オルテンシアの義姉選び
婚約パーティーは何事もなく終わった。招待客が帰っていく中、私と双子たちは賭けに参加したから最後まで見届けてほしいとツリウスさまに言われて残っている。ツリウスさまと一緒に会場の端の方で片づけを見守っていた。
途中でクリスティーネさまの家の侍女長が私に近づいてきた。侍女長にみんながなんだか楽しそうですね、と言うと、侍女長は婚約者さまのお陰なんです、と嬉しそうに語る。
所々で「これも壊れていないわ」「何も壊れてないわねぇ」といった声が聞こえてくる。声の主であるスタッフたちはクリスティーヌさまのお屋敷のメイドたちだった。私が潜入したときは、何かが壊れるたびに皆が悲しい顔をしていたけれど、今は皆楽しそうに片付けをしている。
立食形式だったため、会場には丸テーブルが配置され、テーブルの上に食べ物やお皿、グラスなどが置かれていた。テーブルの上の食べ物の器やグラスやお皿が片づけられ、花瓶に生けられていた花も撤収された。今日は何もなかったのかという空気になり始めたころ、「ありました!」という声が上がった。一斉に会場に残っていた人たちの目線がその声の方に集まった。
メイドが持っていたのはテーブルクロス。遠目にも破れているのがわかった。クリスティーヌさまが確認をしている。
建物の設備が壊れた扱いなのかな、と思っていたら、挨拶でテーブルを回っていた時にクリスティーネさまが触れたものだったらしい。その時なんとなく変な気がしたらしいけど、さっと確認した範囲では気が付かなかったそうだ。
「ティアゴさまと同じ、私が手に触れたものが壊れると予想された方、正解です!」
クリスティーヌさまが宣言すると、ワッという声が上がった。少し飛び跳ねて喜んでいるメイドもいる。
面白い光景だ。ものが壊れたのにみんな楽しそうで、ニコニコしている。こういうの、悪くないな、と思ったときに閃いた。
クリスティーヌさまの近くにいたら、楽しく暮らせるんじゃない?
クリスティーヌさまの近くにいるには、親戚になるのが一番手っ取り早いんじゃない?
私はクリスティーヌさまの婚約者の弟であるツリウスさまに目を向けた。
「僕たちの中で正解したのはオルテンシアさまだけですね。義姉にオルテンシアさまが賭けに勝ったことを伝えておきます」
ツリウスさまは私が正解したと言いたかっただろうと思ったらしい。違わないけど、違う。
ツリウスさまを見る。今日のパーティーで双子と一緒に過ごしていたけれど、穏やかで優しい気性の男性だ。年齢は私の方が一つ年上のはずだけれど、それくらいの年の差は問題にならない。ツリウスさま、婚約者とかいるのかしら?成人したらどうするのかしら?
……いまこの場で確認するのは空気読めてない。後で双子に確認してみよう。
パーティーの後、帰りの馬車の中で双子にツリウスさまについて聞いたら、双子は揃って「よかった」と言った。
「ツリウスは優良物件だよ」「次男だけど、家で持っている伯爵位を継ぐ予定だし」「性格もいいし。姉さまが気に入ったらいいなと思ってたんだ」「姉さまが嫁ぎたいって言ったら」「両手で歓迎してくれるよ」「これで僕たちも」「自由だね」
ん?
「私がツリウスさまを気に入ったのは置いといて。なんで双子たちが自由だっていう話になるの?」
「姉さまは聞いてないよね」「もし姉さまが国内に嫁ぐ相手が見つからなかったら」「僕たちのどちらかに嫁入りすればいいって」「お父さまが本気で考えていたんだよ」
「なにそれ……」
双子は弟だけれど、小さなころにお父さまとお母さまの養子になった子だ。血筋としては婚姻可能範囲だけど……
「お父さま、娘たちのことが大好きだからね」「できればずっと近くにいてほしいって」「思っているんだよ」「エル姉さまが国外に嫁ぐ予定なのを」「1番寂しがってるのは」「お父さまだよ」
「そうなんだ……私も貴方たちのことは好きだけど、嫁ぐのは嫌なので、ツリウスさまを狙います」
「「うん、そうして」」
こうして私は図らずも2回目の義姉選びをしたのだった。義姉にしたい人を選んでから結婚したい相手を選ぶと言うちょっと変則的な義姉選びだったけれど。
ツリウスさまはすごくいい人だし、私は今幸せなのでハッピーエンド。
来週末は夫の実家に帰る予定だ。
次は義姉がどんなハプニングを起こすだろうと今からワクワクしている。
ダリル 双子の弟 兄
チェリル 双子の弟 弟
ツリウス クリスティーネの義弟 双子の友人
ティアゴ クリスティーヌの婚約者




