第1話:忘れた宿題が変えた運命(第1章・第1部)
ヒトシ・コウタリの高校生活最初の朝は、カメラのフラッシュの嵐と、興奮した声、そしてコウタリ家の
リムジンが放つ磨き上げられた黒い輝きの下で始まった。
十五歳にして、ヒトシはすでに日本で最も広く知られた十代の若者の一人だった。コウタリ一族は、何世代にもわたって受け継がれてきた、数兆円どころではない莫大な規模の世界的企業帝国を支配してい
た。父のゼン・コウタリは、その世界企業の主要所有者を務めていた。母のワカナ・コウタリもまた、上
流の財界で同じように尊敬されていた。兄のカズトはジンシキタイ高校の二年生になったばかりで、ヒトシは一年生として入学したところだった。妹のカズエとホノカは、カゲハナ市内の別の場所にある名門中学校へ通って
いた。
ジンシキタイ高校には、日本でも屈指の富と影響力を持つ生徒たちが数多く入学していた。それでも、コウタリ家のリムジンが校門前に止まった瞬間、入口全体が目を覚ましたかのように活気づいた。生徒たちはヒトシの名
を呼んだ。階段から手を振る者も、開いた窓から身を乗り出す者もいて、彼が到着したことを心から喜んでいた。
リムジンの中で、きれいなブロンズブラウンの髪と、愛らしい深い空色の瞳を持つヒトシは、ゼン、ワカナ、カズトの隣でくつろいでいた。色付きの窓越しに学校を見つめ、微笑んだ。「ここで、たくさんのことを成し遂げ
られたらいいな」
ゼンも微笑み返した。「お前なら、この学校で数多くの素晴らしいことを成し遂げると信じているよ」ワカナとカズトも同意した。ヒトシはうなずき、ドアを開け、歓声が高まる中、兄と並んで外へ降りた。それから三日間
、ヒトシは学校生活を存分に楽しんだ。新しい友人を作り、ジンシキタイに入学した昔か
らの友人たちと再会し、会話と笑い、そして未来への計画で毎日を満たした。その明るい始まりの日々のどこにも、それがあまりにも突然終わることを示すものはなかった。
三日目の朝、ゼンとワカナはすでに仕事へ出ていたため、学校へ向かったのはヒトシ、カズト、そして専属運転手のシンスケだけだった。彼らは普段よりずっと早く到着した。兄弟が入口へほとんどたどり着いたとき、ヒト
シがあまりにも突然立ち止まったため、カズトは振り返った。
「提出するはずだった宿題を忘れた」
カズトはリムジンのほうを見た。「じゃあ、取りに戻ってこい。ただし、あまり遅くなるなよ」
兄弟は手を振って別れた。ヒトシは急いでシンスケのもとへ戻り、すぐに屋敷へ引き返す必要があると説明した。課題を忘れれば学校の成績に響くかもしれないため、正式に授業が始まる前に戻るつもりだった。
シンスケは了承した。二人は邸宅へ戻り、ヒトシは中へ駆け込み、課題を見つけ、屋敷に鍵をかけてからリムジンへ戻った。失われる一分一分が、今では重要に感じられた。
学校へ戻る途中、リムジンは通常の制限速度を超えて加速した。シンスケはミラー越しにヒトシを見た。
「あまり飛ばしすぎないようにはします。一週間ほどしたら、いずれにせよこのリムジンは交換される予定
ですからね。だいぶ古くなってきています」
老朽化した車体の下から、小さな火花が散り始めていることに、二人とも気づかなかった。
ジンシキタイ高校が見えてきた。入口付近の生徒たちは近づいてくるリムジンに気づき、ヒトシが戻ってきたことに安心して微笑んだ。
そのとき、すべてが変わった。
猛スピードの車が、数台のパトカーに追跡されながら通りへ飛び出してきた。その車は、製油所へ運ぶ巨大な石油容器を積んだ中型トラックへ激突した。衝突の直前、双方の運転手は車両から脱出したが、ト
ラックは横転した。金属が路面にこすれて悲鳴を上げた。容器が破裂し、石油が黒く広がる膜となって道路を覆っていった。
ヒトシは衝撃を受け、窓越しに見つめた。シンスケは驚きの声を上げてブレーキを踏み込んだ。リムジンは残骸の手前で停止した。
「リムジンの中にいてください」とシンスケは彼に言った。「安全な距離から何が起きているのか確認してきます。問題がなければ、親指を立てて合図します」
ヒトシはうなずいた。
外では、警察官たちが猛スピードで走っていた車の運転手を確認していた。運転手は生きていたが負傷し、恐怖で凍りついていた。シンスケは状況を判断できる距離まで近づき、それからヒトシを振り返って親指を立てた。
ヒトシはドアに手を伸ばした。流れ出た石油は、すでにリムジンの下まで達していた。故障しかけた車体の下部から、最後の火花が一つ落ちた。鋭い「バンッ」という音が静寂を切り裂き、深いうなりへと変わり、やがて大
地を揺るがす長い「ドオオオオオオオオン」へと至った。巨大な爆発がリムジンの下から噴き上がった。衝撃波がシンスケを後方へ吹き飛ばした。
