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あれから少し経って、私は車の後部座席、運転席の後ろにいた。運転席には義隆さん、私の隣には匠海くんが座っている。三人を載せた軽ワゴン車が向かう先は、当然あそこだ。
しばらく迷いなく走ったところで、ひどく真剣な声が聞こえた。
「……おかしい」
「何がですか?」
思わず尋ねてしまう。そのままバックミラーを見ると、今までの優しい雰囲気が嘘みたいに、鋭い視線の義隆さんがいた。恐怖なのか興奮なのかは分からないが、どきっと心臓が跳ねた。
「今行こうとしてるところはね、僕もたっくんもよく知っている場所なんだ。当然、そこへの道も、行き方もね。車に乗って結構経ったと思うけど……本来であれば,もうそこについているくらいの時間が経っているんだよ。でも、いつまで経ってもたどり着けない」
「え、なにそれ……こわ」
義隆さんがこの状況でふざけているとは思えない。場所も道も知っているのにたどり着けないなんて、想像もできなくて、言葉以上に怖くなった。
「車を降りて、俺一人で行くのは?」
「多分意味ないね。僕らみたいな場所を知っている存在には、たどり着けないようにしているんだ。何とかできなくはないけど……でもちょっと時間がかかるからなぁ」
義隆さんが考えるように顎を撫でた。どうやら考え事をするときの癖らしい。
「……今って、急いだほうがいいんですか?」
「まあ、早いに越したことはないね。最初に呼ばれた被害者がもういつまで保つのかは、僕らにすら正確には分からないから」
ちょっと前の匠海くんの言葉を思い出した。最悪の場合――死ぬ。
「……………………あ」
ずっと窓の外を見ていた匠海くんが、何かに気付いたように言った。そのまま私のほうを見て、視線を下に落とす。
「……どうかしたの?」
「……なんとかなるかもしれない方法、思い付いたけど」
しばらく沈黙が続いた。私も義隆さんも何も言わず、じっと匠海くんを待った。
「……花河さんが、危ないかも」




