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黙ったまま部屋から出て行ったセミオンは、午後の授業も小休憩の時も自分の席に座ったままナナへの報告には行かなかった。
スティアかドラードかアフィオに伝言を頼んだにしても、接触してないし……。
念力か何かで伝えた?
そんな術あったっけ?
非常に大人しくしていたセミオンだが、放課後には何故か何事もなく話しかけてきた。
「明日、昼休みいつものベンチで食べよう。おにぎりは俺が作るから」
と。
あの……今日の昼休みに婚約話し断ったよな?それなのに一緒に昼食を食べたいと思える根性が凄いな!
まぁ、好きで婚約しようって話じゃなかったんだから意識する方が可笑しいのか。
セミオンがここまでオレに近付いてくる真意も知りたい所でもあるし、良いだろう。
「少し中庭を走りたいので遅れますが、それでよろしければ構いませんわ」
返事をした後は解散となった筈が、オレもセミオンも揃って市場へと向かっていた。もちろん示しを合わせた訳でもなんでもないし、会話すらないのに、ピタリと斜め後方に居る。
周りから見れば確実に一緒に買い物をしているように見えるだろう。
これは、何か話しかけた方が良いよな?
「あー……セミオン殿下?私に何か御用でしょうか?」
クルリと振り返って笑顔などを向けてみれば、妙に不機嫌そうな顔が目に入る。
なんだ?なんだ?
「明日のおにぎりは俺が作るって言ったの聞いてなかった?何で買い物に来てんだよ」
あぁ、そういう事ね。
「えぇ。私はおにぎりに合うスープを作ろうと思いましたの」
普通こういった中世ヨーロッパ系の乙女ゲームには醤油や味噌などはないのだろうけど、ここは我が姉の作った世界。そして姉は大の和食好き。米があって味噌がない訳がないのだ。
流石に顆粒タイプの合わせ出汁なんてのはないけど、それも昆布やキノコを使えばなんとでもなる。
今日はその出汁を買いにきたという訳だ。
「スープ?」
どうやらおにぎりに合うスープに心当たりはないらしい。
味噌が普通に売られているのに味噌汁を知らないなんて可笑しな事はないだろうから、もしかして味噌汁が嫌いとか?
だとしても明日は味噌汁を作る。何故ならオレが飲みたいからだ!




