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馴れ初めを聞かれても困る  作者: 青木りよこ
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今日しかない

結局高月渚は六月中に高遠忍に話しかけることはできなかった。

七月になり最初の月曜日のお昼休み。

彼女は友達とお弁当を食べながら横目で高遠忍を見ていた。

お昼休みになると高遠忍は教室から白兎を頭に乗せたままいつも出て行ってしまうのだが、今日は珍しく

教室にいて、山崎製パンの薄皮つぶあんぱんの袋を開けて、それには手を付けることなく、お弁当箱を出してお箸で食べ始めた。


「あんぱん食べないのかな」高月渚はそう呟きそうになるのをぐっとこらえて、友達の話に相槌を打ちながら、高遠忍をじっと見ていた。

すると望んでいた奇跡が起こった。

彼は美しい白い指を小さなあんぱんに伸ばしそれを、頭の上にいる白兎の口元にもっていったのだ。つぶあんぱんは一瞬で白兎の口に消えていった。

それはほんの数秒のことだったが、彼女に勇気を与えるには十分だった。

高月渚はお弁当の肉じゃがコロッケを口に入れ、決意した。


今日しかない。

今日こそ高遠君に話しかける。

残りの四つも白兎にやり、高遠忍は一つも自分では食べなかった。

涼しい顔で何事もなかったかのように、綾鷹を飲んでいる彼を見て、高月渚はこの教室に彼とたった二人きりのような気がした。

白兎は彼と渚にしか見えていない。

高月渚は放課後が待ちきれなくなった。

そう、放課後。放課後だ。

今日中に高遠君に話しかける。

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