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石から出てきた魔物は、HPが赤点滅してるんじゃないか?という程弱り切り、後なんでも良いから1発食らったら討伐完了しそうな状態だ。
経験値そのものを石に詰める事は出来てはいないけど、こうして魔物そのものを圧縮して閉じ込めておけるんなら、確かに経験値を受け渡していると言い換えても過言ではない。
って、こんなわざをいつの間に修得したんだ!?
スティアがどんどん恐ろしい方向に成長している気がするわ……。
「倒してみ」
腰が引けてしまっているベルノーズの背後に回り、ポンと押してやると涙目で振り返ってくるものだから、改めて可愛いなとの感想が脳裏にハッキリと浮かんだ。
「こ、怖い……」
いや、そんな怯えた声出さんでも……それに、こんな弱り切った魔物討伐の何が怖いってんだ?反撃を受ける可能性だってないほど弱ってる相手にこれほど恐怖するんなら何故冒険者になろうと思ったんだ?
これなら王都に住んでる子供の方が勇敢だぞ?
とはいえ、ベルノーズは冒険者にならなくても良い登場人物だし、いちいちレベルを上げさせなくてもいいのか。
第一ナナと会わせてそのまま別れる予定なんだから、こうして気を使う必要もなかったわ。
「嫌ならいい」
なにかの罠かもしれないとか思えば、手を出さない方が良いのかも知れないけど、タロウとしてのオレは冒険者なり立てのレベル1だし経験値はいくらあっても有難い。
「待って、待って……やる、から。置いてかないで」
涙目でそんな台詞を吐くんじゃありません!しかも、置いていくつもりですから!
けど、やるっていうんだからやってもらいますかね。
で、待つこと10分程。
弱り切った魔物を前にしたベルノーズは、武器であるピッカピカの剣を構えたまましばらく固まり、何度かイメージトレーニングをするように素振りをして、最終的には物凄い腰の引けた格好で剣を振り下ろして退治を成功させた。
その癖一仕事終えたみたいな表情をするものだから、初々しくってしょうがない。
っと、それは良いとして、話しを進めよう。
「EXPストーンは理解した。キヨタカという冒険者を生きたまま連れてくれば良いんだな?期間はいつまでだ?」
誰が依頼を出してるのかを確認しに来ただけだから、本当に連れて来る事はしないし、そもそもキヨタカはオレだし。
「期間は……なるべく早く。生きたまま、お願いします」
そう言って頭を下げたケリーとスティアの依頼を正式にベルノーズに受けてもらえば、時間は丁度良い感じの夕方。
これ位の時間なら魔法学校の授業も……待て、だとするとケリーとスティアは学校を早退してきたのか?学校に行ってないとかじゃないだろうな?
「……」
とりあえず、ベルノースとナナを対面させに行こう。丁度さっき人探し依頼を受けたばかりだし、人を探しているので学生全員に声をかけてますよーってな感じでいけばナナに話しかけても不審ではあるが理由にはなる。
魔法学校の正門前に移動しながら、ベルノーズに学生に話しを聞いてみようとか言って、こうしてワラワラと出て来る学生1人1人に声をかけまくる。
「冒険者を探してまーす。こんな顔の人見た事ないですかー?」
と、本当に適当な事を言いながら似顔絵を見せる。
「冒険者、を探して……見た事……」
「冒険者さんを探してるんですか?」
もはや片言と言って良いほどの不自然な話し方をするベルノーズの声がした直後、聞き覚えのある可愛らしい声が聞こえてきた。ちらりと振り返って見えるのはフィンを従えているナナの姿。
よっし、出会いイベント完了っと。
「は、はい!冒険者の……」
「冒険者って事は、男性ですよね?」
「えっと……登録に性別は特に……」
おーお、どっかで聞いた事のあるセリフじゃないか。
ならあの時のオレは確かにナナとベルノーズの出会いイベントを先取りしていたんだな?それならベルノーズが急にオレに対して懐いてきた理由にも納得がいったよ。
さてと……面倒ごとが起きる前にタロウって冒険者毎消えておくとしようかな。
これにて「隠しキャラクターに会ったよ」という内容の第17章完結です。
第18章は また少し間が空いてしまうと思いますが、第18章もお付き合い頂けると嬉しいですことですわですわっ!




