☆第3話 魔法を覚える方法
オリス兄さんの訓練で魔法をぶっ放した翌日から、お父さんから魔法の使用禁止令を解かれた。
私は純粋に、また魔法を使えることに喜んだ。
でも実際は、私が寝ている間に家族会議が開かれて、魔法を禁止するのは危険だと判断されたためだったけど、もちろん私はそんなことは知らない。
他にも魔法を使う時は、オリス兄さんの練習時と、お父さんか、メイドのジホリさんの監視の下で、時間を決めて魔法を使うことを許可された。
ちなみに破ったら5日間魔法禁止になるので、私は誘惑にも負けずに必死に守った。
そんなこんなで数日が過ぎた頃。
私はお父さんに呼ばれて、ジホリさんと一緒に外に出た。
「おぉ、来たなミリア」
「はい、お父さん」
「今日はミリアにこれを見せたくてな」
そう言って、お父さんが取り出したのは濃い灰色に輝く石。
私は小さな手でそれを握ってまじまじと見詰めた。
「お父さん。これって魔法石!?」
「お、そうだぞ。よく覚えてたな」
魔法石。
それは一部の魔物から出る魔石を、付与技師と呼ばれる人達が付与技術を施し加工した物。
使い道は私の持っている杖の重要な素材になったり、付与技術で作られた魔道具の動力になったりと使い道が広い。
それと、私にとって一番有効的な使い道として、魔法を覚えるための道具としても使われている。
「もしかして。新しい魔法覚えられるの!?」
「ミリアが良い子に……。いや、良い子にしてたからな」
お父さんが私の頭を撫でながら魔法石を渡してくれた。
それからジホリさんが、手に持っていた本をお父さんに渡す。
「さて、ミリア。どんな魔法を覚えたい?」
本を広げて私に見せてくれる。
本には【一等級魔法の魔法陣】と、書かれている。
私がウォーターボールの魔法を覚える時に使った本だ。
「あ、ミリア。火事になりたくないから火魔法以外で頼むよ」
「ミリア大丈夫。火事にしないよ」
「……いや、火魔法以外で。な?」
目をキラキラさせて訴えてもダメだった。
大人しく火魔法以外の魔法を見る。
種類が多いからどれから覚えようか迷っちゃう。
「ミリア様は水魔法を使えたのですから、同じ系統を選んだ方が宜しいのではないですか?」
「ん~。ほかの魔法も出来るか試すね!」
覚えられた水系統の魔法をおぼえるのもいいんだけど……。
アル・ライナには、魔法を使える人が少ない。
どんなものにも魔力が宿っているが、それを操って魔法として使える人はほとんどいない。
まず、人には魔法が使えるかどうかの適性がある。
ここで適性が無いと、どんなに努力しても魔法は使えない。
しかもこの適性の有無を判断する方法が、実際に魔法の儀式をするまで分からない。
魔法儀式とは、魔法陣を描いて、魔法陣の4隅に魔法石を4つ置く。次に魔法陣の中央に立って自分の魔力を流すと、描いた魔法陣に対応する魔法を覚えることが出来る。というもの。
もしここで失敗したら、それは魔法適性が無いか、その対応した属性に適性が無いことになる。
属性の適性とは、そのままの意味で。もし自分が水の属性だけしか適性がなければ、他の属性はどんなに努力しても、魔法儀式を繰り返しても覚えられない。
魔法使いになるには、まず、自分の魔力を操れること、次に魔法の適性があること、最後に属性の適性があること。が条件になる。って、お母さんが勉強して教えてくれた。
私は水の魔法を覚えることが出来たから、水と氷の魔法を覚えることが出来る。
ただ、適性が有ると分かっただけで、一等級から七等級まである水属性の魔法をどこまで覚えられるかは、また別の話になる。
適性が有ると分かっている水魔法を覚えようか?
それとも、別の属性に挑戦してみようかな?
