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自分でも驚くほどの衝撃を受けたのは、主人公の瞳も赤色だった事。
同じ忌み嫌われている赤い瞳を持って産まれたというのに、主人公は健やかに過ごしてきた事がありありと窺い知れるのだから。
血色の良い肌、健康的な体形、サラサラでツヤのある髪。そして攻撃魔法を他者に当てる事が出来ない程の心の優しさ……それは今まで優しさに溢れる場所で暮らしてきた事の証明になるんじゃないか?
その上、オレとは違う光属性。
オレは水も火も地も風も扱えるが回復魔法は使えない……つまり闇属性。
光属性だから赤目でも大事に育てられたとでもいうのだろうか?
「お父様!頂いたドレスは似合っていますでしょうか?」
パッと笑顔になった主人公は、何故かオレの方を見ながらそう言い、何故だかオレよりも上質なドレスを持ち上げて綺麗に、それはもうお手本のような動作で礼をした。
えっと……知り合いだっけ?
そう首を傾げるよりも早く、オレの後方上から今まで聞いた事もない柔らかな声が聞こえた。
「よく似合っているよ」
聞き覚えがあるのに聞いた事もない声にビックリして後方上を見上げてみれば、これまた見た事もない柔らかな笑顔を浮かべる執事がいた。
ん?
あれ?
主人公が執事の子供だというのなら設定が可笑しいじゃないか。
だって、主人公は平民出身の筈なのだから。
なら、この現状はなんなんだ?
侯爵家の執事の子供が平民ってのが可笑しい気がするんだけど……執事になったからって爵位がもらえる訳でもないだろうから、間違ってはないのか?
勲章とかはありそうだが、その辺りは難しいから置いておくにしてもだ。なんで主人である親父の子であるオレより、執事の子の方が明らかに待遇が良いんだ!?
うらやましいとは思わないが、着ているドレスにしたってオレより上質じゃないか。
言った所でどうしようもないんだけど、この世界は全体的にオレに厳し過ぎないか?
オレは主人公の顔は描かなかったし、格好も出来るだけ地味に地味にと意識して描いたんだ。そりゃーもう個性という個性を消すように。
なのになんだ?
今目の前にいる主人公の容姿は、ここが魔法学校の正門前という現実的な場所ではなく、森の中とか、湖の畔などという神秘的な場所なら天使か妖精と思われても不思議ではないくらい可愛らしいじゃないか!