「グアアアアアアアアッ!!!!!!!」
彼は路面へ叩きつけられた。服の一部に火がつき、皮膚から湯気が立ち上る中、必死に叩いて消した。奇跡的にも、最後の炎が消えたとき、彼の身体には火傷の痕が一つもなかった。
そして、彼は顔を上げた。
リムジン全体が炎に包まれていた。
「いや……いやだ!!」
生徒たちは悲鳴を上げた。教師たちは凍りついた。すべての警察官が業火へ振り向いた。学校の入口の向こう側で、カズトは身動き一つせず立っていた。身体が震え始めた。顔から汗が流れ落ち、目の前の恐怖が視界のすべ
てを埋め尽くすかのように瞳孔が見開かれた。
そして彼は、持てるすべてを込めて叫んだ。
「いやだ……いやだ!! 弟おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
カズトは燃えるリムジンへ全力で駆け出した。警察官たちは、彼が炎の中へ入る前に止めようと急いだ。数人が腕と肩をつかんだ。
「どけ!! どけえええええええええ!!!!!!!!!」
悲嘆とアドレナリンが、彼に恐ろしいほどの力を与えた。カズトは一人の警察官の顔面へ拳を叩き込み、男の口から数本の入れ歯が飛び出して、血の飛び散った路面へ落ちるほどの威力を与えた。
「いってえええええええ、このクソガキが――!!!!!!!!!!」
負傷した警察官は激怒し、拳を握りしめた。別の警察官が二人の間へ入り、懇願した。「お願いで
す……お願いです……おねがああああああいします!! 頼みます……これ以上、事態を悪化させないでください」
負傷した警察官は舌打ちした。「チッ!」
さらに多くの警察官がカズトを取り囲んだ。彼は自分に触れるすべての手へ抵抗し、炎が燃え続ける一秒ごとに、その恐慌はますます激しくなっていった。
「殺してやる!!!!!!! 殺してやる!!!!!!! 俺の前からどけ!! どけって言ってんだ、この間抜けなクソ野郎ども!!!!!!!」
近くの警察官たちは、緊急医療キットの中から鎮静剤を探した。
「あったぞ!」
カズトを押さえようと苦闘していた警察官の一人が叫んだ。「もう長くは押さえられない!」
別の警察官が、注射器を彼へ投げた。
「よこせ! 今すぐよこせ!!」
警察官はそれを受け取った。カズトを同情の目で見ながら、小さくつぶやいた。「すまない、坊や……少しの間、眠ってもらうよ」
針がカズトの腕へ刺さった。彼の目が見開かれた。
「何しやがるんだ、このクソ野郎!!!!!!!!!?」彼はさらに激しく暴れた。
「離せ!!!!!! 離せえええええ!!!!!!!!! は・な・せええええええええええええええええええええええ
え!!!!!!!」
爆発的な一度の力で、カズトは自分を押さえていたほぼすべての警察官を吹き飛ばした。数人が路面へ叩きつけられた。その数秒後、ついに薬がアドレナリンを上回った。膝から力が抜け、カズトは意識を
失って倒れた。
すべての警察官が、声もなく呆然と彼を見つめた。悲しみによって、ここまで完全に突き動かされた人間を見た者は一人もいなかった。
その直後、消防車と救急車が到着した。消防士たちは高く燃え上がる炎へ放水した。救急隊員は、猛スピードの車の運転手、負傷した警察官、そして衝突で傷ついたすべての者を治療した。緊急隊員たちが外で作業する中、
現場責任者の警察官はジンシキタイ高校の中へ急いだ。
校長は、校長室の窓のそばで凍りついたままだった。
「生徒たちの緊急連絡先はありますか?」と警察官が尋ねた。校長はうなずいた。「はい……あります。どの生徒ですか?」
「コウタリ家です。カズト・コウタリと……ヒトシ・コウタリのご両親と話す必要があります」
校長室は静まり返った。
そして警察官は、誰も聞きたくなかった言葉を口にした。
「ヒトシは、爆発から生還できませんでした」
数人の教師が息をのんだ。口を覆う者もいた。すぐに泣き始める者もいた。校長はゼン・コウタリの電話番号へ発信した。
遠く離れた場所で、ゼンは街を見下ろす豪華な重役会議室に座っていた。重要な会議が続く中、彼の携帯電話はブリーフケースの中に入っていた。何度も何度も鳴ったが、応答はなかった。
「頼む……出てくれ……」と校長はささやいた。留守番電話へ切り替わった。
「くそっ!」
現場責任者の警察官が尋ねた。「母親のほうは?」
「そうだ」
まさにその瞬間、ワカナは自分の商談から少しだけ席を外し、スパの従業員と話していた。
「ご予約は土曜日の一時です」と従業員が言った。
ワカナは安心して息をついた。「よかった。金曜日だと思っていたわ」
二人は通話を終えた。携帯電話を消音にする前に、別の着信が画面へ表示された――ジンシキタイ高校事
務室。




