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『改変された世界で、俺のスキルがチートだった件』  作者: ばずみかん
第一部:異変の始まりと『運』の覚醒
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第47話:因果律の改変、神を穿つ一撃

守護天使ミカエルが放つ聖なる光の剣は、学と剣聖ヤマトの因果律操作を阻み、広範囲浄化魔法は二人の体力とMPを限界まで削り取る。学は、自身の『因果固定』がミカエルの格の前では有効に機能しないことを痛感していた。ミカエルの因果律操作が、学の幸運を捻じ曲げようとする力を瞬時に「修正」してしまうのだ。


「くそっ……!」


ヤマトもまた、学の隣で息を荒げていた。神速の剣技は健在だが、ミカエルの再生能力と因果律操作の前には決定打を与えられず、消耗が激しい。彼の漆黒の羽織は聖なる光に焼かれ、所々に焦げ付いている。


「名無し、これ以上は…っ!」


ヤマトの声が途切れる。ミカエルが再び光の剣を振りかぶり、空間を歪ませる。次の攻撃は、学とヤマト、そしてプニをまとめて浄化しようとする必殺の一撃となるだろう。


その瞬間、学の腕の中で震えていたプニが、唐突に学の腕から飛び出した。


「プルルルルルルル!!!」


プニは甲高い叫び声を上げると、その虹色の体を大きく膨らませ、空間に満ちる聖なる魔力に抗うように、虹色の輝きを最大まで高めた。プニは、学とヤマトを守るように、ミカエルと二人の間に割り込む。


「プニ! 何をしてるんだ!?」


学は叫んだ。ミカエルの必殺の一撃を受け止めれば、プニの体はひとたまりもないだろう。


しかし、プニの思念が学の頭に直接響く。


『マナブ…まかせて…!』


プニはミカエルの光の剣に向かって、その体を最大まで肥大させた。そして、体表からあらゆる属性の魔素を融合させた、虹色の粘液を勢いよく吐き出した。それは、通常の溶解液とは比較にならないほど高密度で、ミカエルの神聖な光さえも捻じ曲げようとするかのような、異質な質量を伴っていた。


ミカエルの光の剣が、プニの虹色の粘液と衝突する。


キィィィィィィィン……!


空間が悲鳴を上げたかのように軋み、強烈な光と虹色の粘液が激しくぶつかり合う。プニの体が激しく損壊していくのが見えた。それでもプニはひるむことなく、その場に留まり続けた。まるで、学とヤマトのための「盾」となるかのように。


学は、プニの捨て身の行動に、胸を締め付けられた。その純粋な自己犠牲の精神が、学の心に激しい嵐を巻き起こす。


───守りたい。プニを、家族を、この世界を……!


学の心の中で、何かが弾けた。


その瞬間、学の全身を、これまでに感じたことのない、強烈な魔力の奔流が駆け巡った。それは、まるで世界の因果そのものが、学の魂に直接流れ込んでくるかのような感覚だった。


【ユニークスキル『因果固定』が進化しました!】


【『因果固定・改』を獲得しました!】


眼前に現れた半透明のボードに、新たなスキル名が輝いている。


学は、自身の『因果固定』が、これまでの「無意識下での幸運の引き寄せ」や「明確な意図を込めた因果の固定」を超え、より根源的な世界の理に干渉できるようになったことを直感した。この進化は、学がこれまでの数多の戦いと、強引な因果の操作の中で培ってきた「運」と「意志」、そして何よりも「守りたい」という純粋な願いが、臨界点に達した結果だった。


学は、MPの消耗が激しいことを承知の上で、『因果固定・改』を最大限に発動させた。


「ミカエルの防御フィールドに一瞬の亀裂が入り、その中心である核が露呈する!」


学の脳裏に、明確な未来のビジョンが鮮明に描かれる。それは、これまでのように「都合の良い偶然を引き寄せる」という曖昧なものではない。世界の因果律を、まるでプログラムを書き換えるかのように、強制的に「固定」する感覚だった。


膨大なMPが学の体内から吸い出されていく。頭の奥には、脳を直接掻き混ぜられるような激しい頭痛が走る。視界が歪み、平衡感覚が麻痺する。これが、『因果固定・改』が世界の理に深く干渉したことによる「世界の修正力」の反動だ。それでも、学は歯を食いしばり、意識を保ち続ける。


プニが粘液を吐き出し、光の剣の勢いを僅かに削いだその一瞬の隙。


キィィィィィン…!


