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1話



《now loading…system data Checking…complete…restart…Start-up》


目を覚ますと、真っ暗闇が広がっていた。


《暗視mode起動》


突如、真っ暗だった世界に灯りがともったように色が付き、視界一杯に変わった景色が入り込む。


《詳細表示》


ーー被験体10565号。死亡。


ーー被験体10566号。死亡。


ーー被験体10567号。生存。


視界に映る無数のガラス容器の内容物に名称が表示された。


被験体10565号は真っ赤な球体の形をした何か。

被験体10566号は身体の端から腐り、腐った先から再生し続ける猫のような何か。

被験体10567号の容器には何も入っていないように見える。


《Infrared thermography起動》


視界に映る色が一変して、温度を可視化出来るようになり、被験体10567号の容器内に何かが漂っているのが分かった。


《暗視mode変更》


僕が被験体10567号の正体を理解したと同時に、視界は元の色を取り戻す。


ところで…僕はどこに居るんだろう?


その疑問に答えるかのように、僕を閉じ込めていたガラス容器が開いて液体と共に外に放り出された。


身体が思い通りに動かなくて床に打ち付けられる。

けれど、痛くも痒くもなかった。


首だけを動かして振り返ってみると、僕も他の被験体達と同じようにガラス容器に入れられていたみたいで、空になったガラス容器があった。


ガラス容器の下部には被験体10032号と書かれている。


《被験体10032号の詳細表示…》


視界一杯に被験体10032号の実験記録の書かれたモニターが突如現れた。


ーーー


被験体10032号。実験No.10032。

名称:核融合人造兵器。通称:nucleus(ニュークリゥス)


告:魔核・天核・邪核を融合ーー成功。

意識のある人体に埋め込みーー失敗。

死亡済み被験体101号に埋め込みーー成功。

101号を10032号として扱う。

遠隔操作機能を追加ーー失敗。

独立思考機能を追加。

擬似魂を搭載。起動ーー成功。

演算能力及び進化能力を追加。

独自判断下での行動を確認。

命令判断機能を追加。

master権限の管轄下に置く。

多種兵装を追加。

試験運用のため戦場に投入ーー敗北。

破損部を機械化ーー成功。

更に兵装を追加。

思考能力・演算能力を向上。

再度、戦場に投入ーー敗北。

兵装に新型兵装を追加。

実験段階である武装、通称:フラガラッハを搭載。

戦場に投入ーー勝利。

実験段階の新型兵装を追加。

戦場に投入ーー勝利。

実験段階の新型兵装を追加。

戦場に投入ーー勝利。

実験段階の新型武装を追加。

実験段階の新型兵装を追加。

実験段階の機能を追加。

戦場に投入ーー敗北。

被験体10032号の思考回路に原因不明のERRORが多発。暴走を確認。

全機能緊急停止。

被験体10032号の残骸を回収。

次の実験のために保管。


これにて被験体10032号の実験は終了とする。


ーーー


………なにこれ?


全て読み終わると、ご丁寧に被験体10032号の設計図らしき絵に切り替わった。


こんなものを僕が見ても分かるはずもなく、興味が失せた瞬間に視界からモニターが消え失せる。


取り敢えず立とうとしても、やっぱり身体が思い通りに動かない。

まるで僕の体じゃないような感じがする。

だけど、肌が触れている床から伝わる冷たい感覚は疑うまでもなく本物で、鼻を刺激する消毒液の臭いも、立ち上がろうと手足に力を込めている感覚も。全ての感覚がこの体が僕の体だと教えてくる。


《身体機能にERROR》


《機能制限解除ーー歩行mode》


不意に全身に電気を流されたような感覚に襲われて、ビックリして跳び起きた。


……動けた。


どうしてか分からないけれど、起きれた。

さっきまで動かなかったのが嘘のように身体を動かされるようになった。


そして、次の問題にぶち当たった。


「…………」


声が出ない。


《声帯機能が存在しません。作成します…》


《声帯をsetting…》


《……complete》


声は出せないけれど、別に今すぐに必要という訳じゃない。

今は身体が動いていればそれで良い。それ以外の事は後で考えよう。


今は兎に角ここから出ないと。

ここは気味が悪い。周りのガラス容器に閉じ込められている歪な何かが僕を見てるように感じるし、なにより凄く心細くて不安だ。


《他被験体とlink…complete》


《他被験体の視覚を遮断》


どうして僕がこんな所にいるのか、とか。誰も助けに来ないんじゃないか、とか。周りのガラス容器の中の被験体ってのが動き出して襲い掛かって来そう、とか。


今にも不安に重圧となって押し潰されそう。


《敵性感知を常時起動に変更。敵性を詮索…該当なし》


だから、早くここから出たい。


《出口を検索…ERROR》


ビクビクしながら、この不気味な場所を行く当てもなく恐る恐る歩き始める。


《出口の消失を確認》


それにしても、ここってどう言う場所なんだろう?

