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馴れ初めを聞かれても困る  作者: 青木りよこ
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今日も結局ダメだった

放課後になったが、高月渚が友達に話しかけられ、目を離したほんの数秒の間に高遠忍は帰ってしまった。

渚は今日は部活が休みである。

友達に「今日はちょっと用事あるから先に帰るね」と言い教室を出て、玄宮園の前の一本道を全力で走ってみたが、高遠忍の姿を見つけることはできなかった。

今日も結局ダメだった。


高月渚は打ちひしがれ、泣きそうになっている自分に驚いた。

たかが、同級生の男の子に話しかけられなかっただけなのに、なんでこんなにも自分は動揺し、うなだれ、俯いているのか。

公園のベンチに座り、やっぱり、前の部活が休みの日、後をつけてお家を確認しておけばよかった、と高月渚は思った。

でもそれじゃストーカーだし。余計な思考回路が邪魔をしできなかった。


何故今日じゃなければダメなのだろう?

明日だって学校はあるし、夏休みはまだ先だ。

でも渚は今日じゃなきゃいけない気がした。

今まで逃げてずっと後回しにしてきた。

本当はいつだって話しかけることができたはずなのに。

今日こそ今日こそ、呪文のように唱えては、また明日、時間はたっぷりあるもんねと。


高月渚は泣いていた。

公園には誰もいなかったけれど、いたってきっと気にならなかった。

涙は黒い制服のスカートに零れ、シロが顔を見せ、グレーのシャツのボタンとボタンの隙間から窮屈そうにチュウちゃんも顔を見せている。

高遠君と、最後に話すチャンスだったような気がしてならなかった。

お昼休みにつぶあんぱんをあげる高遠君を見た時に声をかけたらよかった。

そうしたら、そうしたら、どうだったのだろう?

私は高遠君に何て言って欲しいのだろう?

高遠君に何を期待しているのだろう?高月渚は答えのない自問を繰り返していたが、

せっかく部活が休みなのだから家に帰って、ゲームでもしようと思い、重い腰を上げた。

シロもチュウちゃんも、いつの間にか元の位置に戻っていた。



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