ミカエルの防御フィールドが、まるでガラスにひびが入ったかのように、音を立てて亀裂が入った。そのひび割れの中心、胸部中央から、青白い光を放つ核が露わになる。


「今です、ヤマトさん!」


学は激しい頭痛に耐えながら、ヤマトに叫んだ。


ヤマトは学が作り出したその一瞬の隙を見逃さなかった。彼の瞳に揺るぎない闘志が宿り、ミカエルの因果律操作を振り切るかのように、その足が神速の動きでミカエルへと肉薄する。


「神速……一閃ッ!」


ヤマトの愛刀『虎徹』が、光をも切り裂く勢いでミカエルの防御フィールドの亀裂へと吸い込まれていく。その斬撃は、神速を超え、まるで未来に到達したかのように、ミカエルの核を正確に捉えた。


グオォォォォォォォ!!


ミカエルは、初めて苦痛に満ちた叫び声を上げた。その体が大きくひるみ、体表の光のバリアが一時的に消失した。


「『運否天賦』!!」


学は、この時を待っていた。ヤマトが作り出した、わずか一瞬の絶対的な隙。学は、自身の『運』462を全て消費し、『運否天賦』を発動した。


「天からの一撃」を受けてもなお倒れないミカエル。

学とヤマトは無防備となったミカエルの核へ、『シャドウダガー』と『虎徹』による渾身の一撃を突き刺した。


一瞬の静けさの後、青白い光が爆発的に輝き、空間を埋め尽くす。


ゴォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!


ミカエルは、断末魔とも絶叫ともつかない、耳をつんざくような音を上げ、その巨大な体が内側から崩壊を始めた。神聖なる光の粒子が飛び散り、空間に満ちていた聖なる魔力が急速に収束していく。数秒後、そこには何も残らなかった。


静寂が訪れた。


学は膝から崩れ落ちた。全身から力が抜け、MPは完全にゼロだ。頭痛がひどく、視界もかすむ。これが、『因果固定・改』を極限まで使った代償か。


「プルルルル……」


学の足元で、プニが力なく震えながら、学の頬にそっと体を擦り寄せてきた。プニの体は、先ほどの捨て身の行動で大きく損傷しているが、その瞳には学への喜びと信頼が宿っている。


「やったな、プニ……ヤマト……」


学は荒い息を整えながら、力なく呟いた。


その瞬間、学の視界に、まばゆい光と共に勝利を告げるメッセージが浮かび上がった。


「守護天使ミカエルを撃破しました。」


「経験値を大量に獲得しました。」


「レベルアップしました!」


大幅な経験値を獲得し、学のレベルは45まで上昇し、プニのレベルもまた45になっている。


地面には、ミカエルの残骸からドロップしたアイテムが転がっていた。


【ミカエルの折れた光剣】――超希少素材。


【天使長の魂石】――超希少素材。


破格のドロップ品だ。これだけあれば、強力な装備の製作や、さらにプニの成長にも繋がるだろう。


ヤマトは、静かに刀を鞘に収め、学を見つめた。


「…無事か、名無し」


「はい、ヤマトさんも」


ヤマトは学の言葉に小さく頷くと、それ以上言葉を交わすことなく、踵を返し、来た道を戻ろうとする。


「どこへ行くんですか、ヤマトさん!?」


学が呼びかけると、ヤマトは一瞬立ち止まり、学に背を向けたまま、静かに答えた。


「まだ、戦いは終わっていない。奴らが来るまで立ち止まれない。」


ヤマトの言葉が、学の胸に重く響いた。ミカエルを倒した達成感と、自身の力の消耗に加え、新たな脅威への不安が入り混じる。この戦いで、彼自身の『運』と『因果固定・改』の力が、世界の法則と深く結びついていることを改めて実感した。


その時、学のスマートフォンから緊急速報を知らせるアラームがけたたましく鳴り響いた。


<東京湾岸エリアにおける「空間歪曲現象」、観測史上最大規模に拡大。政府、厳重な警戒を呼びかけ。これまでの『自然現象』説を完全に否定>


それは、学が予感していた「真の戦い」が、いよいよ現実のものとなりつつあることを告げていた。


「俺も、もっと強くならなきゃいけない。一人じゃない、プニと共に……」


学は満身創痍の体を引きずり10階層を後にした。

すぐそこまで近づいている脅威に向け、さらに強くなる決意を胸に…。


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