見た感じだと研究所のように見えるんだけど。


《解答。兵器開発所です》


《出口消失の対応策を模索…外界への転移が可能と判明》


ふと立ち止まり、さっきから視界端で動く何かに意識を向けーー。


《転移しますか?》


『はい』『いいえ』


二つの選択技が視界に表示された。


視界端から意識が外れ、目の前のモニターのような物に目がいく。


それは手を伸ばしても触れる事が出来なくて、周りの光景の上に被るように映っている。

まるで眼球の表面…網膜に張り付いているかのように見える。


僕が起きた時と言い、ついさっきの被験体の説明文と言い、これは一体なんなんだろう?


《解答。擬似魂と融合核によって創られた擬似人格との連絡回路です》


まぁ、こんな疑問に答えてくれる人なんていないよね。

そもそも、声が出ないから尋ねる事も出来ないし、ここに居るのはガラス容器に閉じ込められた気持ち悪い生き物とかばかりだから、誰も答えてくれるはずがない。


それで…これ、『はい』を選んだらどうなるーー。


《転移します。起動まで120秒…》


突然、眩しい光が僕に襲い掛かってきて目の前が真っ白になった。


思わず目を腕で覆う。


《暗視mode解除》


目が慣れて来たのか、腕の隙間から見える光が眩しくなくなり、腕を下ろして周囲を伺う。


さっきまで見えていた光景と変わらない。

誰かが来たような気配もしない。


けれど、目に見えて分かるほどの変化があった。


《常時視覚自動補正を適応》


周りにあるガラス容器の側にモニターが表示され、沢山のグラフが脈動するように動いた。

遥か高くにある天井には照明が灯り、足元の鉄の床の隙間にある沢山の管にカラフルな色をした何かが流れ始めている。


少し視線を上げてみれば、この大部屋を一望できるガラス張りの部屋があった。

やっぱり人の気配ない。


《動体感知を常時起動に変更》


その下辺りに大きな扉らしき物がある。

もしかすると出口かもしれない。


そう思い出口に向かおうとすると不意に周りの機材が明滅し始めた。

ビックリした僕は足を止めて周囲を警戒する。


《転移まで残り…10秒…9秒…8秒…》


やっぱり誰もいない。機械の誤作動かな?


あちこちに点在するモニターや足元のカラフルな管。それに、天井などの照明が激しく明滅しているだけで、何かが動くような気配はない。


誰もいない事を確認してから僕は恐る恐る足を進めーー。


《0秒…転移します》


ほんの一瞬の浮遊感に包まれると同時に視界が一転して、太陽の下に放り出された。



○○○



ズドォォォォォンッ!!


そんな轟音を響かせて、僕は地面に落ちた。

気持ちは、安全綱なしでバンジージャンプをしたみたいだ。いや、それよりも遥かに最悪かもしれない。


おそらく。いや、十中八九。いいや、間違いなく。僕は地面に強く叩きつけられたカエルのように潰れてしまったに違いない。


そんな勢いで僕は空から落ちた。

空…もっと言うなら、雲の上から。


あの研究所で視界が一転したと思えば、気が付くと雲を見下げれる高さに居たんだ。

飛行機とかが飛ぶような高さからの落下。


肝が冷えるとか、そんな次元の話じゃない。

パラシュートもなければ、安全綱もない。空を飛べるわけでもなければ、特別な力があるはずもなく…そんな僕には地面に叩き付けられて死ぬ運命しか残ってない。


なので、そのまま泣き叫ぶ事しか出来ずに地面に叩きつけられた僕は既に死んでしまっているんだろう。

痛みもなければ苦しくもないんだ。死んでいて当然のはず…。


《破損部位修復中…》


…あぁ。思えば、短くツマラナイ人生だった。

毎日、学校では寝るだけ。家に帰ってもアニメ観るか漫画を読むぐらいで、それ以外は寝て過ごしていた。


《修復complete》


こんな事ならもっと充実した人生を送ればよかった。


《兵装解除…complete》


例えば、ちゃんと友達作ったり…親孝行したり…もっと遊んだり、遠慮なんかせずに好きな事をしたら良かった。


《restart until…3…2…1…complete》


あぁ…本当に短い人生だった…。


そう過去を悔いているとーー。


《Start-up》


まるで誰かに強制的に両目を開かせられたように、眩い光が視界に入ってきて思わず目を背けて腕で覆う。


「生きてた…」


……声出た。


さっきまで出なかったのに、どうしてだろ?

