1-46:情報
誤字訂正しました。
ご指摘ありがとうございます。
キュアリーを先頭に、それを取り巻く様にルーンウルフが、そしてその後ろに避難民、最後にドスドスとドラゴンが移動を始めた。もっとも、その間にも魔獣達はマナの豊富な森に入った事ですでに森の中へと勝手気ままに散り始めている。特に一部においては草食獣と肉食獣の追いかけっこが始まっていたりするが、キュアリーもそれに関しては関与するつもりがない為に放置状態であった。
「怪しい気配がまったくないわね。見張りすら置かずに引き上げるなんて何を考えているの?」
森に入ってからエルフや獣人達の気配がまったく感じられない。それは、ルーンウルフ達の挙動からも明らかである。結界によって森への立ち入りが制限されているのは確かであるが、それに対する対処法を相手が持っていないとは言い切れない。
「エルフが結界を過信しすぎているのか、それ以外の要因があるのか、まぁ要因があったとしても普通数人は残すだろうに、平和ボケしてるなぁ」
「ヴォン!」
キュアリーの呟きにルルも同意するかのように鳴く。
森の至る所にウィロー系の魔物を見る事が出来るが、その魔物達はこちらに干渉してこない所を見ると敵意にでも反応しているのだろうか?
「キュアリー様、このまま進んでも大丈夫なのでしょうか?」
「ん?何かある?」
「はい、此方も事を騒がせたくない為、もし宜しければこちらも先触れなどを出してはいかがかと」
ユーリはキュアリーへそう提案する。先に派遣しているサラサ達もいる。更に先行しているアリア達もいる。それ故にそうそう問題になるとは思わないが、それであっても先触れを出しておいて問題になる事は無いだろう。こういう所は外交的な位置づけにある者ならではの配慮であろう。
「そうね、でも止めておきましょう。先触れが無事で済まなさそうだから」
「え?それはどういう事で」
ユーリがそう尋ねた時、一匹のルーンウルフが森の中から何かを引き摺って出てきた。
それはエルフの兵士と思われる死体である。そして、その傷は明らかに剣によって負わされている。
「あ~~もう、嫌な予感ってどうしてこう当たるのかなぁ」
そう呟きながらキュアリーはその兵士の状態を確認する。
「これって背後から刺されているよね」
前面の皮の鎧部分における切り口を見て、次に裏返し背後の状態を確認する。そして出た結論をキュアリーは口にした。
「しかし、争った気配が感じられない」
「恐らく争っていないからだろうね。でもこれって不味いかもだね。アリア達が今どうなっているのか。アリア達の味方であるなら態々死体を森に隠す必要はないと思わない?」
「確かにそうですね、隠すという事は他の者に気が付かれたくないという事ですから」
「もしかしたらだけど、この森の中に結構死体が転がっていたり、埋まっていたりするのかも」
先頭を進むキュアリー達が立ち止まった事で、何かあったのかと状況を確認しに後方からも数名の者がこちらへとやって来た。そして兵士の死体を目にして顔を顰めた。
「これは斥候を放つ方が良いですね。ただこの森で意味があるのかが不明なのですが」
ユーリはそう告げてキュアリーへと視線を向ける。そしてその視線の意味に気が付いたキュアリーは苦笑を浮かべた。
「誰に聞いたのか、この森の事もしくは私の事を良く知っているのね。そうね、この森の中である限り私に対しての待ち伏せは意味ないわ。あえて理由は言わないけどね」
「とにかく、この死体は馬車へと載せていきましょう。何かの証拠になるかも知れないですし」
そう告げると男達がエルフの死体を馬車の荷台へと積んでいく。そして積み終わったのを確認した一行は、再度エルフの村へと進み始めた。
「う~~~ん、困ったわね。何となく状況は見えているんだけど、まさか同族を殺害までするとは、ちょっとアリアでは止める事は無理かな」
道を進みながらこの先の展開を予測するキュアリーである。その表情は悲壮感など欠片も無く、明らかに面倒事への不満しか浮かんでいない。
「でもさぁ、ここまであからさまだとねぇ、一人も見張りがいないってどうなのよ。まぁアリアの馬車を警護しているか、監視しているか、ともかく見張りで残っていた者達が揃って移動したんだろうけどね」
そう呟くキュアリーの様子をユーリは見ながら、この先の状況を思案する。
