高遠君、いるの?
「何だ?」
思ってたより近くで声がした。
「高遠君、いるの?」
「いるぞ」
「どこにいるの?」
「すぐ後ろにいる」
「本当?」
「嘘ついてどうするんだ」
「いるんだね?」
「ああ、いる、大丈夫だ。高月渚」
「芙蓉ちゃんもいる?」
「おるぞ」
「よかったー、あんまり静かだから、怖かったよ」
「ママ、九ちゃんいるよ、怖くないよ」
「うん、そうだね」
「お前が穴塞いだんだろうが。済まない。少し開けるのに手間取った」
「そうなんだ」
「まったく、鈍くさいわ」
「悪い」
「明日は鯖の竜田揚げと茄子のはさみ揚げじゃな」
「わかった」
「とうもろこしのかき揚げもな」
「揚げ物ばっかりか」
「白和えも食べたいの」
「わかった」
「味噌汁は南瓜じゃぞ」
「ああ」
「すごいね、それ全部高遠君が作るの?」
「ああ」
「当然じゃろう。我料理なんてできん」
「私も全然できないよー」
「ママはお料理なんてできなくていいよ。九ちゃん達がやるから」
「九ちゃんお料理できるの?」
「九ちゃんはできないけど、はじちゃん達ができるから」
「はじちゃんて?」
「九ちゃんと同じ切り落とし、九ちゃんより背高くて、酒呑童子に似たイケメンだよ」
「そうなんだ」
「うん、でもママ。はじちゃんはダメだよ、イケメンだけど、ちょっと頼りないし、ソフトマッチョだから筋肉も足りなくて、イイ体じゃないの。だからダメ。不倫ダメ。絶対」
「わかった」
どこでそんな言葉覚えてくるんだろうと思ったが、テレビもネットも最近はそういう話が多いので仕方のないことだと思い素直に頷いたが、高遠忍に迂闊に肯定するなと言われていたことを思い出し、暗闇の中で高遠忍の反応を待ったが、彼の呆れたように自分の名を呼ぶ声がしなかったので、今のはセーフだったのだとわかった。




