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ビィはじっと御者台を見ていた。

正確には、御者をしている若者だ。

馬が言うことを聞いている。

仕事をしていないときの馬に近寄れば絶賛歓迎されるとは思う。

じーー。

馬の方が気配に気が付き、少しざわめく。

じーー。

じーー。

スライムも観察中。

じーー。

じーー。

じーー。

ディジーも観察中。

じーー。

じーー。

「ブルルル」

馬が居心地悪そうに嘶く。

「なんだい?」

御者をしていた若者はさすがに振り向き聞いてきた。

あの気配に気がつかないようでは冒険者していられません。

「その横に座って良いですか?」

愛らしくビィが聞く。

断れる人は果たして居るのでしょうか?

ビィの無邪気なお願いが無意識に発動しています。

うっとりとスライムとディジーがますたーを見上げて魅了されるままにいます。

「危ないけどーー」

多少耐性があるみたいだ。

しかしきっぱり言わないとますたーは、行動に移しますよ?

ヒラリと荷台から御者台に行ってしまいました。

隊長、寝ている場合ではありません!

じーー。

じーー。

じーー。

視線が合う。

にこり

危険です。

「みんな、僕に手綱持たせてくれないんだよね」

唐突にますたーが話し出す。

「騎鳥は乗ってたはずだけど」

「あの日は、妙に距離多かったでしょう?」

ビィの視線が騎鳥たちに向きます。

他の学生や荷物を背負った鳥は、ビィの視線に気がつくと落ち着きなく頭を振る。

「僕が乗るとあの子達は、超特急に安全地帯目指すから距離だけは延びるんだよね」

「ふうん?」

適当に相づちが返ってくる。

やばいのです。

スライムもディジーも、必死に若者をみる。

馭者スキルは来ない。

「たぶん馬もそうなる」

学園で馬と戯れるのはいい。しかし馬が他の学生に見向きをしなくなるので、ビィは授業は個別にされることが普通だった。

ハッスルしすぎて、勝手に最速を出すが、のんびりと散歩が出来ない。

じーー。

じーー。

じーー。

「あの」

居心地悪そうに若者は苦笑いーー。

「少し手綱持ってみるかい? 前についていくだけだから」

危険なことを、そうと知らず提案してきました。

タラリ

手綱がビィに渡された途端にスピードが上がる。

「!?」

「あ」

「な、何で?」

馬は一目散に駆け出した。




一番ボールはスライムです!

ますたーは、無造作にスライムを放り投げます。

はい! 着地点は馬の背中です!

二番ボールはディジーです!

思いっきり的から外れましたが、蔓を伸ばしてしがみつきセーフです!

はい! 無事馬に絡まりました!

それではご一緒に!

はいーしーどーどー、はいどーどー

はいーしーどーどー、はいどーどー

ピカリンコ

「む」

ピカリンコ

ピカリンコ

「むう」

馬は無事停まりました。

気がつくと、隊長が背後で仁王立ちになってました。

「にょ?」

「ヴィーンーセーンートー」

こ、恐いです!

さすがに猛スピード&急停止で起きない方が変です。

「あ、隊長! 乗馬スキル覚えたよ!」

素早く隊長にタックル。

「……おぼえてなかったんかい」

隊長は溜め息を付き、馬とスライムとディジーと部下を見渡す。

「馭者スキルは?」

「無いよ」

「そうか」

馬はビクビクしながら御者台の隊長の気配に従いながら、手綱の持つビィの動きに合わせたスライムとディジーに慰められていた。

ビィが無事馭者スキルを覚えた頃、夜営地に入り全員がホッとしたのをビィはしらない。




☆ ☆ ☆


ビィはご機嫌で乗馬中。

因みに、馬とスライムとディジーには前もってこの側限定と言い含められた。

ビィは、スライムとディジーを肩に乗せ馬に騎乗している。

三倍速で乗馬スキルを育てていた。

パカラン パカラン

「お前、最高」

馬の首筋を撫で撫でする。


「ビィがおとなしいと楽ですね」

「ばかいえ、馬選ぶときの馬からのプレッシャーに……。あれ見てもそんなこと言えるかよ」

ぐいぐいと指示した先には、馬が並んで彫刻の様にしている。

その視線の先には、ビィが。

「……明日、大人しく馬車引いてくれるかな」


その夜、スライムが泣きながら馬の毛繕いをさせられていたが知っているのは馬たちだけだった。


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