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第1話 天才の娘は義賊に出会う。


日も変わろうとしている深夜、街灯の光も届かない路地裏を私は走った。


息を切らしながらも私は走る事をやめなかったのには、それ相応の理由がある。


私が逢いたいと願い、探し求めたあの人がすぐそこにいるからだ。


そして、私の目はゆっくりと歩く黒を基調とした服の若い男の人を捉えた。


「見つけた!あなた、盗賊さんでしょ?」


私はその男の人に声をかけた。


「ん?盗賊さんってオレの事?だったら人違いかな。それと女の子が夜遅くに1人でこんな所歩いたら、危ないよ」


そう言って男の人は立ち去ろうとする。


でも、私には確信があった。この人が私の探し求めていた盗賊、そう誰かのために盗みを行うという義賊のような盗賊だと。


「お願いします。あなたに盗んで欲しいものがあるんです!」


私は立ち去る男の人の背中に向かって頭を下げた。


「詳しく話を聞こうじゃないか」


私が頭を上げると、彼は振り向いてこっちを見ていた。


―――


話をするために彼の後をついていった私は彼のアジトへと案内されていた。


アジトと言う割には場所も間取りも普通のアパートで拍子抜けだった。


彼は台所から2人分のコーヒーを持ってきた。


「話を信じてくれて、ありがとう。それで私が言うの変なんだけど、私の話を信じてくれたの?もし私が嘘をついていたらマズくない?私、アジトの場所だって知っちゃったよ」


「オレも この仕事は長いからね、嘘をついているかぐらい見ればわかるよ。それにアジトだってもともと今日の仕事が終わったら、場所を変えるつもりだったし。それより自己紹介しようよ。お互いに名前を知らないまま話を進めるわけにもいかないでしょ?オレの事はナオって呼んでよ。苗字とか細かい事は気にしないでね」


「ナオね、よろしく。私はセリカ、木下セリカよ」


「オッケー、セリカちゃんね。それで?セリカちゃんはオレに何を盗んで欲しいの?」


「お父さんの遺産って言うのかな。まあ、そんな感じ」


「へえ、面白いね。まさかお父さんの遺産を盗んで欲しいなんて、理由を教えてもらってもいいかな?」


「うん、良いけど。でも、この話には、タイムマシンや異世界、魔術といった信じられないような言葉が出てくるから信じてもらえないと思うけど…」


「確かに、一気に胡散臭くなったね…。まあ、でも話してみてよ、信じるかどうかの判断はそれからするから」


「わかった、じゃあ話すね。実は私のお父さんは発明家で、タイムマシンを作ることを目標にしていたの。そして、先日タイムマシン作成の最中に空間を移動する技術を発見して、その技術を使った発明を新たにしたの」


「なるほど、それで異世界に移動する事が出来るようになった、と言うわけかい?」


「うん、そう。最初はこの世界の範囲のみで移動していたんだけど、ある日その機械にキョスー(?)を入力すると異世界にも移動出来る事がわかったの。それからお父さんはその異世界に入り浸るようになって。そして、その世界には魔法や魔術と言った概念が存在しているらしくて、お父さんは『タイムトラベル』と言う名前の時間を行き来出来る魔術を使えるんだって」


「うん、それで?」


「うーんと、お父さんは空間転移の機械を使って異世界へ移動し、そこで魔術を使って好きな時間に移動して、異世界からこっちの世界に移動する事でなんちゃってタイムマシンを作り上げたんだって」


「なるほどね。話が全て正しいとするならば、そこまでは何とか理解出来たよ。それで、その話が遺産を盗むって話とどう繋がるんだい?」


「えっとね、お父さんはそのなんちゃってタイムマシンが完成してから、時間を移動する際は戻ってこれなくなった時に私に手紙が届くようにしていたみたいなの。そんなわけでこの間その手紙が届いて、そこには『私の99個の発明品を全て揃えて、タイムマシンを作り、助けに来て欲しい』みないな内容が書かれていたの。なんか、お父さん、魔術に頼らないタイムマシンも完成させていたみたい」


「なるほど。そこまで聞けば、大方話はわかったよ。そのタイムマシンの部品になっている発明品を集めようとしたが、手に入れるには盗むしかないようなものがあったんだな?それでオレに依頼しようとしたのか」


「うん、そんな所。じゃあ早速行こうよ」


「え、今から行くの?」


「え、行かないの?」


「もう日が変わってるよ。オレはこのアジトの撤収もしないといけないし、明日でいいんじゃないかな?」


「まあ、そういう事なら明日でもいいけど。じゃあ、明日この場所に来てね」


そう言って私はナオに1枚の紙切れを渡した。


「明日の何時にいけば良い?」


「そうね。正午にしようかな」


「うん、わかった。じゃあ、今日はお開きだね」


「うん、明日はよろしくね」


私はナオのアジトを後にした。


―――


次の日。


私の指定した人里離れた森の奥のある場所に私達は集まった。


そんな私達の目の前には古びた石の塔がそびえ立っていた。


「こんな所に塔があるなんてね」


「うん。この塔はアベルの塔と呼ばれて、父の発明品の『No.77 アベル』がここに格納されているんだって」


「それでアベルの塔ね。少々安直過ぎる気もするけど。まあ、とりあえず中に入ろうか」


「うん!」


私達は塔の中に入った。


2人が入りきった丁度その時、扉が勝手に閉まった。


「どうやら、オレ達を返すつもりはないらしい」


私は円形の部屋を周囲を見回した。ここは1階で上に登って行くっぽい雰囲気なのに、上に続くような階段はなく、壁に「問題」が刻まれているだけだった。

1F 難易度:『A』

【問題】

アル クルマハ コウソクドウロヲ ジソク100kmデ ハシリ、 イッパンドウヲ ジソク60kmデ ハシルト イウ。コノトキ コノ クルマガ チキュウイッシュウブンノ キョリヲ コウソクデ ハシッタト スルト、 2020ネン1ガツ1ニチニ ナッタト ドウジニ シュッパツシタナラバ トウチャクスルノハ ナンネンノ ナンガツナンニチニ ナルダロウカ。コタエハ リユウト トモニ ハッピョウスルコト。

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