31話 ここは何と!?
遅くなりましたが、皆さん、あけましておめでとうございます。二章に入ってからの展開がまだまとまっていませんので、執筆の進みが悪いです。その為更新が遅くなりますが、気長に待っていただけると幸いです。
砦の中に案内されて僕は驚いた。
魔族の領土との境界線を守るのだからと、兵士長を含めてある程度の兵士のレベルを見てみたのだ。
《バラム(人間) レベル35》
兵士長……名前を<バラム>と言うらしいが、そのレベルは35と高く、周りにいる兵士達のレベルも平均して20以上もあった。
シルフィーの町にいた冒険者のレベルが大体10前後だった事を考えると、このにいる人達のレベルの高さが良く分かる。
「もしかしてこの辺りに出るモンスターって、かなり強いんですか?」
砦の中を案内してくれたのは、なんと兵士長であるバラムさんだった。まさか兵士長自ら僕達の相手をしてくれるとは思ってもいなかったので恐縮してしまう。
「確かにこの辺りのモンスターは内地に比べて強いな。だが、その分数が少ないから、出会う確率は低いがな。まあ、坊主のような低レベルだと瞬殺されるから、ここまでモンスターに出会わなかった幸運を神に感謝するんだな」
バラムさんはわざと僕のレベルをハッキリとは言わず、低レベルと誤魔化してくれた。その対応だけでも信頼に値すると判断出来るが、神様に感謝する事は出来そうにない。
だって本当に幸運があったら、そもそもこんな場所に飛ばされたりはしないでしょ?
もちろんそんな事を言葉には出しませんよ。僕は無用なトラブルは避けたいので、空気は読める男として生きていくつもりですから。
「それでここらの土地は何処の国に属するのでしょうか?」
「そう言えば、坊主達は魔法で飛ばされて来たんだったな。ここは<フレイム王国>に属する土地で、地図で言えば北東と言ったところか。まあ北東と言ったが、人間の領土の中で、だがな」
「っ!?」
マリアがバラムさんの話を聞いて驚いたように息を飲む。僕は地名をすべては覚えていないので、「そうなんだ」としか理解出来なかったのだが。
「北東ですか……それなら結構シルフィーと近い筈なんだけど。あの町って大きそうに見えて、あまり大した事がなかったのかもしれないな」
「そうなのか? この辺りにあったら、王国に記録があってもよさそうなものだが」
「そ、それより!」
シルフィーも僕が最初にいたはずの村も、前に見せてもらった地図では東の方にあったはずだ。にも関わらず兵士長ともあろう人が知らないとは、不思議な事もあるものだと首を傾げていた。
すると今まで黙っていたマリアが、慌てた様子で話に入ってきた。
「わたしは少しですが回復魔法を使えます。今日はここに泊めてもらえるとの話なので、お礼として怪我人がおりましたら魔法で癒したいのですが……」
「おおそうか、君は回復魔法を使えるのか。なら悪いが怪我人がいる場所に案内しよう。このような最前の地だと、どうしても怪我人が絶えなくてな」
マリアが回復魔法の使い手だと知り、バラムさんは喜んで怪我人の下に案内してくれる。
ただ、僕は不思議に思った。追われる立場であるはずのマリアが、わざわざ目立つような行動をするのは少し変だと。
もちろん少し腹黒い所はあるが、根は優しい女の子だと分かっているので、タダでお世話になる事に気が引けたのかもしれない。
まあ、怪我人を癒す事自体は悪い事ではないし、僕もとくに反対するつもりはないけどね。
「《ライトヒーリング》」
怪我人はおよそ10人ぐらいだろうか、それでも砦の総人数から考えるとおよそ2割の兵士が怪我で動けない状況だった。
マリアの魔法でだいぶ怪我が良くなった兵士は、お礼を言ってベットから立ち上がろうとする。だが、血が止まり傷口が癒えたからと言って、抉られた肉は元には戻らないし痛々しい傷跡は残っている。
