ静かだと、スピーカーモードとあまり変わりありませんよ」
「あら、そうなの?
耳が遠いわけじゃないのよ。設定の仕方が――」
「わからないため、でしょう?
やってあげますよ。
姉さんは、そろそろメカ音痴を卒業してください」
「はーい」
マコトとイリヤは苦笑した。
しかし、カナは、目が泳いでいる。
ミナは、それを見逃さなかった。
「今いろいろなことを聞いたから、気持ちの整理がつかないのね。
さあ、いらっしゃい。
泣きたいなら、ここで、いっぱい、いっぱい泣きなさい」
ミナは、大きく両手を広げた。
急にクシャクシャ顔になったカナは、スーッと近寄り、ミナの胸に顔を埋める。
カナの眼から堰を切ったように流れ出る涙。
それは、頬を伝う前にミナの服を濡らしていく。
彼女の頭の中では、様々な思いが駆け巡っていた。
炎竜が母親から自分へ鞍替えしたということは、あの世界三大魔女と称される母親より強いのか。
まだまだ未熟だと認識している自分に、宿主に値する魔力が鉱脈のように眠っているのか。
これ以上強くなると、また化け物と恐れられるのは確実だ。
そうしたら、たくさんの友達が離れていく。
いつも優しく接してくれる商店街のおじさんもおばさんも、背を向けるようになる。
もしかしたら、お姉様たちも妹も妬むかも知れない。
イズミが、急に抱きついてきたのは、炎竜の存在を確認するためだったに違いない。
それ以前に、自分に近づいてきた目的は、ヴァルプルギスの魔宴を阻止する炎竜を覚醒するため。
(イズミは、私を利用しようとしているだけ?
でも、あの笑顔からも言葉からも、そうとは思えない……。
そうだ、明日、キチンと聞いてみよう)
次第に気持ちの整理がついてきたカナは、泣き濡れた顔を上げた。
「ミナお姉様。少し伺いたいことがありますが、よろしいでしょうか?」
「ええ、いいわよ」
「いろいろあります」
「どんなことでも」
「炎竜ってどんな竜ですか?
どうやって体の中に入っているのですか?
あのお方って誰ですか?
ヴァルプルギスの魔宴って何ですか?
炎竜はどうしたら暴走する――」
「はいはい。いっぺんにたくさんは無理よ。
順を追って説明するわね。
その前に、全員、自分たちの使い魔を召還して」
「「「はい」」」