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神滅の兵器と無慈悲なる防壁〜極大殲滅魔法を空中で『分解』し、王都の城壁を塵へと還す




聖王国の王城、その最下層に広がる巨大な地下空間。


そこには、神話の時代に滅びた古代魔導帝国が残したとされる忌まわしき遺物——『星穿せいせんの魔導砲』が鎮座していた。


城の尖塔よりも巨大な砲身は、複雑な幾何学模様と呪文が刻まれた黒鋼でできている。


その周囲には、無数の「魔力抽出陣」が敷き詰められ、今まさに絶望の悲鳴が響き渡っていた。


「ひぃぃぃっ! や、やめてくれ! 俺は何も悪いことはしていない!」


「お母さぁぁんっ!!」


抽出陣の上に無理やり縛り付けられているのは、王国軍が掻き集めてきた亜人の奴隷たち、

そしてあろうことか、貧民街から攫ってきた力のない人間の平民たちだった。


「黙れゴミども! お前らのちっぽけな命を、この光の勇者様の力に変えられるんだ! 喜んで死ね!」


堂島翔は血走った目で狂ったように笑い、魔導砲の起動装置に己の魔力を叩き込んだ。


現在、聖王国は湊によって地脈レイラインからの魔力供給を絶たれ、深刻な魔力枯渇状態にある。この規格外の兵器を動かすためには、生きている人間の魂から直接魔力を搾り取るという、外道極まりない手段に出るしかなかった。


「ど、堂島殿……っ! 自国の民まで生贄にするなど……これでは我らが魔王軍と同じではないか!」


あまりの惨状に、同行していた国王が青ざめて震え上がるが、堂島は振り返りざまに国王の胸倉を掴み上げた。


「うるせえ! あの『結城湊』という得体の知れないバケモノを消すには、これしかないんだよ! 東も北も壊滅し、騎士団も全滅……このままじゃ王国は終わりだぞ! 俺の国が、俺の築き上げた地位が、あのゴミに奪われてたまるかァッ!!」


完全に正気を失った堂島の姿に、国王も重鎮たちも声を発することすらできない。


堂島の瞳には、絶対的な力で君臨してきた「強者」の余裕は微塵もなく、ただ過去の弱者に怯える「惨めな敗北者」の焦りだけが浮かんでいた。


「エネルギー充填、限界突破!! 消えろ結城湊ォォォッ!! お前が匿っている亜人どもごと、森ごと地図から消し飛べェェェェッ!!」


堂島が起動レバーをへし折る勢いで押し込んだ。


抽出陣に縛り付けられていた数百の命が、一瞬にして干からびて灰となる。


その莫大な命の魔力を喰らい、黒鋼の魔導砲が鼓動した。


ゴラァァァァァァァァァァァァンッ!!!!!

世界が割れるような轟音。


王城の地下から真上へと打ち出された極大の光の奔流は、城の天井をぶち抜き、王都の上空で直角に軌道を変え、湊の待つ大森林へと向けて空を切り裂いた。


それはまさに『神滅』の名に相応しい、触れたもの全てを素粒子レベルで消滅させる、絶対的な破壊の光だった。


◆ ◆ ◆


一方、大森林の深奥に位置する『万象工房』。


空が突如として禍々しい赤紫色に染まり、大気がビリビリと悲鳴を上げるのを感じ取り、工房の住人たちはパニックに陥っていた。


「な、なんだあの空は!?」


「とんでもない魔力の塊が、王都の方角から飛んでくるぞ!!」


広場に集まったドワーフや獣人たちが、空を指差して絶望の声を上げる。


空を覆い尽くすほどの極太の閃光が、雲を吹き飛ばしながら、一直線にこの森を目指して迫ってきていた。


「湊……! あれは、ただの魔法じゃないわ。生命エネルギーを無理やり燃やして作られた、呪いのような破壊の力よ……!」


セレスティアが青ざめた顔で、俺の隣に駆け寄る。


星の理を司る彼女には、あの光の中に無数の怨嗟の声が混じっているのが視えているのだろう。


「……あいつら、ついに自分の民の命まで魔力の燃料にしやがったか」


俺は静かに呟き、工房のテラスから地上へと飛び降りた。


「湊様!? 危険です、避難を……!!」


リリアが悲鳴を上げるが、俺は振り返らずに手を軽く上げた。


「心配するな。あんな花火、この工房には指一本触れさせない」


俺は不可視の結界の外——森の木々の上に立ち、迫り来る終焉の光を真っ直ぐに見据えた。

恐怖はない。


あの極大魔法とやらも、俺の目から見れば『莫大な魔力』と『人間の生命エネルギー』、そして『光の属性』が強固に結びついた、ただの「巨大な素材の塊」に過ぎない。


光が、大森林の境界に到達する。


周囲の木々が熱線で蒸発しそうになる、その刹那。


俺は右手を空に向かってかざし、静かに、だが絶対的な権能を持って命じた。


「お前らの奥の手なんて、俺の【労働】の前ではただの基本業務未満だ。——『分解』」


パァァァァァァァァンッ!!!!!