まだ体を休めた方が良いと言っても、動けるようになれば問題ないと持ち場に戻っていく。
「……此処は……そんなに切羽詰まった場所なんですか? わたしの魔法では血を止める事は出来ても、落ちた筋力などはすぐには戻りませんし、もう少し安静にしてもらった方が良いのですが」
「気を使わせてすまないな。ここは魔族の領土と隣り合わせである事から、何時魔族が襲ってくるか分からない。少しでも動ける者は最低でも見張りや武器の手入れなどをやってもらっているんだ。砦は此処だけではないが、一カ所でも砦が落とされると一気に戦況が傾くからな」
「皆さんお強そうなのに、魔族はそれ以上に危険な相手なんですか?」
この砦にいる兵士のレベルの高さでさえ、そこまで余裕がない相手となると、僕にとっては恐怖でしかなかった。
だって僕のレベルは1だし、魔法がほとんど使えないとなると、すぐ隣に死が待ち構えているようなもんなんだよ。少し恰好悪いとも思っていたマリアに頼る作戦だったけど、兵士長が強いというモンスターが相手では彼女のレベルでは厳しいだろう。
つまり、それ以上の敵かもしれない魔族が相手では勝ち目がゼロとなる。
「魔族も人間と一緒で強さは人それぞれだ。そうだな、ここに攻めて来る分隊のリーダーがレベル30を超えている強さだったな。……まだ直接見た事はないが、指揮官クラスのレベルとなると余裕で50を超えている強さだと聞いた事があるな」
モンスターと違って戦略を持って挑んで来る魔族が相手となると、レベル以上に戦い難い強敵だろう。僕達はその言葉を聞いて息を飲む。
「そこまで不安になる必要はない。つい先日に小競り合いがあったら、向こうもそう続いて攻めて来る事はないだろう」
その事を聞いて、少し不謹慎かとも思ったがホッとした。その様子を見てバラムさんは笑って流してくれた。
その後僕達は軽い食事を貰って、仮眠室と思われる場所に案内される。
案内された部屋は2人部屋。髪の色から僕達が兄妹だと思ったのだろう、違うと言って詳しく聞かれても困るし、シルフィーの宿屋ではいつも一緒の部屋だったのでこんな状況で文句は出ない。
「それにしても、良かったのかい? マリアはあまり人前で顔を出したりしないと思っていたし、あまり注目を浴びる事はしないと思っていたんだけど」
この部屋には僕達しかいない。なので、気になっていた事を質問している。
「……まだ確証は得ていませんが、ここではわたしが表に出ていても問題はないでしょう」
「それはどういう事だい? やっぱりここってシルフィーやマリアのいた町から遠いの?」
それにしてはバラムさんの教えてくれた地図上での位置が合わない。
「いえ、地図上ではそこまで離れていないと思われます」
「ならどうして」
「その前にシンさんに聞きます。貴方の魔法属性は……信じがたいですが、時を操る魔法ですね?」
「あー……やっぱりダンジョンボスと戦ったところを見れば、簡単に想像が付いちゃうよね」
「いえ、あれだけでは複数の候補がありました。例えば風魔法で相手の動きを制限して自分に追い風をあてて加速するなど」
「それじゃあ、何が決め手となったんだい?」
僕が一番分かりやすいと思われていた現場ではなく、他の要因でマリアは僕が時空魔法を使える事に気付いたようだ。
だけどこれ以外でハッキリ分かるような事を思い付かない。時空の歪みの事は説明していなかったと思うし。
「先程も言いましたが、まだ絶対と言う訳ではありません。バラムさんの話が本当だとするなら……」
「するなら?」
「ここは何百年も昔……過去の世界という事になります」
「は!? はいーーーーーー?????」
僕は驚きのあまり目を見開いて大声を上げてしまった。
だって、マリアの推測は僕の想像を遥かに超えたものだったんだもん。




