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出会いと選択

ゴブリンが完全に逃げ去ったあとも、しばらくその場に静寂が残った。


 荒い呼吸だけが、やけに大きく聞こえる。


「……助かった、のか?」


 誰かが、ぽつりと呟く。


 その言葉で、ようやく全員が現実を認識したようだった。


 


 三人の視線が、一斉にこちらへ向く。


 


「……お前、本当に何者だ?」


 


「……ただの人間、だと思う」


 


「思う、ってなんだよ……」


 


 小柄な少年が眉をひそめる。


 


「まあいい。助けられたのは事実だ」


 


 大柄な男が低く言う。


 


「礼は言う」


 


「……ああ」


 


「それより——この近くに村がある。怪我人もいるはずだ」


 


「来るか?」


 


 少しだけ迷って——


 


「……行く」


 


——これが、最初の“選択”だった。


 


 


 森の中を、四人で進む。


 さっきまでの戦いが嘘みたいに静かだ。


 


「……なあ」


 


 不意に、小柄な少年が振り返る。


 


「いつまで“お前”呼びなんだよ」


 


「……ああ」


 確かに、その通りだ。


 


(名前……か)


 


 一瞬だけ、考える。


 


(木村悠人……いや、それはやめた方がいい)


 


 ここがどこかも分からない。

 本名をそのまま出すのは、なぜか危険な気がした。


 


「……ユウトでいい」


 


「ユウト、か」


 


 少年がニヤッと笑う。


 


「俺はレオンだ。さっき見てただろ?」


 


「ああ」


 


「前で暴れてたやつだ」


 


「言い方が雑だな」


 


 低い声が横から入る。


 


「ガレスだ」


 


「エリシアよ」


 


 後ろから、落ち着いた声。


 


 それぞれが短く名乗る。


 


(アタッカーのレオン、ディフェンダーのガレス、魔法使いのエリシアか)


 


 頭の中で整理する。


 


(役割ははっきりしてる……バランスは悪くない)


 


 レオンは前に出すぎるが、突破力はある。

 ガレスは安定しているが、動きは遅い。

 エリシアは火力は高いが、防御は薄い。


 


(なかなか個性の強いメンバーだ)


 


 思わず、心の中でそう評価する。


 


(……でも)


 


 さっきの戦いを思い出す。


 


(俺が“まとめれば”、もっと強くなる)


 


 


 しばらく進むと、木々の隙間から小さな村が見えてきた。


 


 だが——


 


「……ひどいな」


 


 思わず、声が漏れる。


 


 家は壊れ、あちこちに血の跡が残っている。

 倒れている人間も少なくない。


 


「さっきのゴブリンの群れだ」


 


 ガレスが低く言う。


 


「負傷者が多い……」


 


 エリシアの表情も険しい。


 


「くそっ……!」


 


 レオンが歯を食いしばる。


 


 


「……回復できるやつはいないのか」


 


 思わず、呟く。


 


 その時だった。


 


「あ、あの……!」


 


 か細い声が、後ろから聞こえた。


 


 振り返ると、そこには一人の少女がいた。


 


 白いローブに、小さな杖。


 震えながらも、こちらを見ている。


 


「わ、私……少しだけなら、治せます……」


 


「……!」


 


(ヒーラー……!)


 


 直感で分かった。


 


 あの光。あの雰囲気。

 間違いなく、回復役だ。


 


(これで——勝てる)


 


 確信する。


 


 レオン、ガレス、エリシア。

 そこにヒーラーが加われば——


 


 完璧なパーティだ。


 


 


「来い——」


 


 手を伸ばす。


 


 その瞬間。


 


 頭の奥に、あの声が響いた。


 


 ――《対象選択》


 ――《上限を超過しています》


 


「……は?」


 


 思考が止まる。


 


 もう一度、意識を向ける。


 


 だが——


 


 ダメだ。


 


 どうやっても、その少女を“選べない”。


 


 


 ――《統率上限:3名(Lv.1)》


 


 


「……ふざけるなよ」


 


 思わず、声が漏れる。


 


 目の前には、助けられるはずの命。


 


 そして、すでにいる三人。


 


 


「……誰を外す?」


 


 


 喉が、ひどく乾いた。


 


 


——その選択が、すべてを変える。


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