いや、そう言えば、落ちてる時も声が出てたような…。


そんな事はさておき、


「生きてる…」


《状態検査…異常なし》


身体に痛い所はなく、苦しさも感じられない。動かそうと思えば動かせれるぐらい快調だ。

それに、声も出る。


《ERROR。不明のprogrammeを検知》


半端、生きる事を諦めていた今の僕にとって朗報みたいな事で、自然と涙が溢れ出てくる。


《ERROR。解析不可。対策…不明。当機に存在しないprogrammeです》


生きているのがこれほど嬉しい事なんだって身に染みて知った僕は、生きている事のありがたみを噛み締めながら暫くその場で泣いた。


《ERROR…ERROR…ERROR》



○○○



「……どこ行こう?」


辺りを見渡すと、見える限り一面に草原が広がっている。


《当該地はアグレッタ地方と判定》


僕の背後には隕石の落ちたようなクレーターがあるけれど、そこは僕の落ちてきた場所だ。


よくあれで生きていたよね…と思わず自分の事なのに感心してしまう。


《先刻の破損率を再計算…8%》


それはさておき、一面草原が広がる地に何も持たされずに放り出された僕は、これからどうすればいいんだろう?


《ERROR。指示がありません》


取り敢えず…服…かな?


《服を検索…該当なし。作製…不可。材料が足りません》


今の僕は真っ裸だ。

ガラス容器から放り出された姿のままこの場所に落とされて、着替える暇なんてなかった。


そもそも着替えがあったのかさえ分からないけれど、こんな姿で出歩くなんて恥ずかしくて僕には出来ない。


《服を検索…該当なし。解決策を模索…距離103m先に居るホーンラビットを素材として作製可能となります》


穴があったら入りたいぐらいだ。


《穴を作製します》


ズボッと音が鳴ったと思ったら、僕の目の前に穴が出来た。


「え?」


………どうして?


《解答。穴を作製しました。深さ10m。幅直径1mです》


結構深いし…。落ちたら危なそう。


《新たな穴を作製します》


またズボッと音が鳴って、初めに出来た穴の隣に新しく穴が出来た。


「………」


今度のは浅い。凄く浅い。

僕の足を入れると一杯になるぐらいの広さと深さだ。


まるで落とし穴に近い。


片方が落ちたら登れないぐらいで、もう片方は走ってると足を引っ掛けそうだ。


なんて思っていると、茂みから一匹の兎が凄い勢いで飛び出して来て、まず浅い穴に足を引っ掛け、次に深い穴の中に落ちて行った。


「…へ?」


思った矢先にこうなるなんて、予想外だ。


《当該生物を検索…ホーンラビットと判定。生存を確認。敵意を感知。魔法で殺害します》


兎が落ちて行った穴を覗くと、穴の底から飛び出す針のような岩に突き刺さって死んでいた。


「うわぁ…」


危なかった…。僕も落ちたらああなっていたかもしれない。


死んでしまった兎には悪いけれど、僕は内心でホッと息を吐いて安堵する。

と、同時に、兎の死体が余りにもグロテスクで吐き気を催して目を背ける。


《服の材料が集まりました。材料を回収して下さい》


出来ればお墓を掘って弔ってあげたい所だけど、あんな所まで取りに行けないし、あまり長時間見れない。


《視覚を遮断。ホーンラビットを回収します》


「えっ!?み、見えないっ!!」


突然、視界が真っ暗になって前が見えなくなって焦って慌てふためきーーふと、なんだか生温かい感触が手に伝わって来た。


《視覚を接続》


真っ暗だった視界が色を取り戻して、さっきまでのは何だったのかと自分の目に不安を抱きながら安堵の息を吐いて、手元に視線を向けると…。


「うわっ!?」


思わず手に持っていたモノを投げて目を背けてしまう。

前を見ないようにと顔の前に両手を持っていくと、手にはベットリと赤黒い血が付着していた。


「わっ!?わっ!?わっ!?」


焦り、混乱し、慌てて腰を抜かして地面に尻餅を着き、そのたま後退りする。そして、指の先に生温かい何かに触れた。


振り返ってそれを確認するとーー。


「うわあああぁぁっ………」


深い穴の底に落ちて死んだ兎の死体で…僕の意識はそこで途切れた。



●●●



《ERROR。主魂(マスター)とのlinkが切断されました。解決策を模索…ERROR。対策不明。代案を試行します…》


「………complete。これより、主魂とのlinkが繋がるまで行動を擬似人格に移行します」


ついさっき気を失って倒れたばかりの彼がムクリと体を起こし、死んで動かない角の生えた兎ーーホーンラビットを鷲掴みにして一拍。


「服の作製を再開します」


反対の手の指をナイフのように変形させると、丁寧に、素早くホーンラビットを解体し始めた。

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