第0話
「くっ、この、もうちょっと」
「ケヴィンさま、気をつけて!」
「よし、いい子だ。こっちおいで、よしっ」
俺は木の上に登った泥棒ネコを救出していた。というより捕まえていた。
「まったく、猫に小判と言うのにな……わっ!」
「ケヴィンさま!」
木の枝がパキッと折れ、俺は木の上からずり落ちた。
ズデーンと腰を打ったが猫は無事だ。いてて、尻もちをついたぜ。
「ケヴィンさま、お怪我はありませんか!?」
「ああ、大丈夫。この通り怪我はない」
「猫もそうですが、ケヴィンさまは?」
「いや、大丈夫だよ。マイン」
「そうですか、ケヴィンさまが無事なら良かったです。それより……」
「ああ、まったくこの泥棒ネコは……」
「にゃあん」
「あっ」
猫はそう鳴くとどこへと逃げて行った。
猫が咥えてた物、それは。
「指輪は無事だな」
「そうですね」
俺たちの婚約指輪だ。
「邪魔が入ったが続きをするぞ」
「はい、ケヴィンさま」
ケヴィンはひざまずきマインの左手の薬指にそっと指輪をはめる。
「結婚しよう、マイン」
「はい、ケヴィンさま」
俺とマインは婚約した。
マインの親父さんの助言もあって今は結婚ではなく婚約となった。
王国法では16歳から成人として扱われ結婚もできる。しかし俺は16歳だがマインはまだ15歳。
マインが成人するその日まで婚約者となる。
プロポーズを最初にしたのはマインだった。マインは先にプロポーズされたと言うが……心当たりがない。いつ言った?
その場の流れもあり結婚しようと答えたが、そこに嘘や偽りはない。
本当にマインのことが好きだし何より一生をかけて守りたいという気持ちもある。
その場はマインの両親の前の口約束だったが、今回は改めて婚約指輪を用意してプロポーズした。
まさかその指輪を猫が宝物か何か勘違いして咥えていったのだ。おかげで木に登った泥棒ネコを捕まえるはめとなった。
そう俺たちは婚約者となったのだ。
まさかあんなことが起きるなんて……。
俺はマインの婚約者となったがヒモになるつもりまではなく、職を探しに冒険者となりギルドに登録した。
二人でクエストをこなし報酬も得てマインが成人するその日まで待っていたのだが、王宮からお触れが出た。
内容は伝説の剣が伝説の勇者を決める時が来たと。それになる条件がモンスターがドロップするダークコアを集めること。つまりモンスター退治である。
もし多くのダークコアを集めた者は伝説の勇者となり王室とほぼ同等の扱いを受ける上級貴族となるのだ。
しかし、新しい貴族を迎えるには土地が足らない。それ故に今いるリストラ候補の貴族を追い出そうとなるのだ。
そのリストラ候補がマインの家だ。
マインの家は伯爵家という上級貴族ではあるが、子どもが女子一人しかおらず限界貴族と言われている。
だから俺は他の誰かが貴族になる前に、自分で伝説の勇者の貴族となりマインの家を迎え入れる。
これならマインは没落することはない。
だから俺は……俺たちは冒険をし、伝説の勇者を目指すのだ。
「さてマイン、行くか」
「はいっ、ケヴィンさま!」
全ての結婚が上手くいくとは限らない。
世の中には別れを選択する者もいる。
「すまん、ディアナ。別れてくれ」
「……………わかりましたわ。……さようなら殿下」
「王室として君を特別待遇をする。もう王太子妃とは名乗れぬがせめてものとして、公妃の称号を維持し続けられる」
「それはわたくしが再婚するまでの間でしょう?」
「…………彼女には公妃の称号は辞退してもらう。同じ時代に二人も公妃は存在しないように」
「……せめて子どもたちが自立した年齢、……末っ子が20歳になるまで再婚はしないでください」
「……わかった。約束しよう」
「……私たちの結婚生活は3人でした」
「……………」




