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私の知らない感情  作者: i.to
3/5

3話

智美からの助言のお陰で、相談への答えが決まり晴れやかな気持ちで登校し、日直の仕事をしていると、スマホが震えた。悠が画面を見てみるとそこには、なつきからのメッセージが1件。ロックを解除しメッセージアプリを開き届いてメッセージを読む。


『話したい事があるから、今日の放課後時間取れない?』


昨日の遥香に続いてなつきからも放課後に呼び出されるとは何事だろうかと思考を巡らせる悠。しかし、内容に心当たりはなかった。断る理由も特にないため了承の返事を打ち、送信したところで、遥香にも昨日のことを放課後話そうと思っていたことを思い出す。なつきも、昨日の遥香同様に、個人のアカウントにメッセージを送ってきたことを考えると、2人で話したいことの可能性が高い。遥香を同行させるのは良くないであろうことは想像に固くない。既に約束してしまったため、なつきの後に、念の為場所も変えて遥香と会う約束をメッセージアプリで行った。浮気でもしているようだな、などと考えながらいつも通りに授業を受け、気づけば放課後に。


 昨日と同様に一度3人で帰り、まずは、なつきと会うべくなつきの家の近くにある土手に向かう。ここなら、遥香に偶然であうということもないだろうということで選んだのである。


 待ち合わせ場所に付けば、既になつきは来ていた。


「ごめん、待たせた?」


「いや、家のほうが近いし早く着くのは当然だし、呼び出しのもこっちだからね。早く来ておこうと思っただけだから気にしないで。こっちこそいきなり呼び出してごめん」


「いや、ぜんぜんいいんだけどさ。そうそう個人で連絡きたから遥香には何も伝えずに来たけど何か相談とか?」


悠が問うと、落ち着くように一呼吸して話し始める。


「伝えようかずっと迷ってたんだけどさ、ずっと言わずにいるわけにはいかないし、今日の朝さ、チビの散歩してる時に悠が早瀬先輩と歩いているの見て、早く伝えないと誰かに先を越されるかもしれないって思ったらいてもたってもいられなくて」


チビというのは、なつきが飼っている犬の名前だ。朝の散歩中に今朝の悠と智美を見かけていたらしい。その姿を見たからといって、なにか言いたくなるようなことがあるだろうかと悠は考えてみるが想像がつかないため、なつきの言葉の続きを待つ。


「だから、言いたい事っていうのは、私、悠のことが好き。私と付き合ってください」


少し早口でなつきがそう言い、頭を下げた。悠は何が起こったのか理解が出来ずなつきの言葉を脳内で何度も何度も再生していた。なつきの雰囲気から、流石にこれが友達としての好きではないことくらい悠にも理解できたが、何故こうなったのかは理解ができなかった。


「とりあえず、頭上げて。いくつか聞いてもいい?」


思考をまとめるために、少しなつきに質問させてもらうことにした悠は、一番の疑問を投げかけた。


「一応、私たちさ、女の子同士なんだけど、そういう意味の好きってことでいいんだよね?」


「うん。性別とかどうでもいいって思うくらい好きなんだ。悠のどんなことにも一生懸命なところとか、誰にでも優しいところとか、何かあれば自分の事後回しにしてでも私や遥香を助けてくれるところとか」


顔を赤くしながら、一生懸命になつきは思いを伝える。そんななつきの様子とは対照的に悠は冷静だった。どんなことにも一生懸命なのは失望されたくないから、力の抜き方がわからないから。誰にでも優しいのは、そうしていれば嫌われることは無いと思ったからで自分の為だった。優しくなんてない。自分が傷つきたくないから。なつきや遥香を優先するのだって、2人といるのが一番心地よくて、2人が離れてしまうのが怖いから。全て自分の為で、なつきが思っているほど出来た人間ではない。悠はそんな自分が嫌いだ。だから、好きだと言われても素直に喜ぶことが出来ないでいた。しかし、いつまでも黙っているわけにはいかない。悠は暗い気持を押し込めて言う。


「ごめん。気持ちは嬉しいけど私は、恋とか愛とかよくわからなくて、だから付き合うとかもよくわからなくて」


暗い気持だけは隠して、素直な気持ちを伝える悠。


「女の子同士って言うところは、気持ち悪かったりしない?」


「それは全然。そんなことで気持ち悪いなんて思ったりはないよ」


それは、悠の本音だった。誰が誰を好きになるのも自由だ。それが同性だろうが歳の差があろうが好きになることは自由だと悠は思っている。好きを知らないなりに、好きになるということを考えたことは多々ある。好きだという気持ちを操作できるのなら浮気や不倫なんてこの世に存在しないだろうというのが悠の見解だった。