当初の予定ではエルフの森へと無事に辿り着きさえすれば何とかなるという甘い考えがあった。
今の状況は決して良い方向に向かっていない。恐らくこの後何らかの戦闘に巻き込まれることになる。
すでにその備えをするように指示は出したが、この後の展開は今目の前にいるハイエルフがどう動くかによって大きく変わる事は解っている。それであればより友好を深める必要があり、その為にはどう動けばよいか、それを彼女は先ほどから必死に考えていた。
「キュアリー様、今起きている事の中に我々の存在はどう影響してくるのでしょうか?」
「ん?貴方達の存在?・・・そうねぇ、あんまり関係ないんじゃないかな?そもそも、彼等は貴方達の事をまだ把握していないと思うよ?」
「ええ、わたしもそうだと思いますが、であれば我々は良きにしろ悪しきにしろある意味ジョーカーになるのではないでしょうか?」
自分達はキュアリーの戦力にカウント出来る。そういう意味を言葉の中にそう含めて発言する。
しかし、その事に対しキュアリーの表情になんら変化を見ることは出来ない。
我々の兵力は十分に魅力的であるはず、それなのにまだ駄目なの?あとは何を・・・ユーリは頭の中で必死にこちら側の手札を考える。でも、これ以上に手札を出すよりはまず反応を見てから。
思考はどんどんと加速していく。此方側でもっているキュアリーの情報を思い出すが、切り札となる程の物はない。ただ、かつて彼女が余り他人に関わる事を好まなくなったという。ただその理由は解っていない。
「そこまで心配する事は無いわ。この森に住むエルフであってもそこまで馬鹿じゃ・・・あ、ごめん馬鹿だったわね。でなければ今この時に同族を手に掛ける事はしないだろうし。でもこの森の中であれば問題は無いから安心しなさい」
ユーリの表情に何かを感じ取ったのか、キュアリーはそう告げると又視線を前に戻す。
その足元にいるルルも、キュアリーの顔を一瞬眺めるが、同様に視線を前に移した。
そして一行が行程の中ほどまで達した時、キュアリーは足を止めて前方を見た。そこには、サラサとコラルが倒れていた。そして致命傷ではないが、明らかに全身に無数の傷を負っていた。
「どうやら愚か者は何処にでもいるみたいね。悪いけど後お願いね。ルル、頼むわ」
「ヴォ~~~~~ン!」
キュアリーの声を受け、ルルとルーンウルフ達が一斉に森の中へと散って行った。
「え?何が!あの者達を急いで助けないと」
慌てたように前方へと駆けつけようとしたユーリに対し、キュアリーは手を伸ばしてその行動を止める。
「あれは罠よ、もう少し待ちなさい」
「え?」
ユーリに合わせて前に出ようとして留まった者達も、慌てて周囲の気配を探るのだが、特に罠らしい気配は感じられない。
「ふふふ、エルフの貴方に言うのも変だけど、ホームグラウンドの森にいるエルフを侮ったら危険よ?」
今の状況に相応しからぬ笑いを浮かべ、キュアリーは周囲の状況を探ると、案の定ルーンウルフ達が周囲に隠れている者達を探知し、狩り出し始めているのが解る。
「ほら、出て来たわ」
ルーンウルフに叩き出されたのか、吹っ飛ばされたのか、道の中ほどでサラサ達が倒れている所の手前に倒れ伏したエルフ。そしてその身体は瞬間轟音を上げて吹き飛んだ。
「捕えるつもりもないみたいね。確実にこちらを排除しようとしてるわ」
キュアリーはそう言うと、爆風で荒れた道をサラサ達の方へと進んで行く。その最中にも更に4名のエルフが森から追い立てられて姿を現した。もっとも、現れた時には既にとても戦闘を行えるような状態ではなかったのだが。
「こんな稚拙な罠でこちらをどうこう出来ると思っているのかしら」
キュアリーはサラサ達の傍にくると、鍵の形をしたアイテムを取り出して何かを開ける動作をする。
すると、空中に大きな南京錠の絵が浮かび、その南京錠が外れると共に鍵が光り輝き消え失せた。
「あの、今のは何なのでしょうか?」
「ん?二人を中心に罠が仕掛けられていたから解除しただけよ?」
何の事も無いという様に答えると、倒れている二人の様子を確認する。すると、幸いにして二人とも怪我は酷いが命は失っていなかった。
「ハイヒール!」
