1-62:ドラゴン叩き?
「クゥクゥ」「ギャウギャウ!」「キシャーーー!」
キュアリーの周りでレッサーパンダ達が戯れている。
その状況を空を仰いで見ないようにしているキュアリーだが、服はよれよれに、髪はボサボサに、そして全身が砂ぼこりに塗れていた。
「ようやく落ち着いたわ」
そのまま地面に腰を下ろそうとして、この約40分後の事を考えてレッサーパンダから少し距離を置こうと移動を始めるキュアリーだが、その事に気が付いた数匹のレッサーパンダは慌てた様子でキュアリーの足元にしがみついてきた。
「あ~、何となく状況を理解しているんだろうけど、あんた達自業自得だからね!」
足元にしがみつくレッサーパンダを見ながら、そう叱りつけるキュアリー。
しかしレッサーパンダたちは涙目になって頭をフルフルと横に振る。その凶悪なまでの可愛さにキュアリーは溜息を吐くのだった。
事の起こりは女王様ドラゴンがレッサーパンダに姿を変えた時に遡る。
キュアリーの足をガジガジと噛り付く元女王様ドラゴン。そしてキュアリーを包囲するかのように動く殺気だった他の雌ドラゴン達。この時、キュアリーは当初大きく勘違いをしていた。
「あ~~、話し合いはちょっと難しそう・・・・・・かな?」
理不尽に苛立ちながらもこれだけの数のドラゴンを一度に相手にするには歩が悪い。それ故にキュアリーは包囲が完成する前にと一時避難的にドラゴン達の通る事の出来ない門を通り抜けようとした。
そして、動き始めた瞬間に殺気?の向け先がちょっとズレている事に気が付いた。
「あれ?これって」
そして、それまでキュアリーの足に噛り付いていたレッサーパンダも周囲の異変を感じていた。
「シャーーー!シャーーー!」
周囲のドラゴン達に向かって毛を逆立て、牙を剥き出しにして威嚇するレッサーパンダ。その姿は中々に野性を感じさせるものではあったが、ドラゴン達にはまったくこれっぽっちも効果がある様に見えない。
「グゥロロ~ン!」
一番近くにいたドラゴンが、思いっきり足を持ち上げてキュアリーとレッサーパンダへと叩きつけてきた事で違和感の意味が何となく理解できた。
「これってもしかして・・・・・・下剋上?」
前にも説明したようにドラゴンは雌を中心にして群れを組む。その群れの中で一番力の強い雌が卵を産み、群れ全体でその生まれた子供を守るのである。そして、この一番強い雌という所に今回の原因があった。
レッサーパンダ変身キャンディー、これは先にキュアリーの食べたドラゴンのキャンディーと基本的には同じ効果が出る。ただ、今回問題となったのはドラゴンが魔法生物であると言う点である。
「うわ、ちょっと洒落にならない!」
慌てて足元のレッサーパンダを抱えて飛び下がる。そのキュアリーの腕の中では相変わらずシャーシャーとレッサーパンダは威嚇の声を上げている。
勿論すべての雌ドラゴンが下剋上を目指したわけでは無い。
ただ下剋上を始めなかった雌ドラゴンもチラチラとお互いへと視線を向け、ねぇどうする?いっとく?どうしよっかなぁといった雰囲気をバリバリ感じさせる挙動を繰り返している。
恐らくではあるが、まだまだ若い年齢なのであろう。
そもそもドラゴンとは魔法生物である。それ故に変身キャンディーの効果が諸に発揮される。それ故にVITやATKといった基本ステータスは魔法効果が反映されずに非常に抑えられた数値となった。
そして、雌ドラゴン達は種としての本能から女王様ドラゴンの弱体化を察し、更には自身がその地位に取って代わる事をある意味夢見てしまったのだった。
「ギャオォ~~ン!ギュオ~~ン!」
次々と繰り出される攻撃は、幸いなことに的が小さい事も有り不発になる。また、他のドラゴンの体が邪魔になり、尻尾などの範囲攻撃が発動しない事も味方し、キュアリーはレッサーパンダを抱えたままドラゴンの足元をチョロチョロと駆け抜け、何とか無事に門を走り抜ける事に成功した。
「はぁ、まったく、いい加減にしてよね!」
この時、キュアリーは本来ドラゴンの暴走を止めに向かったはずなのだが何ら解決していない事には気が付かず、ただこの混沌とした状況に悪態を吐く。ただある意味当初の目的は達成しているといえばしているのかもしれない。更にこの後まさかの事態が発生し、当初の目的を完了する事が出来たのは運が良かったの一言で表現して良いのだろうか。
ドスッ!