うんうん考えて出た結論は。
「風の魔法にする!」
「本当にいいのか? 失敗したら、当分は出来ないぞ?」
「うぅ~ん。大丈夫!」
にこっと笑って手を握る。
魔法儀式に成功しても失敗しても、その時に使った4つの魔法石と魔法棒は壊れてしまう。
特に魔法石は高いので、いくら貴族といってもそう易々と手に入るものじゃない。
魔法石が高いという理由で、平民出身の魔法使いは少ない。
もっとも、お金のことは子供の私にはどうでもいいことだった。むしろ魔法石がいくらするのかも知らなかった。
お父さんから魔法棒を受け取って、ジホリさんに魔法の本を持ってもらい、そのままページを捲って覚えたい魔法のページを開く。
ペタンとしゃがんで、魔法棒に魔力を流しながら魔法陣を描き始める。
何度も魔法の本に描かれている魔法陣と見比べながら、一生懸命マネして描いていく。
描いている途中で、お母さんと、一緒に勉強していたオリス兄さんも見に来てくれた。
「できた?」
「うん。出来てるよミリア」
魔法陣を描き終わって見比べていると、オリス兄さんが頷いてくれた。
魔法陣は私の魔力を籠めて描いたからなのか、淡く光っている。
私は魔法陣の4隅に魔法石を置いてから中央に立った。
「よし!」
「がんばってミリアちゃん」
お母さんが応援してくれたから、嬉しくなってニコニコしながら手を振った。
私は魔法陣に向かって、自分の手の平から流した魔力を送り込む。
紺色の髪が揺れ動くと同時に、魔法陣の淡い光が輝きを増していった。
光が一定になったところで、魔力を送り込むのを止めて、意識を集中させるように目を閉じる。
すると、自分が覚えようと思っていた魔法のイメージが頭に流れ込んできた。そのイメージを何度も強く自分で使うようにイメージしていると、何かが入り込む感覚と共に魔法陣から光が消える。
「どうだミリア?」
「前と似たような感じだったから、覚えたと思う」
「ジホリ。的の用意をお願いね」
「はい。分かりました奥様」
ジホリさんが的を用意するのを待ってから、魔法を撃つ事にした。
まずは集中するために目を閉じて魔力を感じ、魔力を体に廻らせて、使う魔法のイメージを強く思い描きながら持って来た杖に魔力を流す。
目を開き、詠唱と呪文を口に出す。
「風よ。エアーショット!」
杖の前に現れた空気の塊が、的目掛けて飛んで行く。
エアーショットは的にぶつかり、ぶつかった的は軽く宙に舞った。
「……まさか、水魔法だけじゃなくて風魔法も適性があったなんて」
「旦那様、奥様、おめでとうございます」
「あらあら、ミリアちゃん。良い子に育ったわねー」
「い、妹に負けないように、がんばらないと……」
水もおもしろいけど、風もおもしろい!
目を輝かせながら自分の杖を抱きしめる。
すごく嬉しい。あぁ、なんだか体が火照ってきちゃった……。
目をとろんとさせながら、杖を構える。
「風よ。エアーショット」
空気の塊は地面に落ちていた的を舞い上がらせた。
私はそれに熱い視線を送りながら、もう一度魔法を使う。
「風よ。エアーショット」
落下中だった的が、さらに上空に舞い上がる。
上空にある小さな的に、覚えたばかりの魔法を当てたことに驚いて、口を開けて見ていたお父さんの代わりにジホリさんが私の肩を軽く叩いた。
「ミリア様。いけませんよ、それ以上は明日にしましょう」
「や、やだ! もっとやるぅ!」
「そうですか、では5日間魔法は禁止ですね?」
「や、やだ! やめるぅ!!」
もっと魔法を撃ちたい衝動を抑え込んで耐える。
ここで欲望のままに撃ったら、5日間魔法を使うのが禁止になってしまう。
いや、でも、むしろ本能のままに撃っても……。
「ぐ、ぐぬぬぬぬぅぅ」
必死に誘惑に耐えながらジホリさんに手を引かれ、勉強のために書斎部屋へと連れて行かれる。
あとに残った3人は、互いに顔を見合わせると口を開いた。
「なんとか工面して、また魔法石を買わないとな」
「そうねー。ミリアちゃん喜んでくれるからねー」
「お父さん。稽古をつけてください。このままではミリアに太刀打ちできません」
お父さんはオリス兄さんの肩に手を置いて頷きました。
もう既に太刀打ち出来てないよな? という思いを飲み込んで。




