皐月ー7
小莱の思想は私の思想をそのまま反映させています。
お楽しみ頂ければと思います。
智輝と小莱の二人はその日の内に例の放課後デイサービスのレクリエーションスタッフの募集に電話で応募した。
事業所からは、まずは施設の見学とサービスの概要を知ってもらってから面接に入ると連絡があった。
智輝が自宅のパソコンで調べるとおおよその情報では
養護学校から帰宅した児童を見守る施設が運営するサービスとあった。
様々なハンディキャップを抱えた子供逹が、家族が働いている間、施設内でレクリエーションを通して楽しみながら自立性や社会性を育む取り組みを支援する職員を募集との事だ。
施設での常勤スタッフの多くは、ヘルパー2級取得者や介護福祉士、看護師や看護助士、保育士や養護教員免許等を持つ人達で構成されてはいたが
絵画やダンス等の専門的な技術や知識を持つ者はおらず募集をかけたようだった。
以前にもレクリエーションスタッフとして来てくれた者はいたが、相手が介助を必要とする子供とあって、結局長続きせず入れ替わり立ち替わり辞めていくのだった。
募集概要に
「出来る限り長期で」
とあったのはそのせいだった。
しかし施設のホームページを眺める分には
サービスを受けている利用者の子供逹の写真の笑顔はとても輝いていた。
「ロイさん、ハンディキャップのお子さんにダンスを教えた事はあるんですか?」
晩御飯の用意までの数時間
ホームページを一緒に眺める小莱に智輝は質問した。
「いえ。今回が初めてになります。」
小莱は智輝を真っ直ぐ見ながら正直に答えた。
「俺も、子供さんを相手にする事は姉貴の子達で慣れてますけどハンディキャップの子供さんは初めてですよ。」
智輝も正直に言った。
「ハンディキャップがある事は、何も特殊な事ではありマセン。個性と同じデス。それぞれ一人一人、違う見た目、性格、それと同じデスから、何も身構える必要ありマセンヨ。」
智輝の心許ない様子に小莱は達観しているように堂々と答えた。
そんな小莱をさすがに、今まで指導者を経験してきただけはあると智輝は感心しながら思った。
「ですよね。ハンディキャップって概念自体がそもそも偏見ですよね。」
智輝は溜め息をつきながら言った。
「僕、健常者とか障害者とか分けて言うの嫌いデス。この見方、考え方自体オカシイ。間違いデス。健常者、問題ない人、違いマス。障害者可哀想と思う、違いマス。皆、ただの個性デス。肌や目や髪の色が世界中の人皆違うのと同じなだけの立派な人間デス。」
小莱の思想はかなり進んだものだった。
「そうですよね!そもそも健常者なんて言い方自体が自分は健常者だって思い込んでる連中の偏見的な言い方なんですよね!」
智輝は力を込めて言った。
思えば智輝自身、遺伝子疾患により体毛や光彩、肌の色素が非常に薄い特徴を持っていた。
「そうです。この子達見てください。皆、すごく綺麗な目してます。この子達は皆天使様です。」
小莱の言葉に智輝はもう一度パソコンのモニターに目をやるとはっと息を飲んだ。
何故なら画面から微笑みかけている利用者の子供逹の背にそれぞれうっすら翼の影が浮かび上がっていたからだ。
「これ…!」
「この子達は皆、この世の人間に助け合う事の大切さ、愛の心を伝えるために降りてきた天使様なんデスよ。人間逹が進んで真っ直ぐな心でこの子達を愛せば、愛するだけで神様の国に近付けるデショ?」
智輝は小莱の方を見てからもう一度パソコンの方を見ると、さっきより更に彼らの翼の影が濃くはっきり浮かび上がっているのが確認出来た。
「そうか。この子逹も地上を…人類を救うために降ろされたのか…。」
智輝は懐かしい“天界”の様子を思い浮かべながら呟いた。




