譲歩
「もうすぐ着くよ」
「そう」
「ママのこと皆に話したの。それでね、皆とね考えたの。あのね、ママがまだママの家族と暮らしたいんなら、通い婚でもいいよ。週五で」
「週五?」
「それじゃ通い婚でも何でもないだろ、ダメだ」
「譲歩したのにー」
「何が譲歩だ。言っておくが、譲歩なんかいらない。落としどころなんかないぞ。結婚はさせない」
「するもん、させるもん。酒呑童子だって乗り気だったもん。酒呑童子女の子なら何でもいいって言ってたもん」
「絶対にダメだ。何だっていいなら、酒呑童子は高月渚じゃなくてもいいんだろう?」
「九ちゃんがヤダもん。ママがいい。ママがいいんだもん」
「ワガママいうな」
「言うもん。ママがいい。あのね、ママ。ママがね、どうしても高校だけ卒業したいっていうんなら、赤ちゃんもね、高校卒業してからでいいよ、その後十人産んでくれたらいいから」
「十人はちょっと・・・・・・・・・・・」
「高月渚」
「ごめんなさい」いけない。いけない。
「じゃあ、ママ。何人ならいいの?」
「うーん、五人かなあ?」
「高月渚」
「あー、今のなし、今のなしね」
「五人、ママ五人言った」
「五人か、主はもっと産めそうじゃけどの、ラグビーチームができるくらい」
「芙蓉」
「渚。心配いらん。我が付いておる。遠慮せんと、思った通りに口にするとええ、取られて困るもんなんぞ、そうそう有りはせん」
「うん。ねえ、芙蓉ちゃん」
「何じゃ?」
「ラグビーって、ちなみに、何人でやるの?」
「十五人じゃ」
芙蓉の転がるビー玉を弄ぶような声がした。
高月渚はどんな顔をしているか見なくてもわかった。




