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池を氷で覆いつくすより、覆ったその氷を水に戻す方が魔力の消費量は多い気がする。そして更にその水を蒸発させるのは、それはもう大変だった。
出した水を氷にして池を覆い、水に戻して蒸発させた。これだけの作業でオレの魔力は枯渇寸前だ。
「……凄いな」
オレの様子を見ていたドラードは、元に戻った池を眺めながら何に対してなのか分からない事を呟くと、自身もまた池の表面を氷で覆い始めた。
どうやら真似をしたいらしい。けど、それはオレにとっても願ってもいない事。
将来大魔法使いと言われる程の人物とオレの魔力の差を見るのには、同じ魔法を使ってもらうのが1番確実だからな。
オレはこれまで闇属性の自分の魔力は結構強い方に入るんじゃないかと考えていたが、ここでドラードがオレのやった技と同じ事をして、尚且つ今のオレのように動く事すら億劫になる程消耗したら、将来はオレも大魔法使いになれる可能性がある筈だ。
さぁ、どうなる?
勝手に勝負をしておいてなんだが、完敗した……ドラードは池を氷で覆い、水に戻し、蒸発させる。という一連の流れを滞りなくこなした後は、消耗の激しいオレの魔力を回復させる為、自身の魔力を少しオレに分け与えるという芸までこなしやがったのだ。
くそ……。
こんなんじゃあ守り神を倒すなんて、夢のまた夢だ。
あの守り神を倒せなければオレは……ただ無残に踏み潰されて終わってしまう。
突然前世の記憶が戻り、そこがまさか姉の作った乙女ゲームの中で、まさかまさか転生したのが悪役令嬢であるエイリーンで。
自室に閉じ込められ、友達もいなくて、敵ばかりで、使用人からも卑下されて。エイリーンはそれで心を失ってしまったが、オレは特に激しい絶望を感じなかった。
魔法学校に入学した途端フィンとスティアに避けられても、オレの心にはナナに対して憎しみを抱ける程の激しさもない。
絶対的な目的があるからだ。
守り神に勝つ事。それがオレの全て。
「おい、ドラード……今からお前はオレのライバルだ……」
絶対に勝ってやる。
誰よりも、なによりも強くなってやるんだ!




