婚約破棄されたので、辺境でセカンドライフを送りたいと思います
「エリナ・ウィズ! 貴様との婚約は破棄させていただく!」
静かな空き部屋にて。突然婚約者であるケイン様から婚約破棄を告げられた。
私は理由が分からずに、思わずきょとんとしてしまう。
「ええと……私、仕事はしていましたよね? 日課の魔物退治はしっかりと行っていましたし……」
「そこが問題なんだ! お前の魔法は、古から伝わる魔女の力とよく似ている! 気味が悪いんだよ!」
なるほど、魔女の力とよく似ていて気味が悪いか。まあ、この能力自体、私がこの世界に転生した時に神様から貰ったギフト。いわゆるチート能力だからだ。
能力の名前は『アンリミテッド・マジック』。どんなに使っても尽きない魔力と、大賢者すらも超えるような魔法知識で無限に魔法を放てるというもの。
だから、ケイン様が私の能力を見て魔女認定するのも分かる。
この世界はいわば中世ヨーロッパ。魔女狩りのようなものが起こってもおかしくはない時代感だ。
だが……。
「失礼ですが。ケイン様のお父様——カーヴァー侯爵家の当主からは、私の才を気に入られてこの家に嫁ぐことになっています。毎日魔物討伐をしているのも、あなたのお父様からの指示でやっているわけでして」
この領地には、近頃強力な魔物が発生することが多くなっていた。だから、その対応をするために私がここにいるわけだ。
私の家は貧乏男爵家だから、この家に嫁げるのは色々ありがたかったのだけれど。
「それに関してはもう不要だ。なぜなら——代わりはいるからな。アリサ!」
アリサとケイン様が言うと、ノックとともに一人の女性が入ってくる。
派手な格好をした、半ば娼婦のようにも見える美しい人だった。
「彼女は代々聖女を輩出してきた家の生まれでな。お前のような、魔女に近しい醜い魔法と違って、美しい魔法を使う! だからもう、お前は必要ないんだよ!」
「そうよ! あなたとは違って高潔なの!」
聖女の家の生まれって。この格好をした方が、到底そんな由緒正しいところの娘とは到底思えないんだけれど。
まあ見る限りケイン様は随分と彼女に夢中なようだ。詳しいことは分からないが、そういう邪な思惑もあるのだろう。
「そうですか。では、不要なのであれば私は身を引こうかと思います」
侯爵家の嫁として地位を確保するのもいいが、彼とは正直合わないところがあった。そもそも私の能力は理解してくれないし、何かとハラスメントまがいのことを言われることが多かった。
そもそも、私は転生者だ。彼とは精神年齢の差がありすぎる。
価値観も違うし、追い出されるのなら逆によかったかもしれない。
「では、お幸せに」
私はそう言って、カーヴァー家から出て行くことにした。
◆
「うーん……これからどうしよっかな〜」
私は森の中でぐっと伸びをしながら思う。
実家に帰ってもいいが、婚約破棄されたともなればガミガミ言われて居心地が悪いだろうし。
そういえば。せっかくの異世界なのに転生してからは令嬢としての勉学に励んでばかりで、自由なんて全くなかったな。
……今は婚約だとかそんなしがらみはない。何かと便利な魔法だってある。
「そうだ。辺境で気ままにセカンドライフとか送ってみよう。田舎なら、わざわざ追いかけてくる人なんていないだろうし」
こうして、私は新たな人生を始めてみることにした。
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