【54・ガイセン】
私達が急遽、助太刀した魔物暴走が無事終わり、一番の功労者であるリューリは冒険者達によって絶賛、揉みくちゃにされている。
「ふぁぁー……」
人垣を避けて伏せ寝をしようと大きな欠伸をしていると、見知った匂いが近づいてきた。
「……なんだい? リューリならあっちに居るさね」
「アリア殿、あの子は強くなりましたか?」
私の隣に立ったリカルドは目元を和らげリューリの笑顔と賑わいを見ていた。
「ふんっ、私が直々に魔法を鍛えたんだ。 最初の頃とは違うよ。 それに、最後はアンタから習った『剣気』でとどめを刺したさね。 アンタにとっちゃ自慢の息子だねぇ」
私がそういうとリカルドは目を見開き驚きながらも徐々にその表情は嬉しそうに破顔した。
う"っ……! イケメンの笑顔っ! ま、眩しいっ!
「さ、さっさと迎えに行きなさね。 報酬が待ち遠しいんだよ」
その破壊力に声は上擦ってしまい、誤魔化すようにリカルドの背を尻尾で叩いて、リューリの元に向かわせた。
♢♢♢
「リカルド! 良くやってくれた! やはり、お前に頼んで正解だったようだな!」
城に戻り国王と応接室のような室内で会えば、出迎えてくれた国王は、開口一口にリカルドを笑顔で迎えた。
「リューリも報告を聞いたぞ! コア持ちの魔物を見事、討伐したらしいな!」
リカルドとはタイプが違うがやはりイケメン国王。 笑顔が眩しい。
そんな無関係な事を考えていると、国王は次に私の前で膝をつき、視線を合わせると深々と頭を下げた。
「こ、国王! そのような場所に膝をついてはなりません!」
慌てた宰相さんが、止めようとするが国王は無視して私と目線を合わせた。
「フェアリアルキャット……。 いや、アリア殿と言うべきか。 此度は本当に助かった。 礼を言わせてくれ」
う"……。 イケメンの真剣な表情で私を見つめないでっ! え、えっと、な、なんて言えばいいんだっけ?!
「アリア殿? 何かあったのか?」
「ふぁっ!? い、いやっ、な、なんでもないっ! べ、別にアンタの為じゃないしっ! ほ、報酬の為だよっ!? 勘違いするんじゃないよ!?」
「ぶふっ!」
「んん"っ!」
素で慌てふためく私に国王は虚をつかれたような表情をしてしまい、リューリやリカルドは私の様子にそれぞれ笑いを堪えるというなんとも奇妙な空間が出来上がった。
「あ、アリアっ……ぶふっ…。 落ち着いてよ……」
「はっ!! あっ……ゴホッゴホッ! ふぅ……。 リューリがやると決めたのなら従魔は主人に付き従うまでさね」
恥ずかしさから全身の毛を逆立てるが、無理矢理フェアリアルキャットのおすまし顔をして取り繕った。
「そ、そうか。 だが、貴女が居たから怪我人も最小限で済んだ。 礼を言う」
ぎこちないながらも国王も私の様子を察してそれ以上は何も言わず立ち上がり、ソファへと座ると、リューリとリカルドも促され国王の向かい側へと座った。
「して、リューリよ。 報酬はあの時に言っていた物で本当にいいのか? 変えてもいいんだぞ?」
「い、いえ! 僕だけじゃなくアリアの為にもなるので大丈夫です」
「アリア殿も?」
「はい。 僕達、それが一番いいんです!」
国王はリューリの様子に肩をすくませると、ちらりと私を見てきた。 まるで本当にいいのか?と確認を取られた気がするので、私は小さく頷いた。
「では、リューリとアリア殿への今回の魔物暴走への緊急参加報酬として、『摩擦式精米機』とする! 宰相、手配を頼んだぞ?」
「かしこまりました」
「次はリカルド。 お前への報酬だな。 Sランク冒険者への正当な金額分の報酬でいいな?」
「あぁ、構わない」
こうして、私達はそれぞれ国王直々に特別報酬を手に入れた。
精米方法ではなく、『精米機』! これで白米が食べられる!いやっほーっ!!




