第35話 世界的破壊活動。
美津姫うららの破壊活動を止められる物は誰もないない。
『おんもしろーい! みんなごめんねー、うららは天変地異そのものだからー、みんなうららの事許してね! それじゃあ、今度は世界中におっきいのばら撒いて行くね! まったねー!』
うららは戦略兵器用の怪人たちを回収する事なく、基地へと戻った。
そして、宣言通り、数か月かけて世界各国へと渡り、戦略兵器級の怪人達をばら撒いた。
生み出されたのは、神話のベヒーモスを彷彿とさせる程、巨大なゾウ男、グリズリー男や、ゴリラ男、キリン男に、ハイエナ女の集団、白熊男や、セイウチ男など、一切容赦のない世界規模の破壊活動を始めた。
「うふふ、見てみてー!」
「うららちゃん、ご機嫌っすねー。 なんすか? その手紙」
「茂助との交換日記の他に、果たし状が届いてたの!」
「ああ、レッドがやりそうな事っすねー! 受けて立つっすか?」
「あたぼーじゃない! でも、戦うのわー」
「はっはっは、俺っちたちの出番っすねー!」
「ようやく出番が回ってきたっす! 総督、ヒーローたち、ボコボコにしちゃっても?」
「うーん、いいよ! でも、茂助だけは攻撃しちゃだめだからね!
それと…… 万が一、誠とどちらかが命を落としそうになった時には、かならず誠を守る事! せっかくヒーローから引き抜いて来たんだから、いきなり死んじゃったら勿体ないしね!」
「わかったっす! 私様が死んでも必ずスイーツを守り抜くっす!」
音呼の力強い宣言に、うららは満足げに微笑む。
だが、その傍らで誠は、果たし状を握りしめていた。
「あの……」
三人のやり取りを見ていた亜里がふいに声を上げる。
「ん? どうしたの亜里?」
「私は…… 罰とか与えられないんですか?」
「うん? どうして罰を与えるの?」
「ええっと…… 私は組織から離反した身なので……」
「離反?」
「もしかして、知らなかったのですか?」
「だってここにいるじゃん?」
「それは…… ミサイル攻撃の前に音呼ちゃんを救出しに来た所を、失敗して二人と一緒にここまで着いてきてしまったからなので……」
「真面目だなー。 バレて無さそうだったら、正直に言わなくてもいいのに。
離反先で何してるの? 一人暮らし?」
「いえ…… 他に離反した怪人達と一緒にいますが……」
「他にもいるんだー!」
「はい……」
「それじゃあ、ラボにいる半藤入鹿博士に言って、送って貰って。 適当にお土産持って帰っていいから」
「えっ? 地上に帰して貰えるんですか?」
「まあ、ヒーロー達との決着が着いたら焦土と化すけどねー。 それまでの間、つかの間の平穏もどきを皆で楽しんで!」
「平穏もどきですか……。 わかりました。 お土産はなんでもいいんですか?」
「うん、基地にあるものなら適当に欲しい物持って帰るといいよ!」
「ありがとうございます。 それでは…… さようなら」
「うん、まったねー!」
軽い挨拶と共に、亜里はラボへと消えていった。
彼女が持ち帰る「お土産」が、地上に残された怪人たちへの福音となるのか、あるいは死を早める毒となるのかは、うらら以外誰も知らない。
海底基地の窓の向こう、深海の闇が怪しくうごめく。
誠は、果たし状の文面を見つめながら、音呼の「自分が死んでも」という言葉を反芻していた。
決戦の火蓋は切られた。
ラボでありったけの兵器を「お土産」に抱えて地上に戻る亜里。
そして、死の運命が決まっているヒーローたち。
誠は、ギターの弦を一本、祈るように強く弾いた。