「ならさ、とりあえずお試しで付き合ってみるのはどう?今まで悠は私の事幼馴染としてしか見たことないだろうしだ、そういう対象として見てみて、それでもなんとも思わなければその時に振ってくれればいいからさ」


なつきの提案に悠は驚いた。確かに幼馴染としてしか見たことは無かったが、だからと言ってお試しで付き合うなんて選択肢が提案されるとは思っても見なかった。そんな気持ちで付き合ってもよいものなのだろうかと悠は考える。考えるが遥香の恋愛相談にすら答えを出すことができない悠が自分の恋愛に答えを出せるわけがなかった。


「ごめん。考えさせて」

それだけ告げると、なつきの返事も聞かずに悠は、逃げ出した。



 なつきからのまさかの告白に悠の脳は既にキャパシティーオバー状態だったが、遥香との約束があるため、帰るわけにもいかず、昨日と同じ公園に悠は向かった。


 既に遥香は公園に付いて、昨日と同じベンチに座っていた。


「ごめん、少し遅れたよね」


悠は、小走りで近寄り遥香に謝る。さすがに、なつきからの告白は想定外すぎて思っていたより長くあそこで悩んでいたため、遥香との待ち合わせに5分程遅れてしまったのだ。もちろん遅れる旨を連絡はしていたが、遅刻という事実は変わらないため、謝った。


「事前に連絡くれたし、悠が遅れるなんて珍しいから何か理由があったんでしょ?大丈夫だよ」


遥香は、特に気にした様子もなく、悠を隣に座る用に促す。ありがとう、と一言告げて隣に座った悠は早速本題に入る。


「昨日の話だけどさ、自分なりに考えてみたよ。最終的には遥香のことだし一つの意見として聞いてくれればいいから」


そう前置きして悠は今朝、智美と話して自分なりにたどり着いた答えを伝える。遥香も真面目な顔でそんな悠を見つめていた。


「もしもね、その男の子のことを好きになる可能性が無いのなら断るのが優しさだと思うんだ」


「うん! そうだよね! なら」


「でもね」


遥香がパァっと顔を明るくしながら返事をしようとすると、悠が言葉を続ける。


「でも、少しでもその男の子のことを好きになる可能性があるなら友達になってもいいんじゃないかなって思うよ」


悠の続けたこの言葉を聞いた遥香は俯いた。一瞬あれほど笑顔だった遥香が今度は元気無く見える。


「どうしたの……?」


悠が問いかけると、若干涙声になりながら遥香がポツリ、ポツリと話始める。


「悠はさ、もし私に恋人ができたらどう思う?嬉しい?悲しい?」


遥香の言っている事の本意が良く分からない悠は、思ったままを答える。


「多分、おめでとうって言うし、嬉しいんじゃないかなぁ」


悠の言葉を聞いた遥香は肩を震わせ、足には零れ落ちた涙がシミを作っていく。何故か遥香を泣かせてしまったと悠は何を間違えたのかの考えるがわからない。とりあえず理由を聞かなければと思った悠は問いかける。


「ごめん、なんで泣かせてしまったのか全然わからなくて、何か傷つけるようなこと言っちゃったのかな」


「ごめんね、悠は悪くないんだ。勝手に期待して勝手に傷ついただけだから」


首を横に振りながら遥香が言った。しかし、悠はまだ意味がわからない。それに悠の言葉が遥香を傷つけたことは間違いないようで申し訳なくなる。


「私さ、悠に止めて欲しかっただけなんだ。遥香に恋人ができるのは嫌だって言ってほしかっただけ。めんどくさいよね私」


「いや、えっと、答えは初めから出てたってこと? 止めてほしかったってなんで」


「私が悠を好きだから。悠が私に特別な感情が無いことはわかってたけど、もし私に恋人ができるかもってなったら少しくらい嫌だって思ってくれないかなって。そんな気持ちで相談したの。ごめんなさい。悠、一生懸命考えてくれたのに。ごめん、今日は帰るね」


そう言って遥香は走って去っていった。


 なつきに続いて、幼馴染からの告白に悠はもう頭が回らなかった。そんな回らない頭で取り残された悠は考える。思い返してみれば、なつきも遥香も幼馴染びいきなしに見ても可愛らしい見た目をしている。それなのに誰がなつきのことが好きらしい、遥香のことを好きらしい。そんな噂が耳に入ることはあっても、2人が誰かと付き合ったという噂は1度も聞いたことが無かった。それぞれに友達が別にいても、登下校はいつも3人で恋人の影も実際なかったのは事実だ。しかし、だからと言って2人が悠を好きだとは思わない。そんな考えに至るわけがなかった。大前提として3人は女子なのだから。


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