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霊感ゼロの君と騙され続ける僕の放課後  作者: 沢沢


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第1話 全てのはじまり

朝の通学路。桜並木の下を歩く登校班の列は、眠たげな小学生たちの足取りでどこかだるそうだった。 だが、その少し前を歩く女子二人組――幸田柚子と和田凪のまわりだけは、妙に熱を帯びた空気が漂っている。二人はわざわざ振り返りながら、登校班中に行き渡らせるような絶妙なボリュームの声で話す。

「ねえ、本当に聞いた? 5年2組の小森あいちゃんのこと」 柚子が目を輝かせてそう切り出した。 「あの子、すっごい目をしてるでしょ? 実は幽霊が見えるらしいよ」 「え、またまたぁ。そんなの絶対ウソでしょ」 凪はクスクスと笑いながら、面白がるように相槌を打つ。 「本当だってば! しかも呪いの力もあって、目を合わせただけで不幸になるんだとか……キャッ、怖っ!」 「うわ、なにそれ。近づかないでおこーっと」

二人のそんな軽口が、風に乗ってすぐ後ろの列に丸聞こえで届いていた。 もちろん、聞き耳を立てていたわけではない。ただ、その直撃を受けた男子が一人――蒲田良介である。

「……っ!」

良介はガバッと顔を上げ、目をキラキラさせていた。 (ゆうれい……が見える……だと……っ!?)

良介の脳裏で、クラスの隅でいつも一人で本を読んでいるあの黒髪の少女・小森あいの姿が、瞬く間に「闇の波動をまとう孤高の霊媒師」へと変換される。 ゾクゾクと全身を駆け抜ける悪寒。しかし良介の心にあったのは恐怖ではなく、圧倒的な憧れだった。 (すげえ……! 本物の霊能力者じゃん……っ!)

誰の言うことでも秒で真に受ける悪癖を持つ良介にとって、それはもう、羨ましさの極みだった。 良介は前のめりになり、登校班の列からはみ出しそうになりながら、自分のリュックの肩紐をギュッと握りしめる。 (かっこいい……! 絶対、話してみたい! 今日の休み時間、ぜったいに声をかけよう!)


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