皐月ー6
お楽しみ頂ければと思います。
智輝の実家から徒歩で5分ほどの所にその公園はあった。
三時過ぎだが、珍しく無人で広々としており、ダンスをするには正に絶好の機会だった。
小莱は前回していたあのスポーティな服装に着替えてきていた。
しなやかに伸びた長い手足はそれこそダンスを踊るにはぴったりの抜群のスタイルで、ダンサーらしく準備運動をしている様子も非常に絵になっていた。
「ロイさんの携帯って確かBluetooth繋げられましたよね?」
智輝は鞄から青い愛用のBluetoothのワイヤレススピーカーを取り出しながら言った。
「はい!あ、えっとペアリングお願いします!」
小莱はスウェットの上着から携帯を出すと智輝に手渡した。
「auのガラホですね。俺のタイプのと一緒だからできるかも。」
智輝はそう言いながら小莱の携帯の無線機器の設定からBluetoothに繋いだ。
Bluetoothも問題なく繋がりペアリングが完了した携帯からLISMOの項目を選び楽曲の一覧を見てみると、小莱は実に様々なジャンルの曲を聴いている事が窺えた。
ユーロ系に始まりトランス、ヒップホップ、R&B等のダンス系を中心に、洋楽もロックからバラード系、J-ポップス、香港のポップスや台湾、中国のポップス、ヒーリング、クラシック、アニメソングまで幅広くあった。
「すっげ…俺の携帯といい勝負なぐらいめちゃくちゃ入ってる…!ロイさん!どの曲がオススメなんですか?」
智輝は隣に腰掛ける小莱に携帯を渡しながら尋ねた。
「僕の好きなのこれデス!」
小莱は智輝に携帯の画面を見せながらスクロールしていき、ある一曲を紹介した。
そこには
アーティスト名
「Astroline」
曲名
「Close my eyes 」
とあった。
「ああ!この曲!俺、知ってます!めちゃくちゃ良い曲ですよね!あの…YouTubeでファイナルファンタジーのキャラが踊ってる動画で知って…」
智輝は画面を見るなり大興奮で捲し立てた。
「本当デスカ!?僕も初めて聴いてからメロディと歌詞が頭から離れなくなって…大好きなんです。」
小莱も共感者がいてくれた事が余程嬉しかったのか頬を薄紅に染めながら肩を弾ませ言った。
「ホント!何かロイさんとは音楽の方向性でも話が合いそうですね!こういうメロディラインが好きなら…もしかしてE-Rotic とか、Smile.dkとかも好きですよね!」
智輝は尚も興奮を抑えることなく続けた。
「勿論です!それも入ってます!」
小莱も嬉しそうに答えながら曲を探しだし智輝に見せた。
「Smile.dk 」では
「Butterfly 」に始まり「Tomoe」や「Japanese Boy 」
「E - Rotic 」では
「I want you 」「Missing you 」「Give A Little Love 」、「Billy Jive 」
等が勢揃いしていた。
「これ全部違う振り付けで踊れます。どの曲のダンス見たいですか?」
小莱はウキウキした様子で智輝に尋ねた。
「はい。えっと本当は全部見たいですけど、最初のこれ、“Close my eyes ”お願いします!」
智輝は携帯の画面をスクロールして最初の曲を指定した。
「わかりました!では曲のスタートお願いします!」
小莱はそう言いながら、ちょうどステージのようになっている一角に立った。
智輝が再生ボタンを押すと、壮大でエモーショナルなイントロが始まった。
イントロのメロディを4回数えた所からボーカルが入りClose my eyes が始まった。
小莱は完全に曲の世界に入り込んでいるのか、さっきまでとは表情が全く違うものになっていた。
ステップも両手の独特の動作も音楽にぴったりで、次第に智輝も小莱のダンスの作り出す世界に引き込まれていった。
「すげ…ロイさん…本当にカッコいい…!」
智輝は瞬きするのも忘れる程に小莱に魅せられていた。
やはり過去に講師の座にまで登り詰めただけあり彼のダンスの技術はプロ級だった。
ダイナミックであり、尚且つ美しく繊細で色気に溢れ見る者全てを魅了するダンス。
智輝は小莱の放つこの素晴らしい芸術を沢山の人に見せたいと心底思ったのだった。




