表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/87

ミミックのお道具箱

受付嬢がカウンターに箱を置く。

「こちらがミミックです」

宝箱っぽい外装に模様が入っている。

その模様が固体毎に違うので少し観察すれば判別できるのだが、実際間違い探しをしているようなもので簡単なタグを付けられていた。

「こちらは目安は三泊です。20キロぐらい入りますが体調によって多少の増減があります。注意事項は色々有りますが基本ご飯をあげて大事に扱えば問題ありません」

ミミックを撫でる受付嬢。ミミックはニヘッと牙を見せる。

「ご飯は何でも良いのですが、不足すると入れた素材を食べてしまうことがあります」

つまみ食い。

「後は、ミミックが嫌がる道は行かない方が良いぐらいでしょうか」

ギルドで始まったミミックの貸し出し事業は順調だ。

かなりの重量を入れてもミミックの体重は変わらないので、荷物に余裕が出来る。

そしてミミックに気に入られると獣魔契約ができ貰えるのだ。

契約したミミックは自分で後をついてくる。

もっとも扱いがひどくなると逃げ出して、ギルドの倉庫に戻って来るらしいので人に指導が入る。

貸し出し中のミミックも扱いがひどいと逃げ出すらしいので、逃げられたということは何か問題があった事になる。

「あちらの運試しミミックに余り物を捧げると、運が良ければ何かが貰えますよ」

奥にミミックの前に列が出来ている。

先頭の一人が何かをミミックにかけている。

ベッフシ

ミミックがくしゃみをして、岩を吐き出した。

ベッフシ

ベッフシ

「……ちょっとそこ!」

ゲフゲフ吐き出される岩。

「胡椒は駄目って言ったでしょ!」

「岩の中にお宝がーー」

「ミミックの機嫌が悪くなって当分物出さなくなるんだから駄目なのよ!」

叱られている横で、子供が近付く。

「はい、ミミック。お水だよ」

コップに入った水を、コップ毎飲み込み そしてペロリと子供の手に何か出される。

「……」

「……」

周りが静かになった。

「ありがとう、ミミック」

子供に撫でられて、ミミックがフンフン返事をする。

「水一杯で腕輪」

「さすがラッキーボーイ」

「水系腕輪だったな」

「じゃあ松明でも入れたら、炎系の物が出るかな?」

「やめとけ、前にタバコを捨てた馬鹿が丸焼きにされかけただろう」

嫌な実績も有るらしい。

「ところで大丈夫なんですか? さっきの子供がミミックのアイテム貰ったことは広まりますよね?」

「あら、それは大丈夫よ。横から掠め取ろうなんてしたらどうなるか」

外から悲鳴が聞こえてくる。

「やだ、まだ知らない馬鹿がいたのね」

受付嬢がため息をつく。

「防犯もミミックがしてるから大丈夫よ」

外でどんな防犯がされているのか確認するのが凄く怖い。

「はぁ。そうなんですか」

「ミミックって意外と強いの。こそ泥なんかあの通りね」

首を捻って扉を見れば、男が引きずられて来ている。

「だから変な気起こす前に仕事頑張ってね?」

受付嬢に微笑みかけられて、苦笑いを返す。

「後は、運次第で助っ人を出してくれたりするんですよ」

「助っ人ですか?」

引きずられて入った男は隅でミミックに囲まれていた。

「運次第だけどね。ミミックも全部があの子を出せないのよ。あの子も気紛れだし」

あの子? 首をかしげると、横に薄汚れたミミックを置かれる。

これまた薄汚れた男だった。

「すまない、ミミックの返却と買い取りお願い出来るだろうか」

「あ、はい」

ここで順番がどうのと抗議は上がらない。

男が割りと有名な冒険家だったからだ。

「あの大丈夫ですか?」

「俺は平気だ」

「ミミック、荷物を出して?」

ミミックがペッと薄汚れた男に何かを吐き出す。

「ミミック、こっちよ、あら?」

吐き出されたそれがモソモソと男の顔に張り付いて登っていく。

「……スライム」

頭の上でプルンと振るえたスライムは光った。

ぴかりんこ

細かい傷が癒される。

「これ、ヒールの光」

「スライム?」

反射的に頭のスライムを握った男は、手の中のスライムに少し固まりそして握りしめたまま走り出した。

「あらあら、治療院かしら」

「治療院?」

「ええ、換金して治療の代金を払おうとしたのだろうけど、先に怪我した仲間は治療院に置いてきたみたいね。スライムは治療のエキスパートだから。でもダンジョン中では呼べなかったのね?」

スライムを出したミミックを撫でる。

「スライム呼べるようになったのね。いい子」

受付嬢はミミックのタグに別のリボンを結ぶ。

「ご主人様が戻ってくるまで待ってましょうね。いい子」

ミミックが唄う。他のミミックも唄い出し隅に追いやられていた男は冷や汗をかく。

ミミックはすべて繋がっている。

一度、危険人物扱いされた人物は他のミミックにも危険人物と扱われる。

「ふふふ、ご機嫌ね」

唄は子供を呼び寄せた。

目を輝かせミミックが唄うのを聞いた。そして一つずつ撫で回す。

目をハートにしての大合唱。

子供が吟い出す。


(仕事にならないわ)


受付嬢が、生暖かい視線を送る。

キラキラと光が舞う。

本日この場に居合わせた生き物は、幸運かもしれない。

「あ、 かめ(玄たん )