世界が、白に染まった。


だがそれは、破壊の光ではない。


俺の掌から放たれた『万象の造物主』の力が、神滅の光と正面から衝突した瞬間。


絶対的な破壊力を持っていたはずの魔導砲のビームが、先端から根元に向かって、まるでガラス細工が砕けるようにボロボロと崩壊を始めたのだ。


「え……?」


「光が……消えていく……?」


工房からその光景を見上げていたリリアやゴルダンたちが、呆然と声を漏らす。


俺の意思一つで、極大の破壊エネルギーは「ただの無害な魔力の粒子」へと強制的に解体された。

大森林を焼き尽くすはずだった光は、美しい七色のオーロラのような光の粉雨となって、森の上空から静かに降り注ぐ。


「すごい……なんて美しく、優しい光……」


セレスティアが両手を合わせ、降り注ぐ光の粒子を見上げて祈るように呟いた。


魔導砲の燃料にされた人々の魂が、俺の『分解』によって呪縛から解放され、浄化されて天へと還っていく光だった。


「……さて。売られた喧嘩は、きっちり倍にして買い取ってやるのが礼儀だよな」


俺は空中に散らばった、莫大な『魔力の残滓』へと視線を向けた。


ただ分解して終わりではない。俺の力は『再構築』してこその【万象の造物主】だ。


俺は両手を広げ、空を漂う莫大な魔力を一箇所に束ね上げた。


「お前らが民の命を削って放った一撃、そのまま王都の防壁に返してやるよ。——『創成』」


ゴォォォォォォォォォッ!!


束ねられた魔力が、大森林の上空で一振りの『超巨大な光の剣』へと形を変えた。


それは、堂島が放った魔導砲よりもさらに高密度で、神々しいまでの威圧感を放っている。


「行け。城壁だけを削り取れ」


俺が腕を振り下ろすと同時に、巨大な光の剣が王都の方角へ向けて射出された。


◆ ◆ ◆


「やった……! やったぞ!! あのバケモノを森ごと消し飛ばしてやった!!」


王城の地下で、堂島翔は歓喜の雄叫びを上げていた。


国王や重鎮たちも、画面に映し出された光の軌跡を見て、ようやく安堵の息を吐き出す。


だが、彼らの歓喜は、数秒後に地獄の底へと叩き落とされた。


「ど、堂島様!! 森に向かったはずの光が……消滅しました!!」


監視用の魔導具を覗き込んでいた兵士が、裏返った声で叫ぶ。


「はぁっ!? 消滅だぁ!? 寝言言ってんじゃねえ、あんな魔法を防げる奴なんて——」


堂島が怒鳴り返そうとした、その時。


『警報!! 警報!! 王都上空に、未曾有の超高密度魔力体が接近中!!』


王城中に、緊急を知らせるサイレンと魔法の警告音声が鳴り響いた。


「な、なんだと!?」


「へ、陛下!! 外をご覧ください!!」


地下から慌ててバルコニーへと駆け出した堂島と国王たちの目に飛び込んできたのは——王都の空を覆い尽くすほどの、巨大な『光の剣』だった。


「ひ、ひぃぃぃっ!! 神の、神の裁きだぁっ!!」


王都の民衆たちが絶望して道端に平伏する中、光の剣は、王都をぐるりと囲む、建国以来一度も破られたことのない『絶対防御の大城壁』に向かって、音もなく振り下ろされた。


ズバァァァァァァァァァァァンッ!!!!


爆発すら起きなかった。


光の剣が触れた瞬間、王都を守護していた堅牢な大城壁が、まるで熱したナイフで切られたバターのように、端から端まで綺麗に『消滅』したのだ。


城壁だけではない。王城を包んでいた多重の防衛結界も、全てが一瞬で粉々に砕け散った。


砂煙が晴れた後。


王都は、外部からの攻撃を防ぐ術を全て剥ぎ取られ、完全に「丸裸」の姿となっていた。


「あ……ああ……」


バルコニーからその光景を見下ろしていた国王が、ついに白目を剥いてその場に倒れ伏した。


重鎮たちも腰を抜かし、失禁して震えている。


「うそ、だろ……? この国の最大火力が……防がれた上に、弾き返された……?」


堂島翔は、ガタガタと震える足で後ろに下がり、尻餅をついた。


もはや言い逃れはできない。自分たちでは絶対に勝てない次元の存在が、明確な殺意を持って自分たちを狙っている。


「いやだ……死にたくない、死にたくねえぇぇっ!! 俺は勇者だ! 特別な存在なんだよぉぉぉっ!!」


王都に、堂島の見苦しい絶叫が木霊する。


◆ ◆ ◆


「……綺麗に壁だけ切り落とせたな」


大森林から王都の防壁が消え去るのを確認し、俺は満足げに頷いた。


わざと城や街を破壊しなかったのは、王都の民衆を巻き込まないためと、堂島たちに「いつでもお前たちの首は取れる」という究極の恐怖を与えるためだ。


俺が森から工房の広場へと戻ると、ドワーフや獣人たちが一斉に歓声を上げて駆け寄ってきた。


「湊様!! 万歳! 湊様、万歳!!」


「神滅の魔法を素手で弾き返すなんて……やはり湊様は、本物の神様だ!!」


熱狂する彼らを片手で制し、俺はセレスティアの方を振り返った。


「セレスティア。俺はこれから、王都へ向かう」

その言葉に、広場が静まり返る。


「……王都の防壁は消えた。騎士団ももう機能していない。あいつらの手足をもぐ作業は全て終わった」


俺は漆黒のコートを翻し、腰に帯びた星鋼の剣の柄に手を当てた。


「長かった因縁に、決着をつけてくる。……玉座にふんぞり返っている全ての元凶を、この手で直接『解体』するためにな」


セレスティアは真っ直ぐに俺の目を見つめ、そして深く頷いた。


「いってらっしゃい、湊。……必ず、無事に帰ってきてね。みんなで、ここで待っているから」


「ああ。夕飯までには戻る」


俺は薄く笑い、大地を蹴った。

向かうは、恐怖と絶望に包まれた聖王国の王城。


かつて底辺の【労働者】として見下され、奈落へ突き落とされた男の、全てを清算する最後の反逆が、今、始まった。

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