キュアリーが回復魔法を唱えると瞬く間に二人の怪我が治って行く。その光景を驚きと共に眺めているサラサ達の横で、キュアリーはふと馬鹿な事を思っていた。
「ここでハイヒールの靴のCGでも出れば面白いのに」
「え?何か言われましたか?」
「別に・・・」
咄嗟の事でキュアリーの呟きを聞き取ることの出来なかったユーリが問いかけるが、キュアリーはぶっきらぼうに返答をすると、二人の意識を取り戻すために気付けの壜をアイテムボックスから取り出すのだった。
「ゴホゴホゴホ・・・」
「ゴホ・・・ゴホ・・・」
咳き込むサラサとコラル、気付けの壜を開けその壜の匂いを嗅がされたとたんに、二人は意識を取り戻して咳き込み始めた。サラサなど目から涙をポロポロと流している。
キュアリーは壜を再度アイテムボックスに仕舞いながら、これって武器になるんじゃないだろうか?そんな事を考えていた。
「どう?気が付いた?」
「は、はい、おかげさまで・・・ゴホッ」
キュアリーの問いかけにサラサはまだ咳き込んでいて答える事が出来ない為、ようやく息を整えたコラルが答える。
「まったく、また怪我して気絶しているなんて、それで?だいたいの事は想像できるけど、アリア達は無事?」
「申し訳ありません。アリア様の状況を確認する事に気を取られ、周囲を囲まれているのに気が付くのが遅れてしまいました。アリア様達ですが、まだ命までは・・・ただそれもキュアリー様に対する人質として活用する為と思われます。アリア様以外の者の処遇は申し訳ない、不明です。あと村の前にはアリア様を含め5名の穏健派の者達が磔にされております」
コラルの言葉に溜息を吐く。やはり状況は最悪の展開を向かえているようだった。
「で、こっち側の裏切り者は誰?誰かが裏切らなければこっちに連絡するくらい何とでもなるでしょ?」
「確認出来ているのはミドリです。あの者が無傷で馭者をしているのを確認しております。馬車からアリア様が引き出される際も拘束される事無く傍らにいました。人族の村から来た者達は拘束された後どうなったかは見届ける事が出来ていません」
「そう、それで?首謀者は誰?あと味方はいるの?」
キュアリーの問いかけに、二人はそろって顔を顰めた。
「アルト様の姿は確認出来ていません。門の所で指揮をとっているのはファリスです」
「ゴホッ、我々穏健派は、すでに拘束されて、いるみたいです。アルト様も恐らくは拘束されているかと」
サラサも息を整えながら私見を述べるが、アルトが敵ではないとの判断は出来ない。むしろ敵である可能性の方が大きい。そんな中において二人は盟主であるアルトが同じエルフを犠牲にする事を信じたくないのであった。
「そっか、解った。ここからは私だけで行くわ。他の人達を連れて行くと足手まといになる可能性があるから。悪いけど最悪はエルフの村が亡びるから覚悟して置いて」
「し、しかし、大半の者達は無関係です!まだ幼き者達もいます!どうか、どうか御一考を!」
サラサがそんなキュアリーへと懇願するが、キュアリーの返答は非常にドライであった。
「悪いけど自分の身を犠牲にしてまで他人を助ける気持ちは無いわ。もちろん私だって無意味な殺戮をする気は無いわよでも必要であれば躊躇わないわ」
「・・・せめて、せめて一般人は」
「そこは貴方達が何とかして、何度も言うけど私は自己犠牲などしないわよ」
キュアリーの表情を見て、サラサとコラルは焦燥感を抱く。それに合わせて今回反乱を起こした者達に対し、それこそ八つ裂きにしても足りないくらいの怒りを覚えた。
「そのエルフの村にこっそり入る方法は有りませんか?我々も一般人の被害を抑えるために協力させていただきます」
キュアリー達のやり取りを聞いていたユーリがそんな提案をしてきた。
ユーリ達は今までルーンウルフ達が狩り出した者達の拘束を行っていた為、今まで会話に入って来ていなかったのだ。
「あ、あります!あの者達の意識が表門に向いているときであれば気が付かれずに入る事も!」
「いや、サラサそれは楽観的すぎる。ミドリは我々や貴方達の事を知っている。だから気が付かれずに入る事は難しいと思う、必ず兵士は配置されているはずだ」
サラサの言葉をコラルが否定する。しかし、その様子を見ていたキュアリーは、彼らが想像もしていない村へと侵入する方法を告げるのだった。
副題が思いつかないのです!




