イェイシー・マシーの一生
今回は前回の続編みたいな感じです。
前世の記憶というものに気付いたのは幼少期だった。
私…イェイシー・マシーには前世の記憶と言うものがあった。
その記憶では、私は正井 泰裕と言う名前で、日本という国で医者になっていた。
イェイシー自身も医者というものに憧れを持っていたので、好都合だと思った。
私は必死に努力した。
日本で医者をしていた記憶があるとはいえ、ここは日本とは全然違う世界。当然、この世界の常識と言うものがある。
家は決して裕福では無かったが、勉強の甲斐あり、ブリーク国立学院に入学した。
その後、首席で卒業、無事に医者となった…
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「先生!どうか…どうかエイミーを…!」
「…やれるだけの事はします。」
ある貴族が、私が働いている病院に来て、院長に泣きついている。
エイミーと呼ばれる貴族の女性を病室に迎えると、院長は私に言った。
「マシー君。医学知識が豊富な君にも手伝ってもらいたい。」
そうして、私もこのチームに加わった。
数日後、私はふと彼女の症状が書かれている書類を見た。
その時、ふと気付いた。
(…もしかして…これは…!)
この症状に見覚えがあった。
いや、忘れるはずがない。何故なら…
私が前世で救えなかった少女と、似たような症状だったからだ。
私はすぐに院長に確認した。
あくまで似たような症状なので、確信は持てなかったが、やれるだけの事はやりたい。その思いだった。
その思いが実ったのか、彼女は奇跡的に回復した。
そのお陰か、院長と私に一代限りの男爵の称号を与えられた。
奇しくも、救えなかった少女と似たような似たような名前の彼女。
彼女を救った瞬間、ほんの少しだけ心のつっかえが取れたようだった。
…その後、今回の件をモデルにした絵本が発行されたのを、当時の私には知る由もなかった…
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数十年の時は流れ、私は1人で生まれ故郷のブリーク王国で隠居していた。
とても長く生きた。悪くはない人生であった。そう思っていたある日、とある人物が現れた。名をケンドリック・ラ・マイメリーと言うらしい。
…公爵ではないか!
話を聞くと、私に会わせたい人物がいると言う。
…一体誰なんだ?そう思いながらも、私はマイメリー公爵邸へと足を運んだ。
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「…美来…ちゃん?」
その名前を聞いたのはいつぶりだろうか。
私の抱える2つの大きな後悔。その内の1つが今、晴れようとしている。
この国の平均寿命どころか、前世の世界の最高齢よりも長く生きている私。
いつ人生を終えてもおかしくない私…そんな私に、今までの人生で最上級に嬉しい出来事が、今、起きたのだ。
姿は違う。でも、確かに『彼女』はそこにいるのだ。
…彼女は長く、長く生きることが出来たのか…
…良かった…!本当に良かった…!
私が救うことができた少女は、幸せな人生を歩み、来世でも健やかに生きている。
心のつっかえが、取れていく…そんな時。
「オーッホッホッホ!!!」
マイメリー公爵夫人が高笑いをした。私が驚いていると、彼女の雰囲気が変わった。
彼女はお辞儀をして、話し始めた。
「佐柄 瑛美です。お久し振りです、先生。」
…一瞬、何を言っているのか分からなかった。
理解した瞬間、喜びの感情を抑える事は出来なくなった。
若くして亡くなった少女が…今、この世界で生きていて、前世の恋人と結ばれ、子供も産まれ、孫もじきに産まれる…
もう1つの後悔が、晴れた瞬間だった。
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あの日から数年後。私はまだ生きている。
しかし、もう満足に身体は動かない。終わりの時はもう近い。
幸せな人生であった。そう自信を持って言える。
そんなある日、より一層幸せになれる日が訪れた。
「この子が…リズ様の?」
「ええ。私の子供です。」
リズ様とフルール様が、自分達の子供を連れて、私のもとにやってきたのだ。
ベッドに臥す私に、2人は子供を近付ける。
私は、リズ様の子の頬を少し撫でる。
キャッキャッと、赤子は笑顔を見せた。
「ふふ…かわいいね。」
「当然ですわ!私の子供ですもの!」
私の呟くような言葉に、リズ様は胸を張って答える。
「先生!私の子供も見てください!」
フルール様の子供も、幸せそうに微笑んでいる。
「ふふ…ありがとう。2人とも。」
私がそう言うと、2人は幸せそうな笑顔を見せた。
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リズ様、フルール様の子を見ることができた私は、その数週間後、長い長い人生を終えた。
素晴らしい人生であった。胸を張ってそう言える。後悔はもう、無い。
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ある日、私の病院に少年が2人駆け込んできた。よく見知った双子の少年達だ。その内の1人、弟の公平くんの額には血が流れている。
双子の兄、陽平くんが私に慌てて話し始める。
「先生!公平が怪我した!」
「おやおや陽平くん。今日は何して?」
「公平が、『俺見聞色持ってんだ!』って言いながら目をつむって走ったら電灯に激突した!」
「何やってんですか!?全く…ほら、怪我見せて。…はい、しばらくは安静にしてね。あと、気分が悪くなったらすぐに救急車を呼んでね?」
「はい!先生!ありがとう!」
「どういたしまして。公平くん、無茶はほどほどにね?」
「…」
「公平くん?」
「…ぜんしょしまーす!バイバイ!」
そう言って、2人は歩いて病院を出た。
私はそんな2人を見送った後、ふうと息をつく。
「…どこでそんな言葉覚えたんだか…全く…ふふっ。」
今日も平和なこの町で…
私は、人を助ける医者の仕事を全うする。
終わり
これにて一旦ひと段落です。次回からは隔月更新になります。




