9.ブリーフィングって、かっこいい
安具は、本拠地としている館の一室を改造した会議室に入室する。
本来、この戦国ちっくな雰囲気なら、和室の大部屋で評定を開くのがお似合いなのだろうが、長時間の座禅は勘弁してほしい。
それに、まだ、机と椅子で会議をする方が慣れている。
部屋の中央に置かれた大きめのテーブル。職人に急いでつくらせたので、装飾もなにもない無骨なものだ。
安具は、そのテーブルの上に、大きな地図をどさりと置いた。
俺は、評定のやり方なんて知らない。戦略系のボードゲームのノリでやっていく。戦略系ボードゲームのご先祖は、戦争の作戦計画にあるらしいし、あながち的外れでもないはず。
そもそも、この世界は、戦略ゲームがベースだ。問題ないだろう、と自分を言い聞かせる。
土居さんは、初めて見るやり方に「若も立派になられて……爺は感激ですぞ……」と泣いている。土居さん、俺に甘すぎ。まだ、何もしてない。
サノ姫は、新たに俺が立案、タマ子が制作したメイド服を着て、テンションアゲアゲであったが、地図を見るなり、真剣な顔つきに変わる。今の彼?は、1人の武将だ。
「連絡が入った。山脈より南に設置した砦が全て落ちた。残る山脈の砦も攻勢をかけらているそうだ。敵の先遣隊だろう」
俺は、地図上に駒を置き、トナミマチの南に位置する砦を指す。
「増援すべきですぞ!この砦を越えると、トナミマチまでは平野が続きます。山脈の合間の道に設けられたこの砦なら、まだ敵も数の利を活かせませぬ」
トナミマチと南方をつなぐ道は、フリジア山脈と呼ばれる山々に阻まれている。南方からトナミマチへ侵攻するなら、他に大兵力を動かせるルートはない。土居さんの意見も、間違ってはいない。
「ちょっといい?東西の敵はどうするの?綾野軍は、三方向から侵攻してるの忘れてない?」
東側と西側は、平野だ。こちらも、砦が次々と落とされ、トナミマチへ向けて侵攻中。
「サノ姫、主力はどこだ?」
「多分、南側だと思う。ボクが偵察した感じでは、南に5,000。東に2,000。西に3,000だね。どの部隊に、常識がいるのかはわからなかった」
「むむっ、ならトナミマチに撤退し、防御戦を行いましょうぞ」
「援軍なき籠城は悲劇だ。それに三方向から、別々に来ている敵を合流させることはない」
俺は、土居さんの意見を退ける。あまり、戦争では土居さんに期待はできない。
「みんな、殺しちゃえばいいんでしょ?ボクの格好に、文句つけたゴミどもなんて、みんな死んじゃえばいいんでよ」
サノ姫の目からハイライトが消える。
みんな殺す……怖っ、この娘。
けれど、この時、俺の頭に電撃が走った。
「やれるぞ、その作戦を採用だ、サノ姫!片っ端からいくぞっ!」