23
このまま放って何処かへ飛び去ってしまう事も出来たし、そうした方がナナとの出会いイベントが強制的に始まる可能性もあったし、面倒な事には巻き込まれたくなかったし、心の半分は飛び去ろうとは思ってたんだけど……。
「ハジメマシテ、お嬢さん。急に裏通りを目指すなんて穏やかじゃないね」
などと言いながらベルノーズの前に立ってしまいました。
「こちらこそハジメマシテ。この奥にキヨタカさんの好きな店があるんですよ」
そんな声に裏通りの方を見ると、ちょっと年齢を偽装したスティアが立っているけど……クルスの変装はしてないから、冒険者キヨタカを探している学生という感じなんだな?
「あ、裏通り……そうなんです!怪しいかも知れませんけど、そのお店のサンドイッチが本当に美味しくてですね!他の町にも同じような味のお店があれば、そこにいるんじゃないかなーとか思いまして、えっとですね。ですから、えっと」
言わんとしていることは分かった。
しかし、ここでスティアが出て来るって事は、店の中にはドラードもいたりするのだろうか?いや、あいつは今頃はきっとナナマジックにかかっているだろう。
「……依頼者は君たち2人か?報酬の経験値ボーナスが子供に用意できるとは思わない」
「タロウ、経験値ボーナス、討伐依頼なら……」
うん、討伐依頼だってんなら納得がいく。
「この冒険者の討伐依頼だな?」
はぁ~、まさか討伐を考えられるほどケリーもスティアもナナ側になってるとは恐れ入ったよ。けど、ヒロインの傍にいるんじゃあ、遠くにいる悪役令嬢の扱いなんてこんなものになるのは自然だな。
よし、ここは盛大に討伐してやったぜ!と、堂々とキヨタカのプレートキーチェーンをスティアに投げ渡してやろうじゃないか!
ナナ達の行動を細かく伝えてくれていたスティアの報告も、ここまでナナ寄りになってたんじゃあ真実かどうかも怪しいし、読み物としても興味がなくなったわ。
「え?討伐って……え?」
モブであるケリーには、討伐のつもりはなかったようだ。
「何処から討伐が出てきたのか知りませんが、勝手な解釈は止めてください。経験値のボーナスはEXPストーンですから」
経験値が詰まった石?
え?この世界ってそんなザ・RPGって感じのアイテムなんかあったのか。
「……怪しい!そんなアイテムは……なし、です」
ないのか!
抑えることもせずに大きなため息を吐いたスティアは、ベルノースの足元に手のひらほどの大きさの石を投げた。
「それを使ってみれば分かりますよ」
と。
どう使うのかは分からないので、オレはその石をスティアに蹴り返してみた。
「先にお前が使って見せろ」
知らない人に危険なものを渡すような人物ではないってのは分かってるんだけど、使い方が分からないし、初対面だとしたらこのスティアの物言いは怪しい以外の何物でもない。EXPストーンなんて存在すらしていないアイテムなら尚更。
無言で石を拾い上げたスティアは地面に思いっきり投げつけて割ると、そこからスーっと出てきた魔物を指差してみせた。
これは……確かにEXPストーンだわ。




