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馴れ初めを聞かれても困る  作者: 青木りよこ
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届ける手段

高月渚はお風呂から上がり自室のベッドに正座し、白鼠と向かい合っていた。

彼女の右手には二センチほどに折りたたまれた白い紙。


「チュウちゃんお願い、これ高遠君に届けて」


白鼠は彼女をじっと音がしそうなほど見つめると、嫌だとばかりに小さな顔を力いっぱい右に向けた。

彼女は簡単には引き下がらんとばかりに両の掌に白鼠を乗せて自分の顔の前まで白鼠を持ってきた。


「ねえ、お願い。今日ウサちゃんがやってたみたいに、お手紙運んでほしいの、一度でいいから、ね?」


白鼠は頬を思い切り膨らませ絶対嫌とばかりに今度は小さな顔を全力で左に向けた。


「ねえ、お願い、チュウちゃん」


白鼠は彼女の懇願を聞く耳持ちませんと言う意思を示すかのように背を向けた。

高月渚は困ってしまった。

まだ文面が思いつかないので白い紙は白紙なのだが、まずは届ける手段を確保しておきたく、お風呂上がりの一日で一番気持ちのいい時間に頼んでみたのだが。これである。

何て頑固。


「ねえ、チュウちゃん、こっち向いて?どうしてもダメ?」


白鼠は背中で拒絶した。しょうがない。


「じゃあ、もう明日から、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ブラジャーの中入れてあげないからね、お風呂も一緒に入ってあげない、もうおっぱい禁止」


白鼠はがんっと大きな擬音が見えそうなほど動揺した。

後ろ姿でもわかるくらいに。

そして彼女の方に振り返り「理不尽である」と右手を上げて抗議した。

振り返った白鼠に彼女は「一回だけだから、ね?」とお姉さんぶった会心の笑みを浮かべた。

白鼠は頬を膨らませたまま、「誠意を見せろ」と右手のこぶしは振り上げたままだ。


「どうしてほしいの?」


白鼠は彼女の左の手首から一気に二の腕まで走り抜けると、ネグリジェの中に飛び込み左胸にしばらく張り付いていたが、ハンモック代わりのブラジャーがないので、いつまでも乳首にぶら下がれず、ぺちゃりと左の太腿の上に落ちた。

彼女はネグリジェの裾を持ち上げた。

白いパンツと自分の白いお腹とおへそが見えた。

先ほどからの彼女たちのやり取りを、われ関せずと知らん顔をしていたシロちゃんは白鼠を咥え、「いい加減にしろ」とばかりに床に投げ捨てた。


「シロちゃん、何てことするの」


彼女はシロに「めっ」と言う顔をし、白鼠を救出し、ベッドに寝転がった。

白鼠はネグリジェに裾から潜り込み、白い腹をトコトコ四つん這いで歩き、巨大な山の頂上にたどり着き、両手でしっかりと暖かくて柔らかい白い枕を抱きしめ目を閉じた。

結局何も話は進まなかったということに彼女は気づいた。


仕方がない。

別の方法を考えよう。

昨日の今日で彼から動いてくれたことで、彼女の心には不思議な余裕があった。

そのため彼女は今だかってないほど前向きだった。

それよりも、まず何を書く?何を書けばいい?

携帯に手を伸ばし、「連絡先の聞き方」を検索してみたが、膨大な文字の羅列は答えがなさそうに思え、彼女はさっさと諦め、グラブルを始めた。

以外とこういうところに答えがあるかもと、期待しながら。

白鼠は自分の権利を守る戦いに見事勝利し、満足そうに眠っていた。

白蛇もやっと静かになったと眠りについた。

アサルトタイムが終わったので、彼女も眠りについた。

いっそ夢の中に高遠君が出てきてくれないかな、と思いながら。


だって夢ならもっとうまく話せそうだし。

覚めるまではずっと二人きりで話ができる。

そうしたら、今度こそ順序良く全部話してしまいたい。

高遠君に逢うまでの物語を。

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