【33・王都に向かって】
昼食を食べ終わると、再び二人を乗せて私は街道沿いを走るが、流石に飽きた。だって、右側はずっと森で左側は小川。後は見渡す限り草原と土の道。
「ねぇ、まだこの道を走らないとダメかい?」
私の上で器用に地図を片手に広げるリカルドに走りながら問いかけた。
「……この右手に見える森を迂回しないと街には着かないんですよ」
「なんで、わざわざ迂回しなくちゃならないのさ」
「道として整備されて無いし魔物も出るからだよ」
リカルドとリューリが交互に言ってくるが、この森はまだ終わりが見えない。…………面倒くさい。
「なら、突っ切ればその分街には早く着くねぇ」
「あ、アリア?……ま、まさかっ」
「そのまさかさ!私が居るんだ問題ないさね!」
街道から逸れて迂回予定の森を目指し走り出した私。リカルドとリューリが止めるがヤダね!
「ふん。この森を突っ切ればいいんだろ?安心しな!」
「あ、アリア殿?!」
「アリアっ?!」
森に入っても私は足を止めずに、身軽に木の根など避けて走り続ける。
しばらくすると、私の鼻に水の匂いが掠めた。
「……湖っぽいのがこの先にあるけど、どうする?」
「湖?地図には載っていませんが、休憩を取りましょう。おそらく、半分は進んだと思うので」
「休憩?仕方ないねぇ。リューリ、そこで休むからしゃきっとしな」
「うへぇ……。いきなり、道を変えないでよ……あー……気持ち悪い……」
どうやら、森に入りその入り組んだ地形に私が避けたりするせいか、揺れて気分を悪くしたっぽいリューリ君。
途中から静かだったし、休憩を取るように言ってきたリカルドはリューリの様子を見て言ってきた感じだ。
「……ほら、着いたよ」
目の前に広がる湖はキラキラと太陽を反射して輝き、静かさも相まってどこか幻想的な雰囲気をしていた。
リカルドとリューリはその光景に目を奪われたかのように見つめていたが、私の言葉に我に帰ると二人は私から降りて景色を眺めた。
「あ"ー……久しぶりの安定した地面だぁー……」
どかりとリューリは座り込んで水を自分とリカルドの分を取り出し、リカルドに渡す。そして、自分の分の水を飲んで休憩を始めた。
リカルドも水を受け取り飲むが、こちらは足取りもしっかりしているため、水辺へと行き珍しそうに景色を眺めた。
「……凄いな。森の中にこんな湖があったなんて知らなかった」
「……人間の手が入らないだけで、自然はあるがままの姿で居られるからねぇ。ふむ……。これだけ綺麗な湖だ。もしかしたら、アレがあるかもねぇ」
フェアリアルキャットの知識ではこういう綺麗な水辺には清浄な気が満ちて、珍しい物が近くにはある。……らしい。
「……アレとは?」
「まぁ、ちょいと待ってな」
私はリカルドにそう言うと二人には念の為に結界を貼ると、森の中に戻った。
「………あの薬草があると、今のリューリには丁度いいんだけどねぇ」
少しばかり木の根元を注意しながら歩くと見つけたのは、青白い花を咲かせた鈴蘭のような花。
「……見つけた」
私はそれを口で器用に毟ると二人の元に戻りリカルドに見せて渡した。
「アリア殿?……これは?」
「これかい?これを入れて湯を沸かしな。それをリューリに飲ませるといい」
「薬草?わ、分かりました」
リカルドは不思議そうにこの薬草をみるが、私に急かされると、慌ててリューリの元に行き枯れ枝に火を付けると鍋に水を入れて沸かし、その中に薬草を入れた。
すると、青白く咲いていた花は湯の中に溶けるように消えてしまったのだ。見た目は変わらず白湯のままなのに。
それを見てリカルドは驚きに目を見張り動揺するが、アリアが勧めるのでリューリに渡すしかない。
「………これを飲めばいいの?」
コップに入った白湯を見て未だ顔色が悪く吐き気もあるリューリは、訝しげにリカルドとアリアをみる。
「さっさと飲みな。その中に入ってるのはエリクサーを作る時の材料のひとつ。ビーフェラン草だよ。こういう場所にしか咲かない花でね。アンタみたいな気分が悪かったり、吐き気には効くんだよ」
「エリクサーの?!かなり高価な薬草じゃないですか?!」
リカルドが驚きに声を上げるがそんな事知らない。フェアリアルキャット知識でエルフが体調不良の仲間にそれをさっきのようにして飲ませたら良くなったのを、見ていたからもしかしたらと思ってやっただけだもん。価値なんて知らない。エリクサーの材料のひとつって事もその時に知ったぐらいだし。
「んくっ……ふぅっ……スッキリとした後味。凄い……もう胃のムカムカが収まった!」
「そりゃ、よかったねぇ。念の為、あと2〜3本だけ採っておくかい」
「よかったな。リューリ。……そうですね。貴重な薬草ですが、リューリには必要でしょう。案内をお願いできますか?」
そうして、私はリカルドを案内して少しだけビーフェラン草を採取すると、体調の戻ったリューリに薬草をマジックボックスに仕舞ってもらうと二人を乗せて再び森を抜ける為、走り出した。
読んで下さった方々、ありがとうございます!
稚拙な文章で読みにくかったり、誤字脱字があったりすると思いますが、温かーく、優しーく見守ってくださいませ(笑)
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