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1-63:レッサーパンダ達の危機

ドワーフの集団が明らかに殺気立って目の前に集まってくる。

どのドワーフもアックスやハンマー系の重量武器を肩に担いで今にも戦闘に入らんとするかのようにギラギラした眼差しでキュアリーを見ている。


「やはりエルフが裏にいたか。えげつない攻撃をしおって」


先頭に立つより厳ついドワーフがキュアリーを見てそう怒鳴る。

もっとも、ドワーフ達は地声がでかいので怒鳴っていると言う意識は無いかもしれないが。


「失礼ですが今回の騒動はほぼ偶発的に発生した事故です。すべてを私のせいにされても困ります」


衣服の埃を払い、乱れた髪を手櫛で整えた後、キュアリーは堂々とドワーフ達を見つめ返して反論をする。

もっとも、ここまで殺気立った相手に反論が受け入れられるとは欠片も思っていない。


「門を態々開き魔獣を使って攻め込むなど悪辣意外に言いようがあるまい。ただ我らを甘く見た様だな、時がどれ程経とうとも門の監視を怠る我らでは無いわ!」


怒鳴るドワーフに顔を顰めながらもキュアリーはそっと周囲へと視線を飛ばす。

ただどこにもきゅまぁらしき姿を見つける事が出来ない。


特にドワーフ達がきゅまぁの事に言及しないから大丈夫だとは思うけど、どこいったんだろう?


目の前のドワーフ達よりもきゅまぁの動向が気になるキュアリー。そもそも生死ではなく動向と考える辺りきゅまぁの事を信用しているのだろう。


キュアリーがそんな事を考えている間にもドワーフ達はゆっくりとキュアリーを反包囲するかのように移動していた。その事にもちろんキュアリーは気が付いてはいた。しかし、それ以上に気になる事が有った為、あえてその動きを止める事はしなかった。


「俺達も鬼じぇねぇ、大人しく拘束されるなら手荒な事はしねぇ」


ジリジリとこちらへと近づくドワーフの手に拘束具が持たれているのが見えた。

相手のマナを掻き乱しスキルの発動を阻害するのみならずマナの身体補助をさせなくする道具であったはず。ただその道具でメイン装備で固めているキュアリーを抑止できるかと言えば甚だ疑問ではある。

キュアリーの挙動に注視しながら近寄るドワーフ。この時数名のドワーフがキュアリーの足元で戯れるレッサーパンダ達に気が付いたのだった。


「む?見た事の無い生き物だな」


かつてイベント用に作られた変身キャンディー、その多くはこの世界に生息していない生き物を模したものが多かった。レッサーパンダは勿論の事、パンダもペンギンもこの世界にはいない。もっとも似たような生き物はいるのだが。


「シャーーー!シャーーー!」


ドワーフ達の殺気に反応したレッサーパンダ達が仲間内での争いを止め、一斉に威嚇を始める。

しかし、その様子に当たり前ではあるが危機感を感じるドワーフはいない。

そんな中、ゆっくりとキュアリーは後ずさりを始める。キュアリーが動き始めた事に気が付いたドワーフ達は一斉にキュアリーへと注目し警戒を始める。中には手にした武器をグルグルと回し始める者もいる。


「そろそろ時間切れだと思うんだけど、目を逸らしちゃったからどの子が女王様か解んなくなっちゃったのよね」


明らかに焦りの表情を浮かべるキュアリーだが、ドワーフ達にはその表情が何かを企んでいる様に見えた。


「エルフは精霊魔法を使うらしいぞ、どんなのかは解らんから油断するなよ」


「俺達と違い動きが早い、ただ一撃一撃は致命傷さえ気を付ければ何とかなるはずだ」


お互いに注意点を声に出しているというよりはキュアリーへの威嚇に意味合いが強い感じであった。

ジリジリと後ろへ下がるキュアリー、シャーシャーと威嚇するレッサーパンダ、そしてキュアリーが離れた事に気が付き慌ててキュアリーの足にしがみ付く数匹のレッサーパンダ、今一つ緊張感がお散歩している様子のキュアリーサイドに対し、斧を、槌を、ブンブンと振り回す如何にもな姿のドワーフ。

両陣営の緊張感が高まり、ドワーフ達が今まさに踏込み突撃しようかと言う瞬間にそのドワーフ達の背後から大きな声が響き渡った。


「あ、キュアリーさ~~~ん、やっほ~~~」


能天気な、まさに能天気の中の能天気、シリアスクラッシャーな声がドワーフの背後から聞こえた。そしてドワーフ達はあまりに虚を突かれた故に思わず全員が声の方へと振り返ってしまった。

そして、すぐにそれが致命的な隙に成る事に気が付き慌てて今の場所から前方、即ちキュアリーと距離を取る様に転がりながら再度視線を戻した。ただ、そこにはドワーフ達の予想もしていない物があった。


「ギャオォ~~~~~~~ン」


つい先ほどまでは影も形も見る事の無かった、まさに天へと突きあげる様に頭を擡げて上げる叫び声。そのまさに王者ともいうべき巨体と、身体の根底から震えさせるような叫び声にドワーフ達は思わず後ずさる。


「ど、ドラゴンだと!」


「まさか先程のエルフはドラゴンが変化していたのか!」


「ば、馬鹿者!こんな所に突然ドラゴンが現れる物か!あれこそ幻影だ!」


先頭に立つドワーフは怯みそうな気持ちを自身の叫び声で吹き飛ばし、手にしたアックスを振りかぶって前えと突撃した。


「ぬおおおおお!わしらを甘く見るな~~~~!」


ドスドスと走りながらドラゴンへと向かうドワーフ、そしてその姿に鼓舞された他の者達もそれぞれの武器を振りかざして走り出した。


「ぬん!」


そして後方から後方支援のドワーフ達が手に持ったハンドアックスを力いっぱい振りかぶりドラゴン目掛けて投擲する。

そのハンドアックスは凄まじい速度で回転しながらドラゴンの体へと到達した。


ガキン!ガキン!カキン!


次々とドラゴンの巨体へと当たるハンドアックス、しかし太く明らかに堅そうな胴体にあたった物はともかく、首に、ましてや頭に当たった物も傷一つ負わせる事無く弾き返された。


「「「な、なんだと」」」


投擲したドワーフ達が驚きの声を上げる。しかし突撃したドワーフ達はその様子を視認しながらも全力でドラゴンへと走り寄る。


「パワースラッシュ!」


真っ先に辿り着いたドワーフが、スキルを発動し手にした巨大なアックスを叩きつけるように振り下ろそうとした瞬間、視線の横に何かが映る。


ドゲシュ!


「「「「ぬぉぉぉ~~~」」」」


ドラゴンはハンドアックスの攻撃を嫌い素早く体を捻った。そして目の前に迫るドワーフへと真横から勢いをつけて尻尾を叩きつけた。そして走り寄るドワーフを諸共に吹っ飛ばしたのだった。

そして、そのドラゴンの足元付近ではレッサーパンダたちが尻尾の攻撃に巻き込まれないようにギャーギャー大騒ぎで走り回っている。一部のレッサーパンダは頭を抱えて蹲っているが、幸いにしてドラゴンの尻尾はその頭の上を通過した為被害は無い。

しかし、恐る恐る上を見て、復活した女王様ドラゴンを見たレッサーパンダはパニックを起こし逃げ惑うのだった。


昨日短かった為、追加です!

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