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無能と追放された「鍵師」、世界の命運を握る禁忌の扉をすべて解放してしまう 〜今さら国に戻れと言われても、実家の鍵はもう変えました〜  作者: 臥亜


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第1話:鍵師、パーティを追い出されて辺境の「開かずの扉」へ向かう

「おいアルト。お前はクビだ。今すぐこのパーティから出て行け」

王都の一等地にある高級酒場。

きらびやかな鎧に身を包んだ勇者・レオンは、濁った黄金の入ったジョッキを机に叩きつけながらそう言い放った。

「……えっ? クビ、ですか?」

アルトは手元にあった、パーティの装備をメンテナンスするためのヤスリを止めた。

「耳が腐っているのか? お前のことだよ、この無能鍵師が」

レオンの隣で、いかにも性格の悪そうな魔導師の女・ミーナがクスクスと品のない笑い声をあげる。

「僕が抜けたら、ダンジョンの宝箱や、罠のかかった扉はどうするんですか? 危険なトラップの解除だって、僕のスキルがないと……」

「ハッ! あんなもの、大魔法で吹き飛ばせば済む話だろ!」

レオンが鼻で笑う。

「お前みたいに、戦いもしないで後ろでガチャガチャ鍵をいじってるだけの地味職人に、一等分の報酬を払うのが馬鹿馬鹿しくなったんだよ。これからは僕の従姉妹の可愛い聖女ちゃんを新メンバーに迎えるんでね。お前みたいな陰気な男の居場所はねえんだ」

アルトは深くため息をついた。

(ダンジョンの宝箱を魔法で吹き飛ばしたら、中の財宝まで消し飛ぶか、最悪の場合、強力な呪いのトラップが暴発するんだけどな……)

それを何度も未然に防いできたのは、アルトの持つユニークスキル【万能開錠マスターキー】のおかげだ。

だが、力こそ正義と信じる彼らに何を言っても無駄だろう。

「わかりました。荷物をまとめたらすぐに出て行きます」

「おう、さっさと失せろ。二度と俺たちの前に顔を見せるなよ!」

こうしてアルトは、3年間尽くしてきた勇者パーティを、身一つで追い出されたのだった。

◇◇◇

それから数日後。

アルトは王都から遠く離れた、大陸の最果てと呼ばれる辺境の街『エンドル』にいた。

王都での生活には未練はなかったが、さすがに職を失ってそのまま引きこもるわけにもいかない。

何か職人として、やりがいのある仕事はないかと酒場の掲示板を眺めていると、一風変わった依頼書が目に飛び込んできた。

『求む、腕利きの鍵師。辺境の【最深ダンジョン】にある、数千年間誰も開けられなかった『神封の扉』を開けた者に、白金貨100枚を支払う』

「数千年間、誰も開けられなかった扉……?」

アルトの鍵師としての血が、ドクンと跳ね上がった。

冒険者ギルドの受付嬢に話を聞くと、その扉は神話の時代に作られたもので、過去に何百人もの高名な魔導師や伝説のシーフが挑み、誰一人として傷一つつけることすらできなかった「絶対不可侵の扉」なのだという。

「誰も開けられなかった鍵、か。……面白そうだ」

職人としての好奇心に抗えなかったアルトは、さっそく道具袋を肩にかけ、街の裏手にあるダンジョンへと向かった。

◇◇◇

ダンジョンの最奥。

そこには、周囲の不気味な岩肌とは明らかに一線を画す、神々しいまでのオーラを放つ巨大な黒い門扉がそびえ立っていた。

門の表面には、複雑怪奇な魔法陣と、見たこともない古代文字がびっしりと刻まれている。

「なるほど、これは凄いな。物理的な構造だけじゃなく、魔力の術式が何重にも絡み合ってる」

普通なら、見ただけで絶望して逃げ出すような代物だ。

しかし、アルトの目は輝いていた。

「でも……僕の【万能開錠】なら、関係ないかな」

アルトは道具袋から、愛用の細いピッキングツールを取り出した。見た目はただの針金に見えるが、彼の魔力が通ったそれは、どんなに複雑な構造も一瞬で見抜くアルトの手足そのものだ。

鍵穴に、すっとツールを差し込む。

脳内に、扉の内部構造が立体的なイメージとなって流れ込んできた。

十重二十重に組まれた神の封印。世界を滅ぼしかねないほどの莫大な魔力の奔流。

だが、アルトにとっては「ちょっと複雑なパズル」に過ぎない。

「ここをこうして、魔力の流れを右に受け流して……よし、ここが『芯』だ」

ツールを指先で、わずかに数ミリ、くいっと捻る。

カチリ。

静まり返ったダンジョンに、妙に心地いい、小さな金属音が響いた。

ドオオオオオオオオオン……!!

地響きと共に、数千年間閉ざされていた『神封の扉』が、ゆっくりと左右に開いていく。

中から溢れ出してきたのは、目も眩むような黄金の光――。

そしてその光の中心から、一人の少女が姿を現した。

銀の髪に、宝石のように澄んだ紅い瞳。背中には、機械仕掛けの美しい翼が生えている。

息を呑むほど美しい少女は、ゆっくりと瞬きをすると、アルトの前に進み出て、優雅にその膝を折った。

『――個体識別、完了。全機能を解放します。あなた様が、我が数千年の封印を解きし新たなるマスターですね?』

「え……?」

『これより当機は、主の敵となるすべての存在を『排除』いたします』

アルトが呆然とする中、彼女から放たれたプレッシャーだけで、ダンジョン全体の空気がビリビリと震え出す。

どうやらアルトは、とんでもない「鍵」を開けてしまったようだった。

(一方その頃、アルトを追い出した勇者パーティが、最初のダンジョンで『開かない宝箱』を前にして大爆発を起こし、全滅しかけていることなど、今のアルトは知る由もなかった)

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