階段を転がり落ちてきた亀に気が付き、子供が抱き上げる。

ミミックの視線に殺気が隠る。

「お前もいい子にしてた?」

子供が振り向くと、ミミックはハートを飛ばしている。

亀には槍でも飛ばしそうである。

「あ」

カウンターのミミックの横に亀を置き、受付嬢が差し出した飴に手を伸ばす。

「ありがとう。お姉ちゃん」

亀から子供の意識が離れたとき、ミミックがパクンと亀を飲み込む。

「ん?」

青ざめたのは、ミミックが亀を飲み込む姿を見た周りである。

「あれ?」

首をかしげる横で飲み込んだのとは別のミミックがペッと亀を吐き出した。

「お」

子供の目が輝く。

無言で亀を拾い上げると近くのミミックに亀を放り込む。

ペッ

モグモグ

ペッ

モグモグ

ペッ

亀は目を回している。

「うふ、面白~い」

拳骨が降ってきた。

「なーにーをーしーてーいーるー」

「おじさんっ」

グリグリこめかみを拳骨で絞められ、子供が涙目になる。

「いだ、痛いよ、おじさん。っ、ごめんなさ~い」

右手に亀、左手に子供を抱えてノシノシ階段を上がっていくギルド長を一同は見送り、ほうと息を吐き出した。

今度こそ仕事が進みそうである。

「ええと、ミミックは借りますか?」

にっこりと営業スマイルを浮かべ、横で威嚇をしたミミックをぺしりと叩き何事もなかったように書類を出す。

「ウフフ」

さあ、さっさと署名しろ。

乙女の微笑みに、のらりくらりと会話を続けていた男はひきつりペンを持つのであった。






治療院で仲間を見付けた。かなり離れていたがフルスイングで投げると、スライムは相手の顔に張り付いた。

「な、なに」

モソモソとスライムは頭に上ると光る。

あれも、無理していたのだろう。

「クレアは」

「処置中だよ。無理言って処置開始してもらった」

頭の上のスライムが光らなくなったのを確認してから、むんずとひっぺがす。

「あだ、髪が痛いよ!」

「あ、ごめん。スライム禿は強運の証拠だし似合ってるぞ」

「うぇ?」

頭を押さえるのを無視して、ずかずか奥へと進む。

「ちょっとそんな汚い格好で!」

騒いでいる女を無視して中へはいれば、仲間の一人が寝かされていた。

側で回復魔法をかける年若い娘が見える。

「緊急で表面上の傷をふさぎーー」

スライムが勝手に飛び付いた。

ピカピカ光るスライムに、視線が集中する。

「スライム、あなた魔力どんだけあるのよ?」

ムニムニ

「…………治療すんだらでいいからその魔法教えてくれる?」

どうやら娘がまだ覚えていない魔法も使っているらしい。

ムニムニ、ムニ

スライムが娘を見る。

もみもみ、ムニムニ

娘が気が付き、周りの視線が外れる。

娘の痩せたからだは、揉める肉は無さそうだった。

「ううん?」

スライムの下の乙女が動く。

「誰、私が寝ているのに胸をーー?」

周りを見回して、無意識に掴んだスライムに気がつく。

「私、攻撃受けて意識無くして、…………あれ?」

「クレア!」

飛び付いていく仲間を見ながら、ほっとする反面スライムしか持ってこなかったことに気が付く。

ミミックはカウンターに置いてきた。

「スライム、腹の子も無事か?」

ぴきりと固まったのは、飛び付いて泣いていた仲間だ。

