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馴れ初めを聞かれても困る  作者: 青木りよこ
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踏切の先

あと数分で高月渚の家があった。だが彼女は家に帰らず、踏切まで駆けだした。

電車が通過し、遮断機が上がると彼女は白兎に駆け寄り、子供に視線を合わすようにしゃがみ、しっかり目を見て聞いた。


「高遠君は?」白兎は彼女の体の一番飛び出た部分に飛びつき頬をすりすりと寄せてきた。

彼女は立ち上がり両腕に抱いた白兎に再度聞いた。

「ねえ、ウサちゃん。高遠君は?」白兎は彼女の右胸を赤子が鞠で遊ぶように堪能していたが、彼女の声で高遠忍を思い出したのか右手を彼女から見て左方向に指さした。

右手で示すその先のコンクリートの道路の果てには大祠弁財天という中々立派な山門のあるお寺があり、その手前には彦根藩の初代藩主直政公とその息子である二代藩主直孝公を祀った神社がある。

彼女は白兎を抱えて走り出した。

少し走ったところで、白兎は止まってと合図するように、彼女の右胸をポンポンと叩き、また右手で指を指した。


「こっちなの?」白兎は首を縦に振った。

「ここに高遠君がいるの?」白兎は今度も首を縦に振った。


彼女に視線の先に「東山ハイキングコース」と書かれた小さな看板がある。

その横には石田三成公銅像所という石碑も。

平日のせいか人は高月渚以外誰もいないようだった。

ここは龍潭寺というお寺へ続く道でもある。

渚も岡山の祖父母が来た時に一度だけ連れてってもらったことがあった。

確か、大きな達磨さんがいたな。

彼女が巨大な達磨を思い出していると早くしろとばかりに白兎が右胸を鷲掴みにしてきた。

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