王都、そして新たな戦力
出発の日。
村の入口に、人が集まっていた。
「……本当に行っちまうのか」
レオンがぼそっと呟く。
「はい……でも」
ルナが一歩前に出る。
「私、強くなります」
その目には、もう迷いはなかった。
「もう、誰も失いたくないから」
静かに、しかしはっきりと。
「……ああ」
短く頷く。
「行こう」
振り返らない。
ここはもう、“守る場所”じゃない。
——次は、もっと大きな戦場だ。
◇ ◇ ◇
王都。
高い城壁。
整備された街並み。
(……でかいな)
村とは比べ物にならない規模。
「こちらです」
ディルクに案内され、城へ入る。
玉座の間。
そこにいたのは——
「よく来た」
アルヴェリア王国国王。
「レオンハルト・アルヴェリアだ」
低く、重い声。
「話は聞いている」
「少数を率い、オークの群れを退けたそうだな」
視線が、鋭い。
「……運が良かっただけだ」
「謙遜は不要だ」
即座に切り返される。
「結果が全てだ」
「ディルクの報告は信頼している」
王はゆっくりと立ち上がる。
「そこでだ」
「お前に戦力を預ける」
一瞬、空気が変わる。
「三十名」
「我が軍の中でも、選りすぐりだ」
「指揮は、お前に任せる」
ざわめきが広がる。
「……いいのか?」
「構わん」
「今は“使える者”が必要だ」
迷いのない判断。
(……合理的な王だな)
「……分かった」
「使わせてもらう」
◇ ◇ ◇
王都の外。
三十人の兵士が並ぶ。
(……確かに強い)
一人一人が、村人とは別格。
だが——
(ディルクほどじゃない)
「これより、任務を開始する」
短く告げる。
「目的は、魔物の殲滅」
その時だった。
森の奥から、気配。
「……オークか」
数は——十数体。
かつて苦戦した相手。
だが——
(今は違う)
「配置につけ」
静かに言う。
「ディルク隊、正面」
「レオン隊、右から回れ」
「ガレス隊、左を抑えろ」
「後衛は中央支援」
全員の動きが、視界に入る。
(問題ない)
「……行け」
戦闘開始。
——一瞬だった。
「なっ……!?」
兵士の一人が声を漏らす。
オークが、次々と倒れていく。
連携が、完璧すぎる。
無駄がない。
「終わりだ」
気づけば、全滅していた。
沈黙。
「……なんだ、今のは」
「ありえない……」
兵士たちがざわつく。
「……これが」
誰かが、呟く。
「ディルク様が言っていた“力”か……」
視線が、こちらに集まる。
「……違う」
小さく呟く。
「これは、まだ一部だ」
全員が息を呑む。
(30人でも——まだ余裕がある)
この感覚。
(もっといける)
——戦場は、さらに広がる。
その時だった。
――《経験値を獲得》
静かに、情報が流れ込む。
(……まだ入るのか)
あまりにも一方的な戦いだったはずなのに——
――《レベルアップ:Lv.10 → Lv.11》
わずかに、感覚が広がる。
(……少しだけ、か)
だが、確実に強くなっている。
(悪くない)
視線を上げる。
三十人の兵。
そして——仲間たち。
(まだ、先がある)
この程度じゃ、足りない。
もっと強く。
もっと多くを動かす。
そのために——
歩みは、止めない。