「子供?、だから抜けると言って?」

「そうよ。でも調子悪いときに無理はダメね」

「抜ける相談の前に、なんで子供のこと言わないんだ!」

「子供ができたから責任とるとか言われたくなかったからよ」

うん。修羅場だ。

「あだ、あた」

スライムにビチビチ叩かれている男。

妊婦を興奮させてはいけない。しかもさっきまで怪我人だったのだ。

「すまん。俺がもっと注意していればーー」

「うぁえ、リーダーとの子?」

バキッ

鳩尾に、きれいにはまる拳。

吹っ飛んだ馬鹿は自業自得だろう。

「元気そうだけど、一応婦人科に見てもらってね?」

娘はにこりと微笑んだ。

婦人科の先生による説教が待っている。

「うふふ、その間スライムのお世話は任せて」

ドナドナされるスライム。

「所でクレア。シーツ落ちてるぞ」

治療のため下着姿だ。軽い怪我は薬草等で処置をして回復魔法を使うのは危険な薬草では無理な場合だ。

患部の確認で下着姿にされていたのだろう。

「キャー」

乙女は乙女らしい声をあげた。

暴れる妊婦と子の父親が説教をされている頃、院内をスライムがドナドナされていた。

それにしてもあんな怖い乙女によく手を出したよ。

世間知らずはこれから苦労が待っている。

患者にピカピカ回復をかけながら、治療院の見習いにはスキルを詰めていく。

本職の先生はきっちりスキルを持っていたので今後役に立ちそうなスキルを入れる。

「きゅ」

「良い子ね。素敵よ」

ニコニコしながらスライムを使う娘。

ハムの切れ端を時々与える。

ご褒美も忘れない。

獣を使役するには、それなりの対応が必要だ。

甘くてはいけない。しかし絞めすぎても獣は逃げる。

ミミックが良い手本だ。

「……それ帰しに行きたいのだが」

何故か手伝いをしながらスライムを連れてきた男は聞いてみる。

「え」

娘が世界の終わりみたいな顔をされ、少し怯む。

「ええと、その説教がすむまでーーはいても良いかな?」

「ありがとう。うふふ。これ持って」

「あ、ああ……」

上手く使われている気がびしばしとするが、時折利用する者としては顔繋ぎをしておいた方が良いとの判断のもと色々付いて回る。

「それはそうと、この子のお陰で早く終わりそうだから終わったら食事でもどう?」

「え」

「スライム何処で捕まえてきたとか教えて欲しいの。この子のが居たら治療がスムーズにすむし」

「ああ、ミミックが吐き出した」

「え、ミミック?」

「ああーーあ」


柱の影から覗き込む視線に気がつく。

どうやら二人は説教から解放されたらしい。

「リーダーがナンパしてる」

「リーダー、あんな娘が昔から好みよ? 知らなかったの?」

「え、あんな細い娘が好みなの?」

「そうよ。胸の脂肪は嫌いなの」

「へ? へぇ」

気まずい。

「……胸の脂肪?」

まな板娘が首をかしげて、自分の胸をーー。

スライムが返ってきた。

いや娘が投げつけた。

うむ。どうやら友好度は上がらなかったらしい。






無事にギルドに戻ってきた。

預けたミミックはカウンターに大人しく置いたままの状態でいた。

スピスピ寝息をたてている。スライムはあちこちチェックをしては箱のふりをしたミミックに体当たりをしている。

