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へとへとだった
本堂の左をすり抜けると宇賀神社があり、その左に東山ハイキングコースと書かれた細い道がある。
細い道を高遠忍に必死でついていきながら、高月渚は「その恰好で行くのか?」という高遠忍の言葉を思い出しては後悔していた。
龍潭寺からの道と違って、こちらは草がボーボーに生い茂り、歩行の邪魔をしている。
そして蜘蛛の巣がいたるところに根を張っている。
あとはやはりサンダルが良くなかった。
何度か転びそうになったが、背中に目でもあるのか、そのたびに芙蓉が髪を伸ばし、転ぶのを阻止してくれた。
高遠忍は無言で淡々と登っている。高月渚も無言でひたすら歩いた。
余計なことを少しでも話せば足を持っていかれそうだった。
落ち葉の上に置かれた石田三成公銅像と書かれた矢印の看板を見ると高遠忍は立ち止まり「もうちょっとだ」と高月渚に言った。
実際は十分ほどしか歩いていないのだが、高月渚はへとへとだった。
高遠忍は彼女の背に回ると、リュックを開け、中からアクエリアスを出し、彼女に渡した。
「ありがとう、飲んでいいの?」
「ああ」
高月渚はペットボトルを開け、アクエリアスを勢いよく半分近く飲んだ。
「ありがとう。生き返ったよ」
「そうか、まだ歩けるか?」
「うん、もちろん。元気になったよ」
「じゃあ、行こう。もうすぐ頂上だ」
「うん」




