【77・シュタールツ帝国編4】
人々の明るく賑やかな声と屋台からの威勢のいい声。
祭りとあってか街中は華やかに飾り付けされていて、見るだけでもテンションが自然と上がっていく。
前日とあってか盛り上がりが凄い。
「なのに……! なんで、祭典とは無関係のダンジョンにいるのさっ! 露店はっ?! コンテストはっ?!」
バッサバッサと尻尾を揺らし、不機嫌に喚く私に攻撃してきたコボルトを容赦なく爪で切り捨てる。
叫ぶな! 鬱陶しい!
「アリアー! まだ前日だし終われば好きに行動していいって父さん達が言ってたじゃん!」
「それとこれとは別! あぁもう、周期じゃないのになんでこんなに多いのー?!」
標的を私からリューリへと変わった魔物が襲いかかるが、リューリとて冒険者。息は上がっているが、まだまだ戦える様子で確実に数を減らしていく。
まぁ、私が魔法で手助けをしてはいるが、確実に以前より強くなっている。
本人にその自覚がないんだけどねぇ。
「ふー……。粗方は片付いたね。強くないけど、数が多いし種類もバラバラ。アリア、どう思う?」
「…………匂うよ」
「匂う? そりゃ、汗かいてるし返り血も付いてるから……」
「おバカ。そんな事を言ってるわけじゃないよ。リューリにわかんないという事はやっぱりアレだね」
さて、なんでこんな事になっているのかっていうと、ひとえにリューリ達親子のお人好しのせいだ。
だって、私は拒否したのに酷いや。
シュタールツ帝国もダンジョンを保有、管理している国の一つ。
周期はもちろんあるが、祭典には被らないはずだった。なのに、祭典が近付くに連れ防壁で抑えてはいるものの魔物の襲来が増加傾向。
だから、騎士団団長のリングバディが最前線に待機し指揮を取っていたらしい。
ダンジョン周辺に障壁を展開すればいいかも知れないが、魔力石とか魔道具とか消耗品が割に合わない。だって、冒険者に討伐してもらえばそっちの方が安上がりだ。
だから、だいたい管理下にあるダンジョンのほとんどが障壁を張らず、監視するのに留まるってリングバディが言ってたのだ。
その原因究明にリューリと私に白羽の矢がたった。というか、人のいいリューリは軽く安請け合いしやがったのだ。
「アレって?」
「さっきから対峙した魔物連中から匂ってたのさ。甘ったるいくせに妙に神経を逆撫でして、興奮させようとする魔香特有の匂いがねぇ」
「魔香って、使用禁止魔道具だよ? そんなのがどうして……」
「さぁ? ま、たまたま偶然、魔香が此処に落ちていたなんて事はないね」
匂いを頼りに下層へと進む。進むにつれそれなりに魔物は強くなってくるし匂いもキツくなるが、結界と浄化魔法を使い続けているため影響は全くない。
「アリア、大丈夫?」
「さっき言っただろ? 結界と浄化を複合させ私達の周りに展開してるんだ。影響なんてあるわけないよ。どっちにしろ魔香程度で私はどうにかなるわけないさ」
ゴリゴリMPを削ってるのとライオンサイズに変身している為、他に魔法を使う余裕はあまりないのが本音だけど、それをリューリに言ったら撤退しようと言い出すから絶対に言わない。
こんな事さっさと終わらせてやるんだ。
「リューリ、気をつけな? さっきまでとは空気が違う」
辺りは魔晶石がいたるとこで青白く輝き、その純度を鑑定すれば、中々見ないレアな高純度。という事はボス部屋が近い事になる。
隣で緊張したように、喉を鳴らすリューリに活を入れるため尻尾でひと叩きすると、こちらを見上げて頷く。
そうさ、リューリには私が居る。何を心配する事があるんだ。
リューリが扉に手をかけると、同時に展開していた結界に何かが当たりヒビが入った。
「随分と初見殺しかい。面白い」