ストレス貯まったのかもしれない。

気がつけば、階段を上がっていくスライム。

そして程なくしてギルド長の雄叫びが響いた。何をしたのか怖くて聞けない。

亀が飛び出してくる。後を追うスライム。

ミミックが加わり騒がしい。

「はぁ」

受付嬢がため息をついている。

「今度こそ調教スキルを取るわ」

ギルドが騒がしいのは何時もの事だ。

「すみません。これの中身の換金なんですが」

寝ているミミック。

「ええ、聞いているわ。スライムにお仕事させるの大変なのにどうやってお願いしたの?」

お願いはしていない。投げて貼り付ければスライムが勝手に回復をした。

「ほとんど医師の人に任せたから」

スライムは女性には優しい。多分。

「そうなんですか?」

とりあえず、寝てるミミックを逆さにして振る。

「あら」

受付嬢が驚いている。

「うん、こんな感じだか、換金お願いできるだろうか」

「承りました」

にこりと笑い、査定をしてくれる。

ミミックは、まだ寝ている。

「ーー以上でよろしいでしょうか」

「ああ、ありがとう」

報酬を受け取り背を向ける。

「ミミック、ご主人様がお帰りよ? あなた寝てて良いの?」

後ろでミミックに声をかける乙女。

ミミックは飛び起き跳び跳ねてきた。

「げふ」

重い。ミミックの体当たりにのしかかりは何の試練ですか。

「ふふ、忘れちゃ駄目ですよ。ミミックは泣き叫ぶと手に負えないですから」

「……獣魔契約はしてないのですが」

「ミミックがスライムを出すのはご主人様のためよ? その時点で貴方はミミックのご主人様。まぁ頑張ってね。ミミックを捨てたらどうなるか知っているわよね」

知っている。ミミックに喰われるのだ。

まぁ噂だが。

「大丈夫よ。寝ているミミックからアイテム取り出せるんだもの」

ミミックを連れて出ていくのを見送り、受付嬢は微笑む。

「今月のノルマ達成よ! うふふ」

ノルマ。殖えるミミックを減らすために獣魔契約を促し、貸し出しで在庫のミミックの食費を捻出しなければならなくなったのだ。

「ミクシィは亀を出せたから、そろそろ貸出しできるかしら」

394とタグのついたミミックをチラ見する。

受付付近に出されているミミックは人に慣らすのが目的だ。

時々子供が来て、撫でていくのを知っているので倉庫のミミックは出たがる。

でも出してもらえるのは貸出しできそうな個体だけだ。

「まぁ長い目で見たら、荷物係のミミックは役に立つのだし。スライムも殖えないかしら」

辺境のスライムの棲息地は、増えている報告はある。しかし街中を彷徨くのはあのスライムだけだ。

「真っ二つにしたら殖えないかしら」

ポヨポヨ亀と遊んでいるスライムを見ながら不穏なことを口走る乙女。

直ぐに、ノルマ報酬のボーナスの使い道に思考は流れ スライムが刻まれたりはしなかった。

一パーティに一匹ミミックが当たり前になる。

それは少し未来な話。

























メモ

ミミックに亀をつっこむ子供はビィです。

そしてスライムは、ビィとはあえず八つ当たりでミミックに体当たりをしてます



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