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敵対者

「それは別に構いませんが、今のユーホ様と話せるでしょうか」

「どういうことだ、何かあるのか?」

「まずもって近づけませんわ、全身から魔力を出し続けてます。抑えるのもそろそろ限界でしょうね」

「なんでそんなことに」

「簡単な話です、ユーホ様が預言に逆らった。それだけのことです」

「預言……」

「ええ、いずれ国を捨ててある者と旅に出ろという言葉でした。国を捨てることなどもってのほかと言ったユーホ様はみるみるうちに衰弱なされ自らの魔力を制御できなくなってしまわれました」


あー、主人公パーティに入れっていうのを断ったからそんなことになったのか。預言えぐいわやっぱ。預言与える側酷いな。


「案内してくれ、今すぐ行きたい」

「無理です、あなたではユーホ様を救えない。預言はどうしようないのです」

「預言者を救ったことがあると言ってもか」


救ったというのは傲慢かもしれない、それでも俺はウンターを解放できたと信じてる。


「そんな、まさか」

「いいから見せてくれ、何かできるかもしれない」

「そこまでおっしゃるなら……幸い他の騎士は城の中には入ってきません。邪魔するものもいないですからたどり着くのは簡単です」


ユーイーに連れられて歩く。それにしても内乱中であっても城は不可侵なのはなんでだろうな。


「ここです」

「随分物々しい雰囲気だな」

「それはそうでしょう、破裂寸前のユーホ様がいらっしゃるのですから」


破裂寸前か、一体どんなことになっているんだか。


「開けるぞ」

「どうぞご随意に」

「えーっと、開かないね?」

「ええ、開きませんわ。ですから近づけもしないと申し上げましたの」


開かずの扉か、オーケー爆破しよう。


「下がっててくれ、扉を爆破する」

「本来ならばそんなこと絶対にさせませんけど、今は仕方ありませんね」


扉めがけて矢を放つ、それは扉にあたり爆発で扉を吹き飛ばした。


「よっし、中はどうなって……うわあ」


なんか水色の壁みたいなもんがある。


「ああ、結晶化した魔力がこのようになるとは。やはりユーホ様はもう限界なのですね」

「魔力、結晶化、ね」


結晶か、鉱石みたいなものか? それならプラチナが操作できるもしれない。


「プラチナ、これなんとかできるか」

「あては干渉できないよ、結晶ではあっても石ではないみたい」

「そうか……ティーアは何か気づいたことはあるか?」

「んー、青くて美味しそうだなって」

「OKありがとう」


これが魔力の結晶だとして、取り除くにはどうしたら良いのか。物理的に攻撃して崩せるのか?


「試すしかないか」


矢を装填する、できれば吹き飛んでくれるとありがたいが。


「おらあっ!!」


魔力壁に当たった矢が爆発する、あたりに破片が飛び散るのが見えた。


「いけるぞ、これで掘り進めばユーホにたどり着く」

「おお、愚か者よ」


これは誰の声だ、男でも女でもない声。軽くエコーのかかった声。声の主は見えない。


「預言は定め、何人たりとも外れることは許されぬ。叛逆者よ、お前はなぜ定めを破壊する?」

「誰だお前は!?」

「我が名はお前たちがつけた、故に聞かれる筋合いはない。知っているはずだ、絶対的な存在の名を」

「預言を授けるのなんか神しかいないだろ、お前がそうだって言うのか」

「我が名を語ったな愚か者。故に諦めよ、この者を救うことまかりならぬ」

「知ったことかよ、 俺は俺がやりたいからユーホとユーイーを救うんだよ。そんで誰も死なないエンディングを見たいんだよ俺は!!」


自分の中で何かがはまった気がした、勢いで語った言葉だったが確かにそうだ。俺は誰も死んだりしないエンディングが見たかったんだ。


「何という愚かさ、そのような事は許されぬ。運命を狂わせてはならぬ。お前はもう超えてはならぬ領域に踏み込んだ。もう見過ごせぬ、お前は敵だ。世界の敵だ、惨たらしく死ぬがよい」

「殺されてやるかよ……俺はもう戦う術を持ってるからな」

「ふふふ、可愛らしいことよ。借り物の力などすぐにでも剥ぎ取れると言うのに。見るがいい、その獲物はもう使えぬ」


砕ける音が聞こえた、俺の手元から何かがこぼれ落ちていく。


「俺のボウガンが壊れた!?」

「さあ、もう手はあるまい。最期の光に呑まれて消え去るがいい」


待て待て、何か手はないか、なにか今の状態を打破できるものはないのか、諦めるな頭を回せ、何かあるはずだ。


「いや、もう必要ない。壊せるなら壊すだけだ」


忘れてた、このゲームは「グロウ・マジック・ファンタジー」何よりもバフかけて殴った方が強いゲームだった。


「ティーア、ありったけ頼む」

「どうぞ召し上がれ」


持ってきた料理を全部平らげる、デバフが重複するかは未知数だがここでやらなきゃみんな死ぬ。


「ふぅ……やってやるよ」


不規則なデバフの波を見切って効果が最大の時に思いっきり殴りつける、蹴りつける。技術なんかいらねえ、ステータスの暴力で壁を破壊する。


「うおおおおおおおおおおおお!!!!」


何発殴っただろうか、何発蹴っただろうか、ようやく俺の目に白い髪が見えてきた。


「見つけたぞ!!」


一緒に砕いてしまわぬように慎重に破壊していく、やがてやせ細ったユーホが姿を見せた。


「絶対死なせねえからな」


周りの結晶を砕いてユーホを取り出す、後はこのまま運び出すだけだ。


「はぁ、はぁ、見たか、助け出してやったぞ」

「それがどうしたと言うのだ、お前のやったことは無意味。その娘が弾けることは変わらぬ、中に溜め込んだ魔力が一帯を破壊するのだ」

「くそが!! 魔力ってなんだよ!!」


そんなよくわかんねえ物どうすれば……


「ああ、こんなになってしまったのですね。わたくしの光、でも大丈夫ですわ。わたくしの騎士は優秀でした、触れられるところまであなたを連れてきたくれた。 わたくしは影、あなたの代わり、もとより身代わりならばあなたの咎も背負いましょう。何よりわたくしは影である前にあなたのお姉ちゃんですから」


ユーイーの手が骨ばったユーホの手を握った。そこから何かがユーイーに流れ込んでいるように見える。


「これがあなたの苦しみなのですね。でも安心なさい。全部持っていってあげるから」


きっとユーホの魔力を吸い上げて負荷を下げているのだろう、その苦痛はユーイーの顔を見れば分かる。


「もうすこし、です、もうすこし、で」

「下らぬ、ならばそちらから先に死ね」


重く長いものが天井を破壊して目の前に降ってきた、あのシルエットは。


「蛇か!?」


黒い蛇がこちら見ている。神モドキの言葉通りならあれは俺たちを殺すものだ。


「やらせるかよ!!

「無形の蛇にただの拳が効くものか、無駄だ」


すり抜けた、だと。


「うおっ!?」


なのにあっちの尾はきっちりと攻撃してきやがる、どうなってんだよ。


「くそっ、攻撃できねえ!!」


魔法攻撃なんてできるやついねえぞ!?


「手も足も出ずに死ぬがいい。なぶり殺しにしてやろう」

「凍れ」

「え?」


蛇、いきなり氷漬けに?


「よくも、よくもよくもよくもよくもぉ!!!!」


あれ? ユーホ随分と元気そうね、隣でユーイー倒れてるってことは終わったのか?


「イー姉様に手を出したな!! 欠片一つ残らず消しとばしてやる」

















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