「ん?」
鈍い音が背後から聞こえ思わず振り返ったキュアリーの視線の先には門から首だけを出したドラゴンの頭が飛び込んできた。
「キュロロ~~ン」
マナはドラゴン達が生きる為に必要な物。そもそも彼らはそのマナを求めてやってきたのだ。それ故にドワーフの世界に溢れるマナ、そのマナを嬉しそうに吸収し始めるドラゴン。
声にも明らかに喜悦の音色が混じる。それこそ大好物のお菓子を目の前にした子供の様であった。
「あ~~~、何かこの後の落ちが見えたわ」
がっくりと脱力したように肩を落とすキュアリー、その胸元では抱えられたレッサーパンダが嬉しそうに口をパクパクさせている。時々チロチロと見える舌が非常に可愛らしいが、これもまたマナを必死に取り込んでいるのだろう。ただ、変身キャンディーで姿を、大きさを、固定されているレッサーパンダは兎も角、ドラゴンはそれこそ先程までの女王様の失敗を見事に踏襲するのだった。
「キュオ~~ン」
先程までの声とは違い、悲しげな声を上げ始めるドラゴン。
そのドラゴンへと近づき、キュアリーは溜息を吐きながら変身キャンディーをドラゴンの口の中へと放り込んだ。
するとドラゴンは光り輝き、その光が収まるとそこにはポッカリと開いた門の入り口があった。
「あ~~~も~~~~、こんな事じゃないかと思った!」
キュアリーは手に抱えていたレッサーパンダを地面に置き、慌てて門へと飛び込んだ。
「あうううう~~~~!」
そしてすぐに砂塵と共に門から一匹のレッサーパンダを抱えて駆けだしてきた。
ズボッ!
「キュロロ~~ン」
駆けだしてきたキュアリーを追いかけるようにドラゴンの頭が門の中から突き出される。
そしてお決まりのように歓喜の声を上げる。
足元に抱えてきたレッサーパンダを下ろし、キュアリーは膝を地面について溜息を吐く。
「これをドラゴンの数だけやらないとダメって事は無い・・・・・・よね」
せっせとマナを貪るように口をパクパクさせるドラゴン、次第に身体が膨らみ始めて鳴き声が悲痛な声に変って行くがマナを食べるのを止める様子は無い。
「シャーーー!シャーーー!」
「シャーーー!シャーーー!」
足元では2匹のレッサーパンダがお互いに取っ組み合いの喧嘩をしている。
どうやらレッサーパンダになった事によってお互いのステータスにそれ程の差が出なかったようなのだが。
「元の姿に戻った時大丈夫?」
どちらが女王様ドラゴンかは解らないが、元のドラゴンの姿に戻ればどうなるのか解りそうなものなの。思わず争う2匹にそう声を掛けると、一匹のレッサーパンダが驚愕の表情を浮かべる。っていうかレッサーパンダってあんな顔も出来たんだね。そんな事を思いながら先程から更に悲痛な鳴き声に変わってきているドラゴンへと視線を戻す。そしてまた変身キャンディーを取り出すのだった。
結局のところこの後ドラゴン達は順番に門へと頭を突っ込んだ。
そしてレッサーパンダへと姿を変えてキュアリーの足元でお互いに威嚇しながらも離れることなく集まっている。マナが充足されたのであれば群れを分けても良いのだろうが、先程危なく先に来ていた肉食の大型猫に襲われかけキュアリーに守って貰ったのだ。この為、キュアリーの周囲から離れようとはしない。
「まぁ変身解けるまでは危険と言えば危険っぽいから、ルル悪いけど周囲の警戒をお願いね」
「クォオン」
ルルを含めたルーンウルフの群れが周囲を取り囲んでいる為滅多な事には成らないと思うのだが、そこは一応警戒が必要だ。
「グルルルル」
「うん、フラグ建ててたっていうか戻って来るよねぇ」
がっくりと肩を落とすキュアリーの視線の先には武装したドワーフらしき集団がゆっくりと周囲を警戒しながら近づいてくるのが見えた。
「うん、まったくこれっぽっちも友好的な雰囲気が無いわっていうか、きゅまぁはどこ?」
今更ながらにこっちに先行していたはずのきゅまぁの事に思い至ったある意味薄情なキュアリーであった。
予定より1000字は短いです><
とにかく更新重視で投稿を・・・・・・




