【71・届いたテガミ】
リューリと共にリカルドの執務室へと行くと、そこにはリカルドだけでなく、イリスも居たのだった。
流石に泣きやみグズる事をしなくなった私は落ち着きを取り戻していたため、イリスに勧められるまま対面する形でソファにリューリは座り、私はリューリの足元へとお座りすると、リカルドがイリスの隣に座りその手に持っていた手紙をテーブルの上に置いた。
「リューリ、急に呼んで悪かったな」
「別にそれは構わないけど、何かあったの?」
「あったというかこれからあるんだ。まずは、この手紙を呼んでくれ」
テーブルに置いた手紙をリューリは受け取り中を読んでいく。顔を上げれば、リューリの表情は段々と驚きと納得に変わっていき、読み終えた手紙を戻すと私の様子に気付いたリューリは優しく頭を撫でる。
「アリア、心配しなくても大丈夫だよ。学園の入学案内だ」
「……学園?」
「うん。王立ブィッセルツ学園。王都にはないんだけど、学園の他に王立の魔導研究機関や国家騎士養成所、各ギルド本部が集約されていて領的支配は王家直属だけど、少し王都から離れた位置にあるんだ」
「行かなくちゃならないのかい? その学園とやらは」
「うーん。それは……」
私の言葉に口ごもるリューリ。前世でいう義務教育なら仕方ないが、なんか、様子がおかしい。
そう思っていると、イリスが説明してくれた。
「アリア様、学園は基本的に強制ではありません。というより、学園に行くこと事態が少ないのです。資金もそれなりに掛かりますから様々な事情で難しい家庭もあります」
「冒険者たちはどうしてるんだい?」
「冒険者は必要な場面が来ても冒険者ギルドを通せば大抵の事は事足りますし、年齢も最低7歳になれば、登録ぐらいは出来ます。もしそういった子が居ても街の中の手伝いなど安全を考慮されてますし、養成所もあるので必要な知識はそこで得られます」
「そういうことならリューリが学園に行く必要はないんじゃないかい?」
「それが、そうもいかないのです。騎士爵とはいえ爵位があるライヘン家。しかも、リューリはアリア様の契約者ですから学ぶ事が色々あるのです」
なるほど。貴族社会と以前、国王から言われたリューリ自身の力を付ける。この二つを叶える為には学園に行くしかないというわけか。
「面倒だねぇ……」
「仕方ありません。私も面倒だと思いますが、リューリの為でもあるのです」
イリスの隠しもしない本音に私は同意したのだった。
「あれ? でも、入学は15からだよね? 入学準備期間が必要とはいえいくらなんでも早くない?」
「それに関しては一年前倒しの特例措置で所謂、飛び級だな。これは国王から進言があって準備期間は短いが、来年度入学者とするようだ」
「来年度……。準備、間に合うかな」
「俺もそう思ったが、幸い臨時収入とかあったから問題ないし、国王が秘密裏に公爵と話をつけて後ろ盾になるから大丈夫だそうだ」
私とイリスが話を終えるとリューリがリューリが気になった事をリカルドに質問していた。
なんでも、通常は入学するのにも色々準備が必要らしいからだいたい一年ぐらい掛けるらしい。
ちなみに臨時収入は魔物暴走とか私が来てから得た魔物素材からの資金らしい。
「そっか……。そうなると、僕が寮生活で居ない間、アリアはどうなるの? 留守番?」
「なにっ?! リカルド、そうなのかい?!」
リューリが寮生活と聞き、私の頭の中は腐的な妄想がむくむくと広がり膨らんでいた時に聞こえたまさかのお留守番。
ショックを隠しきれず、シュバッと立ち上がりリカルドを睨んでしまうのは仕方のないことだ。
だって、リューリの寮生活だよ? 共学だと思うが、女子とは絶対に別棟の別寮だ。
つまり、腐女子としては嬉しいラッキースケベがリューリに起こるかも知れないんだぞ?! 見たいじゃないかぁぁ!
女子とのイチャイチャでも楽しそうだが、私個人としてはやはりBLが見たい! これだけ顔面偏差値が高いなら期待出来るはず!
「ア、アリア? だって、留守番になっても仕方ないんだよ? 動物連れて行けないだろうし……。ていうか、なぁんか寒気がするんだけど? また変な妄想してないよね?」
「(ギクッ!)や、ヤダねぇ……。そんな事無いさ。そ、それで? 私は本当に留守番なのかい?」
あっぶなぁぁ。リューリ、段々と鋭くなってきていて、嬉しいけどそれを此処で発揮しないでよ。
私は慌てて話を逸らすようにリカルドを見上げたのだった。




